表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
手習ひ  作者: MOCHA
第10章 叙位
45/50

開眼

 高階(たかしな)姉妹姫が宮仕えを始めてから半年が過ぎ、既に秋も深まっていた。

(そろそろ衣替えね)

 妹の体調を考えながら、高階(たかしな)姉姫は独り言(ひとりご)ちした。薬草も季節によって種類の違うものに生え変わり、季節の移ろいを感じていた。

 多くの書を読み、(ひな)の海で一日中外で過ごした高階(たかしな)姉妹姫は体力にも恵まれ、割り振られた仕事は大抵(たいてい)午前中には終わらせ、午後からは自分の時間としていた。見習いである外仕女(げのしじょ)は仕事の量が多かったが、入り立ての様に日が暮れる迄続けることはなくなっていた。それだけ仕事に慣れ、コツも覚えたというところか。

 この時代、正規の官吏は大抵(たいてい)午前中に仕事を終わらせ、後は自分の時間となる。勿論、朝は超早いが・・・。身分が高くなればなるほど、(くらい)や官が高くなればなるほどその傾向は顕著だった。自分の時間は遊びに費やしたり、この時代は教養をどれほど身に着けているかによって出世にも影響するので、自分を高めるために時間を使ってる官吏も多かった。仕事は形骸化(けいがいか)し、雑用や定型作業は下の官吏に下ろされて、殿上人(てんじょうびと)は優雅に午後を過ごしていた。

 高階(たかしな)姉妹姫は殿上人(てんじょうびと)程ではないが、姉姫は主に教養を身に着ける為に時間を費やし、妹姫は同僚や主に図書寮(ずしょのりょう)の官吏との交流、時には京の郊外に遊びに行くこともあった。それぞれに見合った形で宮仕えを満喫していた。

 

 高階(たかしな)姉妹姫は自分の生活に余裕が出てくると、率先(そっせん)して他の同僚の外仕女(げのしじょ)に仕事の手解きをし、それまでてんでバラバラだった外仕女(げのしじょ)達の仕事を整理し、外仕女(げのしじょ)達を組織化し、仕事を効率的に行えるようにし、分業制に改める。これにより、外仕女(げのしじょ)の仕事は昼前には終わるようになっていた。上司に該当する仕女(しじょ)が仕事をしているのをよそに先に仕事を終えて帰ってしまうのだから、改革と呼んでもおかしくなかった。中には外仕女(げのしじょ)に仕事を押し付けようとする仕女(しじょ)もいたが、身分不相応(ふそうおう)の仕事を見習いがするのは問題であると高階(たかしな)姉妹姫は突っぱねた。采女(うねめ)仕女(しじょ)の上司に相当する)の覚え愛でたくないと言い添えれば、大抵(たいてい)仕女(しじょ)は引き下がった。そこには、同僚である外仕女(げのしじょ)の総意があったので、数的にも道理的にも劣る仕女(しじょ)達が強く言えなかった背景もある。

 だが、仕女(しじょ)の一人が事の次第を采女(うねめ)に密告し、女嬬(めのわらわ)采女(うねめ)の上司)に伝わり、たまたま実直な性格であった女嬬(めのわらわ)典書(ふみのすけ)女嬬(めのわらわ)の上司)に報告されたことまでは、高階(たかしな)姉妹姫も知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ