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手習ひ  作者: MOCHA
第6章 時は移れり
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姫の宮仕えと父の思惑

 高階(たかしな)邸は右京(うきょう)にあり、湿地帯に囲まれている。部屋への湿気を防ぐため土を盛ったり、木をなるべく伐採していた。その中で唯一近く川から水を取り入れた池がある。飢饉の時の水を確保するために先代である持国(もちくに)の父が作った物だった。持国(もちくに)は考え事がある時、この場所をよく使う。近くの湿地帯の名残で泥濘(ぬかる)んでおり、外出好きな姫達でさえ近寄らない場所であった。

 婿取りの話をして以来、高階(たかしな)家は大きな風が吹き荒れた様に様々な問題が降りかかってきた。自業自得と言ってしまえばそれまでだが、ただで転ばないのが持国(もちくに)の強みだった。

(少し二人の姫も見くびっていたようじゃ。不可解な出来事ばかりであったが、姫達の思い通りになってしもうた。今にして思えば、やはり姫達が陰で動いていたと見るべきであろう。)

 婿取りの話も、親の言うことを聞かず外に出掛けてしまう姫君達に戒める為のものであり、そこまで本気ではなかった。

高階(たかしな)家の事を考えるならば、(しか)るべき所から婿を迎えて家の安泰を図るのが筋。(しか)れども、正八位上(しょうはちいじょう)散位(さんい)の家に来るは地方の郡司(ぐんじ)の子息ぐらい。それでは安泰どころか、高階(たかしな)家のなけなしの財を婿の実家に奪われてしまうのがオチ・・・やんごとなきお人の嫁に出してしまえば姫達は安泰であるが、高階(たかしな)家は存続できぬ。高階(たかしな)家は二代続けて男が一人しか生まれておらず、ワシの代では男はおらず姫君だけになってしもうた。これから側室を迎える余裕もなく、二人の妻に子を望むのも難しい。されば、二人の姫を宮仕えに出し、図書頭(ずしょのかみ)の面目を立て、知己(ちき)を得るのも一手・・・か。図書頭(ずしょのかみ)と言えば図書寮(ずしょのりょう)の筆頭で殿上人(てんじょうびと)図書頭(ずしょのかみ)にどのような思惑(おもわく)があるか分からぬが、お礼の品等を送り、様子見してみるか)

 持国(もちくに)思惑(おもわく)は続く。

(ワシは近いうち、受領(ずりょう)の部下として地方へ赴任する命が下されている。ワシが不在の間に、先の好き者や賊が忍び入れば、妻や子がどのような目に合うかわからぬ。二人の姫が身分の卑しい者のお手付きにでもなってしまったら、婿取りどころの話ではなくなってしまう。ならば、一層の事、二人の姫を安全な宮中に上がらせ、安泰を図るのも良いかも知れぬ。また、可能性は低いが、二人の姫が後宮で叙位(じょい)でもされれば、高階(たかしな)家の家格は上がる。さすれば、せめて伊織(いおり)には婿を取ってもらわねばな)

 持国(もちくに)は考えを(まと)めると(ようや)く立ち上がった。

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