ばけもの子供の物語 夢R3
誰からも、忘れ去られた場所。
世界の隅っこの、隅っこ。
そこに建っている黒い塔の中に、一人の、ばけものの女の子がいました。
ばけものの女の子は、黒いツバサが生えている女の子です。
普通の人間には、ツバサなんて生えていません。
なので、自分の事をばけものだとその女の子は思っていました。
だから、塔から出ようと思わず、人間と関わろうとしません。
その代わり塔にいたのは、自動のお掃除ロボット。そして、時々羽を休めにくる薬屋のカラス。
それだけが、ばけものの女の子の友達でした。
そんな寂しい塔に、ある日人間の女の子がやってきます。
その人間の女の子は、ばけものの女の子と友達になりにきたようでした。
ばけものの女の子は、最初はとまどっていました。
ばけものと人間は友達になれないと思っていたからです。
ですが人間の女の子は、ばけものの女の子の背中に生えているものの事なんて気にしませんでした。
だから、ばけものの女の子と人間の女の子は、それから毎日顔をあわせて、友達になりました。
楽しいお話をしたり、カードやお手玉を使って遊んだり。
友達になった二人は色々な事をします。
しかし、ばけものの情報がどこからか人間達に伝わってしまいました。
大勢の怖い人達が、剣をもって黒い塔へとやってきます。
その怖い人達が、ばけものの女の子をやっつけようとしました。
ですが、その剣があたる直前、人間の女の子がばけものの女の子をかばって怪我をしてしまいます。
ーーやはり、ばけものと人間は一緒にはいられない。
そう思ったばけものの女の子は、薬屋のカラスから傷薬をもらって使った後、どこかへといなくなってしまいました。
前から頼んでいた、人間になるための薬をうけとらず、人間をなおすための薬だけ使って。
何も言わずに、ただ静かに。
その後、ばけものの女の子は、二度と人間の女の子に会う事はありませんでした。
ばけものの女の子には、人間になるという夢がありましたが、それもずっと、叶える事はありませんでした。