9割女体化して女子校に入ることになったけど、僕のことを嫌っているはずの幼馴染と再会したらなぜかヤンデレになっていて疑似百合ハーレム生活を全力で邪魔してきてくるから怖い
「Zzz……」
ジリジリジリ!ジリジリジリ!
「Zzz……」バン!
ピッ……
「Zzz……」
「起きろぉぉお!朝8時半だぁぁぁぁあ!」
「うるせぇぇぇクソジジイ!!!」
朝、唐突に100デシベルの爆音が鳴り響いたせいで起こされてしまったのは僕、笹木優斗だ…
そして100デシベルの爆音を鳴り響かせたのはウチの父親の父親であり、マッドサイエンティストであるクソジジイだ。
ん?本名?こいつに本名なんてないだろ。
「あるわこのバカ孫!」
何でこいつ僕の脳内実況に土足でガツガツ踏み込んできてんだよきも。
「…ゴホン、というかワシがやりたいことはお前と口論したいからではない。
この3月末、ついに世紀の大発明が完成したからなのじゃ!」
「お〜すごいね〜。
これで満足だろ?」
「お前に褒めてもらいたくて作ったわけじゃねぇ!
お前に被検体になってほしいからわざわざじかじかにワシがお前を起こしに来たんじゃ!」
「マッドサイエンティストの実験になんか死んでも加わるか!どうせドラキュラになるかフランケンシュタインになるかの二択だろうが!」
「確かに!あの二人もマッドサイエンティストの手によって造られたけど!今回は違う!安全も保証されているから!」
こんな暴言を吐きあうのが、普通の日常だ。
面倒臭すぎだろ?
「…というか、それはどういう内容の実験だ?
それを教えてくれないとうんともすんとも言えないが。
あともう数時間寝させてくれ」
僕はそう言って、起こした身体を戻した。
「あぁ、信じられないがこのバカ孫にも人権はある。教えてやろう。
女体化だ。」
「……ふ〜ん。それって今までも出来ていたよね。やっぱりクソジジイボケてんじゃん僕の部屋行くよりも病院行っとけよ」
布団に潜りながら思いのままに喋った。
「違うわ!今までのはシンプルに男→女という感じにただ単に『変えていただけ』じゃった!でも今回のは違う!
どんな奴でも完璧に超絶美少女へと改造することができるんじゃ!」
クソジジイはそう高らげに言いながら布団を引っ剥がしてきた。
「きっっっっも、クソジジイそんな年してそんなキツい妄想してんのかもう半径100キロ以内に近づくなキモい」
「だから暴言酷すぎじゃろ!
というかな…お前はこの実験に対して興味津々にさせるように今まで育ててきたんだぞ…」
え?クソジジイに僕の人生操られてたの?
「お前自分の妄想を叶えたいがために孫の人生を操ってるなんてことバレたら社会的に殺されるぞ」
僕の発言を無視するかのように矢継ぎ早にどんどん喋ってくる
「例えばTS百合もののラノベや漫画は腐るほど見させたしギャルゲーも大量に購入して世の中にはたくさんの種類の美少女がいると思わせることにも成功した!」
「あれお前が裏で仕組んでたんかい。」
ラノベや漫画って似たような内容しかないな〜っていう違和感がいま初めて解消したわ。
「ちなみにお前のお気に入りキャラはロリってことは知ってるからな!
断るなんて言ったらそのことをネットで発信して今後社会で生きづらくしてやるからな!」
「そのときは僕もこのクソジジイは僕の人生を操っていましたって発信してお互い様にしてやるからな」
「ぁあそんなことはともかく!ワシの実験室に来るんじゃ!」
死ぬほどつまらない口論を交わしながら、結局イヤイヤながらも女体化マシーンがあるという実験室へと運ばれることになった。
〜〜〜
ー研究室
「なにこれ、日焼けマシーンじゃん」
クソジジイが言う『女体化マシーン』を見て最初に口をついた言葉がこれだった。
「身体をまんべんなくもちもちぷにぷにのロリ美少女にするには身体全体を覆うマシーンが必要となるからな」
「ロリ化させるのは前提条件なのか。きも」
ロリコンは皆が皆ロリになりたいなんていう志望を持っているわけじゃないから取り消せよ、今の言葉。
まぁ僕はロリになりたいが。
「それで言い忘れていたが、完全に女体化するには丸2日かかる。
まぁボッチだから答えは分かっているが今後2日間予定ないよな?」
「お前もちゃんと鼻につくような台詞言っているからな…?
ねぇよ、お前の想像通り。」
本当にこいつは気持ち悪いな…
「よし、それならさっそく女体化マシーンに入れ入れ!」
「せっかちだな…これだからジジイは…」
クソジジイは気持ち悪いが、このマシーンに興味があるのは事実だ。
…僕は今まで『男』であるということが嫌すぎてしょうがなかった。
……なぜかって言ったら…レズビアンの女子を…好きになったからだ。
「何度も言うが安心せい!ワシの技術はスーパーベリー安全じゃ!」
「何その言葉ダサ」
「それに入るためには全裸でなくちゃならん、入れば自動的に電源がつくしワシはもう出ていくからな!」
そう言って、クソジジイはこの薄暗い部屋に僕とマシーンを残していった。
「……まぁ、仮に女になれたとしてもあいつに好かれるなんて保証はないけど…ちょっとは期待してもいいかな」
彼女に告白し、玉砕された日。
僕は『でも、これからも幼馴染としてよろしくね』と言われた。
「……ほんのちょっと、ほんのちょっとだけにしておけよ僕…」
…幼馴染としてよろしくなら、何で僕に秘密に女子校に行ったのだろうか。
それはやっぱり僕に一方的に愛されて気持ち悪がられていたからに決まっている。
「……よし、入るか…」
なんとも言えない思いを胸に、僕は意を決して入り込んだ。
『男性の生体を確認。女体化を実行します。』
そんな機械的な声が聞こえた瞬間、首裏にチクッとした刺激が来たとともに意識を失った。
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麻酔の効果が効き、彼の意識がなくなったことが分かれば次のフェーズへと続く。
まずは赤外線放射と放射線放射。
博士の発見した『脂肪のみを加熱する』赤外線を放射することで余分な脂肪分を減らし、『脱毛を促進させ、すぐに効果をなくす』放射線を放射させることで全身の毛を抜く。
また、永久脱毛と同じ方法によって首から下の毛を生えさせない。
その工程が終わると、次のフェーズへと進む。
次は遺伝子改変による骨格調整と筋肉量の低下。
たった一つの遺伝子を改変させることによってねずみ算のようにすべての遺伝子が改変されるというメカニズム。
その工程を促進させる物質を博士は見つけており、通常ならば1年以上をかけて行われる変化が驚異の1日で終了してしまう。
変化が終わったと見なされれば、美少女フェーズへと進む。
優斗の例で例えよう。
彼は「ロリになりたい!」という注文が入っている。
ならばまず、身長の減少を促進させる必要がある。
博士の発明したこの『退化ホルモン』を注入することで、身体全体が見る見る間に縮んでいく。
博士は髪をブロンドヘアーにするように命令した。
そのため、髪の毛の色を金色にするDNAを注入し発毛を促進させた。
博士は碧眼にするように命令した。
そのため、目の色を青にするDNAを注入し成長を促進させた。
博士は色白にするように命令した。
そのため、体内のメラニン色素を抑制するホルモンを分泌させ、全体的な量を減らすことに成功した。
博士はその他にも、思考を巡らせその場その場の対応で女体化を進めた。
「あとは性器の切除……だが…少々面白いイタズラを思いついたぞい」
博士は、性器切除プログラムの中止を命令した。
そして、フェーズは終了した。
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「……うぅ〜ん…」
脳と身体がまだ普段通りに動かないまま、ボクは意識を覚醒させられた。
「2日も動いてないから…身体が重い…」
頭も2日間働いていなかったせいか突然な鈍痛がし、抱えようと頭に手を置こうとした瞬間。
「…えっ、ボクの手…細っ」
今までのようにごつごつして腕毛もたくさん生えていた両腕が、真っ白で華奢でつるつるした…少女の腕に生まれ変わっていた。
「す、すごい…これって本物の女子の腕を取り替えたわけじゃないよね…?」
身体はまだ痛むが、それよりも興味のほうがボクの思考を埋めていた。
脚も、禄に運動をしていなかったせいで毛むくじゃらで太かったはずが、今は産毛1つすら生えていないうえこの華奢な両手で余裕に掴みきれるほどに細くなっている。
周りの景色が今までよりとても高く見えるのも、おそらく僕の身長がとても低くなったからだろう。
喉を触ってみたが、男子特有のあの凹凸は存在しなかった。
顔の骨格も、触って見る限り前より相当丸くなっている気がする。
足の裏も手の平ももちもちしている。
「女の子に生まれ変わっている…けど…」
そう、見た目だけは全てが少女へと化している。
見た目だけは。
完全に女の子に生まれ変わっているなら、この下腹部にもそれ相応の違和感があってもおかしくない。
そのはずなのに、その違和感はない。
つまり、
「……おいクソジジイ…何で変化中にこの機械を止めたんだよ…
更に言えばこんな大事な局面で…」
男子の象徴が、無くなっていない。
「ドッキリ大成功〜!じゃ!」
急にドアを蹴り倒す音が聞こえたと思えば、前よりでっかく見えるクソジジイがビックリカ○ラの例の看板を持ってボクのところへ向かってきた。
「おいクソジジイ…これって割と洒落にならないドッキリなんじゃねぇか…?がー○まんもドン引きするほどのレベルだろ…」
「大丈夫だって安心しろじゃ!そのブツはちゃんと機能するようになっているからな!」
「そっちの安心じゃない!何で中途半端に女体化を止めたんだよ!ボク両性具有になりたいなんて言ってないからな!」
「ん〜?フタナリって何のことじゃ〜?」
「てめぇクソジジイの癖に○夢語録もネットミームも熟知しているんだから二成ぐらい知ってるだろうが!!」
やはり、こいつと話していると本当に疲れる。
そのうえボクはまだ新しい身体で慣れていないからいつも以上に疲れる…
「ちょっと待って…休憩させて…大声出して疲れた…」
そう先に伝えて、床に仰向けになった。
「まぁそうじゃろうな。声帯が上がったからワシも耳がキンキンして痛いぞ」
「やっぱり声高くなっているのか…自覚がない…」
自覚はしていなかったが、おそらくそうなんだろう。
「それとワシの発明した退化ホルモンの影響で今まで持っていたはずの体力が一気に削がれたからいつも通りのパワーを出すとすぐにくたばると思うぞ」
「そういうところまで…幼女に似せているのか…」
全く体力が戻らないまま、このように何とか受け答えしている。
「そういえば…何でまだ生えたままなのかの理由を聞いていないが…」
クソジジイに話を逸らされたことを思いだした。
「いやぁ…理由も何も、お前にイタズラがしたかっただけじゃが。
それ以外に理由などない。ただそれだけじゃ」
最低だこいつ。
言い返す気力もないので、心の中でそう言っておいた。
「それと…お前、ドッキリで勝手に戸籍を女にして生えてること秘密にして女子校に転入させたからな」
「そっか…はいはい…」
言っている言葉は聞き取れて、その言葉の意味が何なのかは分かる。
だから大声を出してツッコみたいんだけど、疲れでそんな気力は持っていない。
だから心の中で叫ぶ。
(何やっとんじゃこのクソジジイィィィィ!!!!)
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こうして、普通の男子高校生だった笹木優斗は、
新しい人間、『笹木優』として女子校生活を送ることになった。
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Phaze1 幼馴染との再会
ボクが転入することになった女子校は『蜜ヶ丘女子高等学校』…だ。
女体化装置に入るちょっと前に話したと思うが、幼馴染…島本亜依が入った学校がここだ。
気の狂ったクソジジイがもう既に様々な手続きを済まし終えたというイタズラの徹底ぶり。
今までたくさん悪態をついてきたけど孫の人生を左右させる程恨んでたわけじゃないだろ…?
それとも逆か?ボクがクソジジイを殺す殺すって言うくらい嫌いなのと同じくらいクソジジイもボクが嫌いだったのか?
…いや、もうそんなことはどうでも良くてこれからの事だ。
KY過ぎるクソジジイのせいで以下のような事態へとなった。
〜〜〜
『確かお前、島本亜依という人物と仲良かったじゃろ?』
『え、何でここであの子の名前を…?』
『いやいや、ワシは優しいからその子がいる女子校を選んでおいたからな』
『そうか…は?嘘だろ?ボクもうあの子とは疎遠になってて…』
『それはあの子が寮で一人暮らししとるからじゃろ?
実はお前が女体化しているときにあの子と直談判してきてな』
『ちょっと待って、う、嘘だろ?』
『それでな、お前があの子と二人暮らしすることに同意してくれたんじゃ。
安心せい。お前がまだ生えてるってことはちゃんと言っておる』
『ボクの話を聞いてくれって…』
『今日の昼に一回会ってお話をしたいということらしいぞ』
『おいクソジジイ…いい加減にしろよ…』
〜〜〜
というせいで、今は集合場所で亜依を待っている。
「え〜と…ゆう君だよね?」
スマホを見てボーッとしていたら、急にそんな声が後ろからしてきた。
ちなみに、ボクのことを『ゆう君』なんて呼ぶ人物なんて一人しかいない。
つまり、
「うん、久しぶりだね亜依」
振り向いて、待っていた人の名を呼んでみた。
「…!ゆ、ゆう君…/すごく、可愛くなったね……//」
久しぶりに会った幼馴染は、首1つ分大きかった。
更に言えばすごく可愛くなっていたし、すごく顔が赤かった。
「……今だから言えるけど、亜依が女子校に行ったってことを聞いたとき本当に辛かったからね」
「それは本当にごめんね……あの時は気まずかったからさ…」
会っていなかった頃の辛い話を話しながら、ボク達は近くのファミレスで遅めの昼食をとることにした。
すると、彼女のフォークを持つ手が止まった。
「私さ、ゆう君を振った理由…レズビアンだからって言ったよね?」
「…ぅ、ん」
そんな話を降ったせいで、ボクのスプーンを持つ手も止まった。
「私はあの時、女の子ばっかり好きになっていたからそうなんだって思っていた。
男子のゆう君なんかって、思ってた。
でも、全然違ったんだ」
「……それって」
「ゆう君がいなくちゃ毎日が全然面白くなかったし、ゆう君がいなくちゃ悩みとかもどのように吐き出せばいいのか分かんなかったし、ゆう君がいなくちゃ大好きなカルボナーラも味がしなかったんだ」
「……」
「でもね、今食べているカルボナーラはとっても美味しい!」
暗かった彼女の顔が、急にぱぁっと明るくなった。
「やっぱり見た目は別人になっても、ゆう君はゆう君のままでいてくれたんだね。
更に…こんなにタイプな姿になってくれて…」
「そう、だったんだ…ちっちゃい子が好きだったんだね…
…良かった。拒絶されてなくて…」
「ゆ、ゆう君も私と同じ気持ちだったの?」
そんなことを言われて、ボクは溢れる思いをこらえるために下を向きながら言い始めた。
「もちろん。だってさ…あれが生まれてはじめての告白だったんだよ。それにボクが悲しまないように幼馴染のままでいようって嘘をついていたんじゃないかって…再会する直前までそう思っていたからね」
「わ、たしたち…すれ違っていたせいで辛かったんだね…」
震える声で亜依がそう言って、ボクは顔を上げた。
彼女の人形みたいに大きい目に、涙が溜まっていた。
「だいじょうぶだよ。もう今は辛くないんだからさ」
「そ、そうだね…んくっ」
近くにあったペーパーナプキンを手に取り、彼女に渡した。
亜依はすぐそれで目を拭いてくれた。
「…えへっ、私ったらどうしてこんなところで泣いちゃってるんだろうね」
「それもそうだね、早く食べ終えようっか」
…なにも気にしないふりして話していたけど、ここはファミレス。
周りの目が痛い…
この気持ちは亜依も一緒なはずだから、さっさと食べ終えて出ていきたいボクだった…
〜〜〜
「これで全てで大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
昼食も食べ終えて、亜依のおすすめでボクに合う服を買ってくれたことだし、新しい家に帰ることにした。
ちなみにボクの荷物はジジイが事前に運んでくれたらしい。
どうでもいいね。
「んじゃあ、部屋割りを紹介しておくね」
「了解!」
「ここはキッチン…だけど、ゆう君は別に料理を手伝う必要はないからあまり来ないかもね」
「毎日料理作ってくれるんだ。ありがとう」
「で、キッチンを出たらすぐにダイニングがあるよ。
テレビもあるから休日はずっとここでのんびりしてるんだ」
「ソファが柔らかい…ここでのんびりするのは気持ちよさそう」
「玄関を入ったらすぐ右手にトイレと、反対側に脱衣所とお風呂があるよ。
それで奥の部屋は私の部屋で、左がさっき行ったダイニングって感じだよ」
「なるほど…これで部屋は全部?」
「んー…そうだね」
「…あれ?ボク用の部屋は……いや、途中から入ってきて何様のつもりだってのは重々承知だけど、ボク一応まだ男子だよ?」
「…?ゆう君と私は、一緒の部屋だよ?」
「えっ?」
「確かに新しい部屋を作ろうって話はあったけど、私たちは幼馴染なので構いません!というか一緒の部屋がいいです!って言ったからさ」
「えっ?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こうして、笹木優は幼馴染である島本亜依と同棲生活を送ることとなった。
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Phase2 亜依のヤンデレの片鱗…?
「さて、ゆう君」
新生活初日の夜、ボクは化粧台に座らされていた。
「ボ、ボクってそんなに可愛かったんだ…」
「素材が百点満点だから薄化粧するだけでモデル顔負けの領域だもんね」
化粧の知識なんて1つもないボクだけど、おそらく化粧って5分じゃ終わらないと思う。
でもその5分間で、幼すぎるボクの顔はこんなに凛々しくなった。
「ゆ、ゆう君!そんなに可愛くなれる機械って女子にも有効?」
「有効かどうかは知らないけど…出来るんじゃないかな…?」
「この技術ほんとすごいって!誰でもこんな美少女になれるんだったら皆やってるって!」
「あはは…でもこれ本当にすごいよね。何であんな性格の悪いマッドサイエンティストが作れたんだろう…?」
この疑問だけは本当に謎のままだ。
「でも、この生活も一つだけ欠点があるね。
女子校に入るってなると、ちょっと男子特有の癖を出したらバレるかも…」
「それはボクも思っていて、でも男子特有の癖って男子じゃあまりわからないんだよね…」
この生活を始めるときに危惧していたこと。
その懸念を彼女から言ってきたってことは、おそらく彼女自身なにかボクに対して引っかかる部分があったってことだろう。
「でも大丈夫だよ。私が今日から始業式まで、みっちり指導してあげるから!」
「あ…ありがと…う?」
ど、とんな指導をしてくるのだろうか?
「さて、今日はもう化粧も落として一緒にお風呂入ろっ!」
「…了解」
昔は一緒にお風呂入っていたからOK…なのか?
〜〜〜
「ゆ、ゆう君毛量がすごいね…」
「シャンプーだけで3回も洗うくらいだったら髪切ってもいいよ…?」
「ううん!気にしないでいいよ!逆にゆう君の髪の毛で遊びたいから切らないで!」
ボクの髪の毛の量は初音○クもびっくりするレベルで激しいのだが、「切らないで!」ということなので取り敢えず切らないことにしておく。
「でも…髪洗うのも化粧するのもいつかは自分一人でやれるようにしなくちゃいけないから頑張らないとね」
「え?」
亜依がボクの発言に反応した瞬間、ボクは亜依の目が真っ黒になっていることに気が付いた。
「大丈夫だよゆう君、化粧もお風呂も私が一生お世話してあげるから!私だけがゆう君を可愛くすることが出来るんだから!ゆう君は別に気にすることなんて無いんだよ?」
いつも通りの声色なのに、目だけが笑っていない。
「ゆう君を可愛くさせてあげて皆から憧れの的となるような子にして、でもゆう君は私がいなくちゃ何もできないからずっと依存してくれる…!」
「亜依?」
と声をかけてみたところ、今さっきまで暗かった亜依の目がすぐに光を取り戻した。
「はっ!?ごめん!勝手に私の世界に入っちゃってた!」
「ぼ、ボクは大丈夫だよ…?」
……亜依、そんなこと考えてたのか…
化粧とか自力で頑張らなくちゃまずいなと察した瞬間だった。
「…よし、ゆう君の髪はOKだよ!」
「まぁ取り敢えず…ありがとう」
「じゃあ次は身体を一緒に洗いっこしよっか!」
「りょうか…いや待って?」
余りにも普通かのように身体を一緒に洗うという台詞を出したせいで一瞬理解が追いつかなかった。
「じゃあゆう君、こっち向いて!」
「やらないよ!?こんな見た目だから信憑性は薄いかもしれないけど男だからね!?」
「ゆう君、こっち向いて」
「言葉の圧で押すのやめて!」
そんなことを言っていたら、亜依がボクの首に絡みついてきた。
「拒否権はないんだよ、ゆう君」
鏡に映る亜依の目がさっきより真っ黒でした。
「ハ…ハイ…」
はい、死ぬほど怖かったです。
〜〜〜
亜依はどうやら身体と身体を擦り合わせて洗う例のアレがしたかったらしく、大人しく目を閉じて何も考えずに受け入れることにしました。
「ゆう君、シャワー流すよ〜」
そんな亜依の声がしたと思ったら、頭上から温かい水が当たってきた。
「気にしてなかったけどゆう君って今の身長って何cmか分かる?
私も142cmでクラスで低いほうだったんだけど」
「132cmだよ。10cmも違うね」
「す、すっごく低いね。それはそれで女子校に行ったとき怪しまれそう…」
「今日亜依を待っているときに小学生の女子から君何年生?って話しかけられたし…テンパって5年生って嘘ついちゃった」
やはりこんな見た目だったら絶対に小学生に見間違えられるよね…
そんなこんなで、完全に目がハートだった幼馴染と一緒にお話しをしながらのんびりお風呂に浸かったとさ。
〜〜〜
「それで、やっぱりそうだよね」
「もちろん!」
風呂上がり、髪も乾かし終えて電気も消し…つまりもう寝るのみだ。
察しのいい人なら分かる通り、ソファで寝ることも予備のベッドを使うことも亜依に許されなかったので…
「ゆう君なら…いいよ?」
「この幼馴染という関係が良いので手は出しません。
というか、まだ久々に会ってから1日目だからね?」
この狭いシングルベッドで二人きりの夜を過ごすことになりました。
久々に再会した幼馴染が重たくて仕方ありません…
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一ヶ月後…
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Phase3 女子校
「Zzz…」「Zzz…」
今日は始業式。
ベッドから出たくなくてしょうがないけど始業式。
亜依の女子修行は結局あんまりできなかったけど始業式。
駄目だよね、転校初日で欠席は。
まじで色々不安になるけれども行かなければ…と思いボクはベッドから身を起こした。
「んっ…やだぁ、もっと寝たい〜…」
「そうは言ってもボクの転校初日だからね。初日欠席はさすがに許されない行為だと思うよ」
「いいじゃん別に1日ぐらい…あとまだ優ちゃんを他の女の手から助けだす心構えが出来てないよ…」
さっき女子修行はあまりできなかったと言っていたが、その数少ない修行の1つとしてボクの呼び方を『ゆう君』から『優ちゃん』に変えるというのがあった。
でもこれはボクの修行ではないよね…
「助けてもらえるのは嬉しいけど、こんな身なりでも自衛ぐらいできるって。
それでも行き詰まったときにありったけの声で亜依〜って叫ぶから」
「わ…わかった。信じるよ」
取り敢えず亜依の説得は成功した。
でもね。1番不安なのはボクの正体がバレることなんじゃなくて、亜依が暴走しすぎて女子たちの間で変な噂が立つことなんだよ…
取り敢えず行き詰まっても亜依の助けは受けないだろうな…と思いながら学校の支度を進めるボクだった。
〜〜〜
「なんで!?ねえなんで!?」
『そうはいっても決まったことですし…』
女子校。
玄関に入るときは死ぬほど緊張したけど、いざ入ればもう何も怖くない。
そんなことは置いておくことにし、なぜ今亜依と先生が口論をしているかというと。
「優ちゃんと私は一緒の寮の一緒の部屋で住んでいるんだよ!!
ならどうして私は1組で優ちゃんは4組なの!?」
『これは…色々と配慮して出た結果なので…』
そう、別々のクラスに分かれることとなってしまった。
前までは別々のクラスに分かれたとしてもちょっと悲しいね程度で済んだことだけど、今のヤンデレで過保護な亜依にとってはこの出来事はかなり不安になるんだろうな…
「ま、まぁ亜依…落ち着いて。
もう決まってしまったことだし、さっきも言ったけどボクは大丈夫だからさ」
「ゆ、優ちゃん…でも心配だよ〜!」
亜依がボクに抱き着いてきた…
先生含め周りにいる生徒たちの目が痛いって…
「もう、そんなに過保護にならないでよ!
これ以上何か言うんだったら、二度と…あっ」
周りに人がいることを思いだし、亜依だけに聞こえるよう耳打ちした。
(これ以上色々と目立ったら二度と一緒のベッドで寝ないから)
「え!?駄目だよ!嫌だよ優ちゃん!もう何も文句言わないからそれだけはやめて〜!!」
全く、手間のかかる幼馴染だな…
〜〜〜
さて、ちょっと朝からいざこざがあったけれども…遂に転入生紹介へと当たる時間へとなってしまった。
『じゃあ、新入生の子は入ってきてくれ』
「はい」
先生から入るよう指示されて、ボクは教室に入った。
『……!!!』
その瞬間、教室がざわついた。
…まぁそりゃ、こんなロリロリな容姿だからそうなるよね…
「笹木優…と申します。皆さんこれからよろしくお願いします」
周りからの驚きの目にたじろぎながらも、笑顔でそう言ってみた。
その瞬間、クラスメイトたちの鼻孔から一筋の赤が垂れてきた。
「…ふぇっ?み、みんなどうしちゃったの!?」
余りにも想定外過ぎたこの出来事にどうすればいいか分からずボクは思わず変な声を上げてしまった。
「わ…私は大丈夫だよ…あまりの可愛さに頭に血が上っただけだから…」
「み、みんな…こんな可愛い子に心配をかけさせちゃいけないよ…って私の服真っ赤っかじゃん!」
「んく…私も数年ぶりに鼻血が出てしまった…ポケットティッシュは持っていて損は無いんだな…」
「気づかなかったけど先生も鼻血出ていたんですか!?」
どうやらみんなは脳に血が回りすぎて鼻血が出たらしい…
ボクの見た目がそんなに可愛かったってこと…?
「みんな一応応急処置は取れたかな?じゃあ話を戻そうか。
優さんの席はそこだからね。」
ひとまずみんなの鼻から血が垂れていないことを確認した先生が、ボクにそう教えてくれた。
「ありがとうございます……よっ、と」
ボクはその指定された窓際の席に座ることにした。
……隣の子、髪色と顔がすごく赤い…
「…えっと、君はもう鼻血は大丈夫かな?」
ちょっと心配だったから、隣の子に問いかけてみた。
「ひゃっ、あっ、はい!私は大丈夫です!」
一瞬ちょっとビックリしたのか変な声を上げたが、すぐに元気な声で応えてくれた。
「よかった…その、ボクが原因なのは分かってるけど、顔が赤かったからちょっと心配になってね」
「う、ううん!別に心配なんかしなくて構わないし、逆に隣同士になれたのが嬉しいからこうなってただけだし…」
彼女のセリフがデクレッシェンドのようにどんどん小さくなっているせいで、後半なんて言っているのか分からなかったし…もっと顔が赤くなっているんだけど。
…まぁ、本人が言っているから大丈夫…なんだろう。
隣の子はこの状態のまま、朝のホームルームは終了した。
キーンコーンカーンコーン
〜〜〜
『ねぇねぇ!優ちゃんって前の学校何処だったの?』
『優ちゃんめっちゃ可愛けどどんなメイクしてるの?』
『ねぇ優ちゃん、抱っこしていい?』
チャイムが終わりを告げた瞬間、ボクの席がある窓際にクラスメイトは密集してきた。
「え、えっと…ボク聖徳太子じゃないからそんなに質問攻めされても応えられないよ…」
「ほらほらみんな!優ちゃんが困ってるでしょ!!」
ボクがちょっとボケようと喋るのと丸かぶりして言葉を発したのは、さっき鼻血が出ていることに気付かずみんなを落ち着かせようとしたあの子だった。
「もうみんなったら矢継ぎ早に質問攻めをするから優ちゃんが困ってるじゃん…ほら、質問したいなら出席番号順に質問をしなさい」
『それ理沙が1番最初に質問したいだけじゃ〜ん!!』
「ち、違うわよ!これが1番効率のいい方法だと思ってやっているだけだからね!そういう変な意思は入ってないから!」
『元学年委員長の権力濫用だ〜!』
ぶーぶーとクラスメイトのみんなから酷評されている青い髪のこの子。
さっきの話を聞けばおそらく元学年委員長で出席番号1番で理沙って言う名前なんだろう。
「…さて、自己紹介が遅れたね。
私の名前は赤井理沙。さっきもみんな言っていた通り1年生のときの学年委員長を務めていたんだ。よろしくね」
「うん、よろしくね。
えっと…ボクの名前は笹木優。一人称がボクなのは気にしなくていいからね。女子校は行ってないからどんな感じなのか知らないんだ。色々と教えてくれたら嬉しいな…よろしくね?」
そう言って理沙さんの差し出してきた手を握ってみた。
また鼻から一筋の赤が垂れてきた。
「ちょっと待って…もう一回鼻血出ちゃった…」
「ほ、ほんとに大丈夫?鼻血の出過ぎで貧血にならない?」
「別にそこは全然心配しなくて構わないよ!君はその無自覚で人を興奮させるような行為を自粛してほしいな!」
心配しているのに理沙さんはボクを窘めてきた。なんで。
「それで…何か質問があるんじゃなかったっけ?」
「あ、いや…得に何もないや」
『私たちは質問があるのにない委員長が最初に言うなんて理不尽だ〜!』
「う…うん、そうだね。流石にこれは理不尽というか意味不明というか…」
「ごめんねみんな!もう私の質問は終わったから好きに質問していいよ!」
…理沙さんがボクにしたことって自己紹介だけだよね?
じゃあ理沙さんは僕と仲良くなりたかったってことなのかな…
「…その、理沙さん。
ボクでいいなら、友達になってあげるよ」
「…ふぇっ?」
突拍子もないことを言ったせいか、何回目かの変な声を上げる理沙さん。
「…も、もちろん!これから私と優ちゃんは友達だよ!」
彼女はそう言ってくれた。
クラスメイトの目の前で発言したから、耳まで真っ赤になっている。
突然、教室のドアを張り倒す轟音が響いた。
「優ちゃ〜〜ん!!!」
爆速でボクのもとに走り出すピンクの塊に、ボクは何が起きたのか分からなかった。
「優ちゃん優ちゃん優ちゃ〜ん…わたしやっぱり耐えられないよ…」
「あ、亜依…下敷きにされてるから…」
「やだ!絶対に離さないから!」
『…』
ものの刹那でボクが変な人に押し倒されている状況ができて、クラスのみんなは呆然と立ち尽くしている。
そりゃそうだよ!あのスピード感は超特急ですら真似できないって!場合によったら失禁してたって!
「ゆ、優ちゃん…この子は?」
そういったのは理沙さん…じゃなくて隣の席の女子、月宮瑠璃ちゃんだった。
間近でこの光景を見たからか、恐怖で目に涙を浮かべている。
「え、えっとね…この子は幼稚園からの幼馴染だよ…」
「優ちゃんは誰にも渡さないから!」
「こんな風にめちゃくちゃ過保護なんだ…」
そうクラスのみんなに説明したら、みんなから感じていた緊張の空気が解けていった。
(確かに、優ちゃんみたいに小さくて可愛い子と幼馴染なんだったら過保護になってしまうのも分かるかも…)
(だよね、というかそんなに愛されているのに何も行動を返さない優ちゃんって実は結構ドSだったりして…)
小声でそういう話し声が聞こえて、めちゃくちゃ突っ込みたいところをぐっと我慢する。
「…亜依、もう押し倒すのやめて…潰れちゃいそう…」
「優ちゃん!?やだ!?潰れないで!?」
と言って、亜依はすぐに起き上がってくれた。
…ここは『優ちゃんが潰れるほど私太ってないもん!』って返答が来るかと思っていた…
「よし、どこも潰れてないね!よかった!それで言いたかったことだけど、今日は一緒に帰ってからお昼食べようよ!」
なんかいきなり話が吹っ飛んでいないか?
「違うよ優ちゃん!私は話がしたくて優ちゃんに会いに来たんだから!」
さらっと心の声を読まないでくれ…
「あぁ…まぁ…それくらいなら別に毎日してもいいけど」
「やったぁ!言質は取ったからね優ちゃん!」
「えっ?」
やばい、さらっと毎日って言ったのは大間違いだったかも。
大修羅場になったときに目のハイライトを失った亜依が『優ちゃん、今日もいつも通り一緒にお昼食べよう?』って言ってくるのが容易く想像できる…
「どうしたの優ちゃん?」
「ふぇあぅっ、だ、大丈夫だよ…?」
これで変な声出すの何回目だろう。
急に現実に戻されてすぐには呂律が回らなかった。
キーンコーンカーンコーン
「あ、もうこんな時間!早く教室に戻らないと!じゃあまたお昼に!!」
チャイムが鳴り、彼女はまた爆速で教室を出ていった。
何であんなキャラになっちゃったのあの子…
…いや、久々に幼馴染に会えてテンションが深夜よりハイになっているって仮定しておこう。
〜〜〜
二限の休み時間…
「あの子はもう来ないかな?」
ボクの人気も少し収まったらしく、今はクラスメイトそれぞれが特に仲がいい人同士で固まって話し合っている。
「まぁ、そうだね。亜依がいたらまた張り倒されるかもしれないから平和で心地よいけどね」
ボクは瑠璃ちゃんとちょっと仲が良くなった。
瑠璃ちゃんはどうやら恋愛小説が大好きな本の虫らしく、BLや百合もいける口とのこと。
『漫画ばっかりだけど、ボクも恋愛もの大好きだよ』って伝えてみたら結構馬が合って、今ではこうして仲良くなっている。
「それで…優ちゃん。訊きたいことがあって。
優ちゃんってさ、どんなスキンケアしているの?こんなにつやつやでもちもちなほっぺとか…羨ましい…」
…き、訊かれると思った〜、美容についての質問!
『これ生まれつきなんだよね』とか言ったら好感度下がるやつ!
でもこれは亜依が既に対策済みであり、ボクにこう言うようにと教えてくれた。
「あ〜…ごめん、ボクお化粧とか美容については全て亜依に任せっきりだから知らないんだ…ごめんね…」
必殺、他力本願。
こうすることで優ちゃんの好感度は下がらないし、私の女子力も周りから見てアップしているように見える!って亜依が言ってました。
「こ、これ亜依さんがしているんだ…美容について詳しいんだね…」
効果は抜群の模様です。
「まぁ亜依って過保護な部分を除けば完璧超人だから」
「確かに1年生のときはいつもテスト上位に君臨してたし、バスケ部のキャプテン候補って噂もあって…言い方が悪いけど朝のあの人とはまるで何もかもが違う…」
いや、その通りだから気にしなくて構わないよ。
「って、話し込んでいたらもう時間になりそうだね」
「あ、ホントだ。優ちゃんと話してたらあっという間に時間が過ぎちゃうなぁ…」
「…そうだね。瑠璃ちゃんと一緒に話すの楽しいよ」
「ほ、ほんと?えへへっ、両思いだね…」
…そこで両思いって言葉を使うのはおかしいと思うが…気にしたら負けなのか?
まぁ、もう時間もないし早く次の時間の準備しないと。
〜〜〜
放課後
「ふぅ…終わった〜…」
無事、ボクが男子であることがバレずに始業式を終えることが出来た。
クラスメイトたちからチヤホヤされたり抱っこされたりと色々と下腹部にスリリングな場面もあったけど、(多分)誰にもバレていないと思う。
疲れたしもうすぐに寮に帰ろ…
「ねえ優ちゃん。君って寮で生活をしているんでしょう?実は私もちょうど同じ寮にいるから一緒に帰らない?」
帰宅の準備をしていたとき、理沙さんからそんなお誘いが来た。
「理沙さんも寮暮らしなんだ、すごいね!
後で亜依も来るかもしれないけど…とりあえず一緒に帰ろうか」
「…!うん!」
朝に見たような凛々しい顔がかっこよく見えたけど、こう無邪気な笑顔を見てみると愛らしいくらい可愛いく見えるなぁ。
それから、理沙さんとちょっとした世間話を交わしながら玄関まで行っていると。
「この、泥棒猫ー!!」
そんな亜依の叫び声が聞こえてきた。
ボク含め二人とも、何もかも察したような顔をしている。
「……理沙さん。その…私と友だちになっちゃってごめんなさい…?」
「全然優ちゃんは悪くないよ!っていうか逆にこんなに可愛い子と友だちになれる位だったらこんな試練なんてヘでもないから!」
亜依をゲームのラスボスみたいな言い方するな。
いや別にしてもいいか。
「はぁ…はぁ…大丈夫?優ちゃん襲われてない?」
「どうしてそんなに私のこと信用してないの!?」
「女は全員狼だからだよ!!なぜかって言ったら私が狼だから!!!」
「突然のカミングアウト!?人狼ゲームだったらとんでもない失態を犯してるよ!?」
「ってそんなことはどうでもいいの!!!優ちゃんは私と一緒に帰らないと死んじゃうんだからさ!!!」
「唐突に嘘の設定を盛り込むのやめて!?」
「優ちゃん……大丈夫だからね…優ちゃんは亜依が守ってあげるから…」
「急に恍惚のヤンデレポーズを取るのもやめて!?」
なんやかんやあって、口論…というかコントをしながら寮まで三人で帰ることができた。
「今回は特別に!許しちゃったけど次からはないからね泥棒猫!!」
「私の名前は泥棒猫じゃなくて赤井理沙だから!」
「理沙さん、出来れば次も一緒に帰れたら良いね」
「優ちゃん…部屋に戻ったらオシオキしなくちゃね…」
「優ちゃん部屋でまずいことになったらすぐに叫んでね。助けにいくから」
「了解!」
「了解じゃない!!!」
〜〜〜
ギィ…バタン。
とは言わなかったけど、重々しい扉の閉まる音がした。
「さて、優ちゃん。オシオキの時間だね」
「…な、何する気?」
亜依がこんなにSだとは知らなかったけど、どんなことをするつもりなんだ…?
「まずロープで私を甲冑縛りにして、ここにムチと蝋があるから好きなところにかけてもらったら…げへへ…」
「……ふぁっ?」
あの、聞こえた限りだとボクがSになるような内容な気がしたけど…?
あと最後の笑い声気持ち悪い。
「ゆ、優ちゃんそんな『うわぁ…』って顔しないで!…でもこういうのもいいかも…」
「うわぁ…」
「えへへ…」
「うわぁ…」
「ゆ、優ちゃんには一切教えていなかったんだけど…私、可愛いロリっ子に縛られたかったんだ」
幼馴染のこんな性癖、知りたくなかった。
「ボクやらないからね。そんな趣味持ってないから…」
「や、やりなさい!やらないと一緒にお風呂入らないから!」
「その脅迫が効くの亜依に対してだけだから」
「じゃあ一緒に入ることになるから!」
「別に一緒に入るのが嫌ってわけじゃないから…いいんだけど」
「じゃあどんな脅迫が…って優ちゃん?」
「その…さ。ボクは亜依のことちゃんと大好きだから。
大切だからこそそんなプレイがしたくないんだよ。
やらないから一緒にお風呂入ろう。」
「ゆ、優ちゃん……私も優ちゃんのこと大好き!!
分かった!諦めるから一緒にお風呂入ろ!!」
(言っちゃいけないけど…ちょろっ。正直になるだけで許してくれるとか)
「で、でもね優ちゃん」
「どうしたの亜依?」
「優ちゃんが、私以外のオンナと話すのだけは許さないから」
「…」
SMはどうにかなったけど、ヤンデレはどうにもならなそうだね。
続 か な い
(ごめんね)