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彩の季節  作者: 真矢裕美
12/13

祖父との別れ

祐輔の祖父が亡くなり、

葬儀が行われた。

祐輔は、祖父に

自分の婚礼姿を見せることが

できたので悔いはなかった。

祖父の葬儀には、

おおぜいの人が参列していた。

そして、出棺の時刻になり

霊柩車に乗せられた。

いよいよ、祖父との

最後の別れになる。

祐輔は、まだ小さい幸子を抱き

祖父のそばに来ていた。

まだ、おじいちゃんが

生きているうちに幸子を抱かせて

やりたかったとそう思っていた。

「祐輔、おじいちゃんを

見送ってやろう。

おじいちゃんは、

おまえと優菜さんとの

婚礼姿を見ることができた。

それで十分だ。

幸子を抱かせて

やりたかっただろうが、

おじいちゃんは

婚礼姿のおまえを見て

心残りがないと思ったのだろう」

「それでは、これでお別れです」

火葬場の係員から告げられて

祖父の入っている棺桶が

焼き場に入っていった。

小さな時から大好きだった祖父が、

この世からいなくなる。

祐輔にとっては、悲しく

苦しい思いでいっぱいだった。

「すまない、優菜。

あんなに優しかった

おじいちゃんが、いなくなるなんて

考えられなかった。

できることなら、

幸子を抱かせてやりたかった」

「おじいちゃんは、きっと天国で

幸子の成長を見てくれますよ」

祐輔は、言葉が出なくて

涙を流していた。

「あなた」

「優菜、おじいちゃんに

婚礼姿を見せられてよかった。

これからは、おまえと幸子を

必ず幸せにする」

祐輔は、この言葉どおり

親子三人で暮らしていこうと

心に決めていた。

やがて、四十九日が過ぎた日のこと。

この日は、弁護士を入れて

祖父の所有の財産分与が

おこなわれた。

祐輔の父と叔父そして

叔母の三人で祖父の財産を分けた。

祖父は、遺言書を書いていた。

遺言書には、会社の財産

そして経営を祐輔の父に

任されることになった。

そして、残りの別荘の管理を

叔父に譲ることにした。

そして、叔母には

駐車場の管理を譲ることにした。

ここまでは、よかった。

実は祐輔は、祖父から銀行の

預金通帳を譲渡されたのだ。

祖父は、祐輔が結婚する時に

困らないようにと祐輔の名前で

貯金をしていたのだ。

金額にしたら、1千万に近い

金額になっていた。

「こんな大きな金、アイドルでの

ギャラでは出ないよ」

「祐輔、それは家族のために使え。

おじいちゃんが最後に託した

優しさだ。気持ちよく受け取れ」

「父さん、おじいちゃんは

オレが優菜とつきあっていたことを…」

「もちろん、知っていた。

しかし、このまま黙って

見守るほうが良いと思ったのだろう。

結婚するにしても

結婚資金が必要になる。

そのために、おじいちゃんは黙って

貯金をしていたんだよ」

おじいちゃんは、

自分のために黙って貯金を

してくれていたんだ。

ありがとう、おじいちゃん。

祐輔は、祖父の優しさに

感謝していた。

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