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彩の季節  作者: 真矢裕美
11/13

実現させた花嫁衣裳

「なんだって?

おじいちゃんが危篤?」

祐輔は、実家からの電話で

祖父の危篤を知った。

祐輔の祖父は、末期の肺がんで

余命半年と伝えられていた。

祐輔は、実家からの電話が

終わるとショックを受けていた。

「あなた、大丈夫ですか?」

「あぁっ、大丈夫だ」

「おじいさんは、あなたを

一番にかわいがってくれたと

言ってくれましたね。

私に、何かできることありますか?

なんでもいいです、言ってください」

「優菜、おじいちゃんは

オレがおまえを嫁に

迎えたことを知らない。

おじいちゃんの命が、

風前の灯火だとわかったならば、

おまえを嫁として迎えたことを

知らせてやりたい」

「あなた」

「優菜、おじいちゃんに

オレたちが夫婦であることを

伝えよう。

おまえに着せられなかった

花嫁衣装を着せてやる」

「あなた」

「おまえと一緒になった時は、

すでに幸子がおなかにいた。

おまえに花嫁衣装を

着せられなかったことが悔やまれた。

今からでも遅くはない。

優菜、オレのために

花嫁衣装を着てくれ」

「あなた、私は花嫁衣装を

着ることを諦めていました。

だけど、あなたがいて

幸子がいてくれるだけでいいと

思っていました。

花嫁衣装を着ることが

できるなんて夢のようです」

祐輔は、優菜の返事を受け

実家に電話をかけた。

「もしもし?オレ、祐輔」

「どうしたの?何かあったの?」

「父さん、いる?

父さんに頼みたいことあるんだ」

「わかったわ、

今事務所にいるからつなぐわ」

祐輔の母は、事務所に待機している

祐輔の父に電話をつないだ。

「もしもし?祐輔、どうした?」

「父さん、緊急のお願いだ。

危篤になっているおじいちゃんに、

オレと優菜が夫婦になったことを

伝えたい。できることなら、

優菜に花嫁衣装を着せてやりたい」

「おまえたちが、結婚したところを

見せたいのだな。

わかった、これから貸衣装屋さんに

連絡を取ろう。

これから、病院に向かえるか?」

「今、出かける支度を

しているところだ」

「幸子のことは、

母さんに任せたらいい。

そして、おまえたちが

婚礼の衣装を着るといいだろう。

そのように段取りをしておく」

「ありがとう、父さん」

祐輔は、電話が終わると

優菜と幸子を連れて、

おじいちゃんの入院している病院に

車を走らせた。

おじいちゃんの命の火が

消えないように祐輔は願っていた。

そして、祐輔の祖父が

入院している病院に着いた。

「父さん、おじいちゃんは?

「もう、命の火が

消えるかもしれない。

祐輔、おまえの言った

婚礼衣装を用意した。

婚礼衣装に着替えて、

おじいちゃんに会って来い」

「優菜、行こう」

「お義母さん、幸子をお願いします」

優菜は、祐輔の母に幸子を託して

祐輔の後を追った。

そして、婚礼衣装に身にまとった

祐輔と優菜が、おじいちゃんの

病室に行った。

「おじいちゃん、オレ祐輔だよ。

わかるか?」

「祐輔?」

「そうだよ、オレの嫁を連れてきた。

優菜は、苦しい思いをした

オレを支えてくれた優しい女だ」

「おまえ、どうしたんだ?

婚礼衣装を着て何かあったのか?」

「おじいちゃんのために、

オレと優菜が夫婦になったことを

見届けてほしかったんだ」

「この人が、祐輔の選んだ

女性なんだな?」

「そうだよ、優菜を

よく見てやってくれ」

「本当に、きれいな人だ。

祐輔、優しい人に

出会えてよかったな。

優菜さん、祐輔は小さい頃から

寂しがりのところがあって、

わがままなことを言うかもしれない。

だけど、優菜さんが

そばにいてくれるなら

祐輔は、これから自分の家庭を

築くと信じている。

優菜さん、祐輔を頼みますよ」

「おじいちゃん、

私は祐輔さんが好きです。

祐輔さんと一緒に暮らしていきます」

そして、祐輔の祖父の命の火が

燃え尽きようとしていた。

「おじいちゃん、おじいちゃん」

「ご臨終です」

祐輔の祖父は、

静かに息を引き取った。

たった一人の孫の婚礼姿を

見届けての旅立ちであった。

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