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8.ストーカーの噂

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泥木町どろきちょう得鉄うるかねの定点よりX-22Y-13の地点に「ストーカー」の目撃情報あり

至急調査を開始せよ


泥木町の町長「浅光あさみつ拓蔵たくぞう」氏の自宅で謎の女性の遺体が発見された。

調べると遺体の身元は私立探偵の「十号とうごう利華奈りかな」だと分かった。

彼女は元女優であり、また政界の大物との噂もあった人物ということもあって、拓蔵氏かその息子と愛人関係にあったとの噂が騒がれた。

実際にどうだったかは結局判然とせず、警察も「事故死」と判断したが、おそらくこのスキャンダルのあおりであろう、拓蔵氏は議員を辞職してしまった。


「探偵にストーカーがいたの?」

時田衣名は僕に問いかけた。

「周りの人はそう言ってるみたいだよ」

僕はそう答えるよりほかなかった。

「誰にでもいるんじゃない。誰かを延々追いかけることに根気以外の何も必要ないんだし」

「もう…やめてよ」

衣名は背筋が寒くなったようだった。

僕達は十号利華奈のストーカーとされる人物を探していた。

芸能ニュースには疎い僕だったが、噂の検証には駆り出されるのがさだめだ。

僕達は少し入り組んだ聞き込みを行って、分かったことをまとめた。

彼女は周囲の人物に「誰かに見られている気がする」と不安そうに話していたそうだ。

「同業者かもしれない」とも。

しかし、彼女と浅光町長との関係性は全くないようだった。

ある喫茶店の店主が「マスクに帽子という風貌の女が彼女について聞いてきて、正直に『知らない』と答えると、すぐに出て行った」と教えてくれた。

…随分色々聞きまわったが、分かったのはこれだけだった。

やはり記者のリサーチ力にはとても敵わないと悟って、僕達は上司の神谷に報告した。

結局この件は僕たちの手から離れていったのだった。


***********************************************************


「そういえば、例のストーカーの件はどうなったの?」

「ああ、どうも妙なことになっているようだ。あの十号という探偵、あまりに情報が少ないらしい。家族も親戚も一人も見つからない。寝床はあったが身分証明の類は何もない。本名なのかも疑わしい」

「へえ、それで?」

「唯一の手掛かりがこれだ。『日本外来生物情報啓蒙会』とやらのパンフレット。これもまた、存在しない団体だった」

「…流石にそれじゃ手詰まりだね」

「そしてこの写真。一体何なんだろうな、これは」

一枚の写真。

そこは体育館のような場所で、十号利華奈が映っていた。

13人。


13人の「十号利華奈」が、映っていたのである。


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