黒鉢 (アイ氏『失敗』をする!)
さて、東京遠征から、無事に自宅へと帰って来たアイ氏。
時間は18時を過ぎていた。
帰宅して直ぐに棒縞獅子を縞獅子1号と一緒に玄関のエントランスに置く。
そして問題は、『東天光』である。
この『東天光』は、『根巻き』でアイ氏宅にやって来たのだ。
『根巻き』とは、水苔で根を包み、その上にビニール袋を巻き借り植えの状態の事である。
輸送の時は、鉢入りよりも簡単に送れる為に、良く利用される方法である。
仮植えの状態のため、ちゃんとした鉢に植え付けをおこなう必要がある。
帰宅後、植える準備をアイ氏は開始する。
アイ氏は今後も万年青を増やしたいと思い
縞獅子1号を購入した頃から、毎日、中古の黒鉢をフリマアプリで探していた。
そして運良く中古の黒鉢6個まとめ売りを見つけてゲットしていたのだ。
(万年青には、伝統的な三つの足が付いた形の陶器の鉢があります。黒一色て染められた物を『黒鉢』絵が書かれた化粧鉢は『錦鉢』と呼ばれています。この陶器鉢は、色々な焼き物の窯で作れてますが、『京楽焼』の『鉢』が一番のお勧めです。高温で焼かれ一気に水に沈めて冷ます技法で焼かれた京楽焼の鉢は、多孔質で通気性に優れています。正に美と実用性を兼ね備えた鉢です)
ただしアイ氏が使うのは中古鉢だから事前に消毒の手間がかかる。
何故なら、以前に植えられていた植物が万が一、ウイルス感染の病気を持っていたら、新たに植える植物にも感染する恐れがあるからだ。
そのため中古の鉢を使う場合は必ず消毒をする。
薬品での消毒方法もあるが、アイ氏は一番簡単な『煮沸消毒』をで済ませた。
アイ氏は、園芸が趣味なので園芸用の鍋がある。
園芸に何故専用鍋?と思われるかも知れないが、エアプランツのバークチップの煮沸消毒に良く使うからだ。
購入した中古の黒鉢は時間のある時に沸騰したお湯で数分ほど『グツグツ』と煮込んで事前に消毒しておいた。
その黒鉢をいよいよ使う日がやって来たのだ。
ただし『黒鉢』は鉢自身も水を吸うので、植えつける翌日から最低でも一時間前には水を張ったバケツに浸して良く水を吸わせておく必要がある。
その為、『東天光』の植え付けは、翌日になった。
ー翌日ー
そして万年青を植える日がやって来た。
鉢も用土も事前に準備してあったので助かった。
アイ氏は色々と調べて取りあえず用土は鉢の底に大粒軽石、真ん中に軽石中粒、日向土小粒半々とゼオライトを1割混ぜたものにした。
砂利は、小粒になればなるほど、水もちがよい。その為、あえて中粒と小粒を混ぜて適度に乾燥する様にと考えてブレンドした。
人によっては、『硬質赤玉土』を混ぜることもあるが、アイ氏はサボテンと多肉植物を腐らせて、ダメにした苦い記憶がある。
サボテンも多肉も購入したが、全て水のやり過ぎで腐らせて枯らしてしまった。
それを心配して万年青もなるべく水捌けが良くて保水性の無い用土を選らんだ。
そして根腐れ防止に墨を入れる場合もあるが、墨を細かく砕くのが面倒なので、ゼオライトで代用する事にしたのである。
ただし、アイ氏は、以前に動画の用土対決で、保水性を計った動画を見た。その時に驚いたのは、ゼオライトは、日向土や軽石の倍の水を含んでいた、見た目では想像も付かないが、かなり『水もち』が良いのだ。
だからゼオライトを混ぜ過ぎると、赤玉土を混ぜたのと変わらない保水性になると思われる。
根腐れ防止の効果は期待出来るが、沢山混ぜ過ぎると逆効果になりかねない可能性がある。
そこは若干注意が必要だと思われる。
そして、この軽石の用土達も袋から取り出して、すぐには使えない。
袋から出した状態では、軽石に細かな微細粉が付いて、それが万年青の根に着くと根が痛むからだ。
その為、一度ザルに入れて水で洗って微細粉を取り除き乾かしてから使う必要がある。
中古の鉢の消毒と共に、その作業を事前にやっていた。
黒鉢と用土や割り箸1本、小さなスコップを準備していよいよ植え込み開始だ。
先ずは、昨日から水に浸して置いた黒鉢を取りだす。
『黒鉢』には『サナ』と呼ばれる焼き物の受け皿があり、それを入れる。
万年青鉢は、鉢の底に大きな穴が空いているので、この『サナ』が無いと土が抜けてしまうだ。
『サナ』を入れたら、先ずは大粒の軽石を底に入れる。
『サナ』が見えなくなる位に入れたら、いよいよ『東天光』を鉢に入れる。
鉢の縁から、1cm下位に根元がくる様に左手で固定して右手で用意した割り箸で根を広げていく。
そして、今度はスコップでブレンドした用土を入れる。
入れ終わったら、軽く鉢の底を軽く床等、叩き付けて『トントン』震度を与える。
そして、根の隅々に用土を行き渡らせる。
空洞が埋まり土が足りない様なら、更に土を足す。
こうして、植え付けの完了である。
そして次は鉢の上に水苔を乗せる作業。
水苔は上乾き防止。
水苔には、ニュージーランド産と南米産の二種が良く売られている。
南米産の方が値段が安いが、この二種の違いは値段だけでは無い。
ニュージーランド産の水苔の方が日持ちが良く通気性も良いのだ。
働く貧困層のアイ氏だが、ここは頑張で高価なニュージーランド産の水苔を買い使う。
水苔は万年青の土の上に乗せるだけでなくて、根が少ない万年青の根に巻いて使う場合もあるからだ。
そして、その水苔もすぐには使えない。
最低でも使う一週間前位から水に浸けて戻す。
鉢の縁から。水苔を巻いて首の部分までしっかり水苔を乗せれば完了である。
だが、アイ氏はここで飛んでも無い『ドジ』をやってしまった。
そう、この伝統的な陶器鉢には、三っ足のどれか一つが正面に来る様に植えると云う原則がある。
万年青も裏と表があり、見た目が映える方を、正面にするのだ。
アイ氏は、植え付けるだげで一杯一杯で、この原則をすっかり、キッパリ、忘れていた。
明らかに、万年青の正面が足と足との間にある…。
間違い無く失敗したのだ…。
そしてアイ氏は、失敗に気づいていたが『どうせ誰にも見せ無いし、まあこれで良いや』と自分に言い訳をして、そのままにしてしまったのである。
そして、残念ながら、その後もアイ氏は、苔巻きで送られて来た、万年青達の植え付けで、良く鉢の位置の確認を忘れ失敗をするのである…。