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永遠の一時
その年の晩秋-
例年にも増して風は冷たく、早い冬の訪れを予兆していた。
季節に沿うように、二人の姫も冷たい風が吹く屋敷の外に出るのを控えていた。最も、鄙の君の屋敷への来訪も繁く、会話に事欠く事なく、一ノ姫の知識欲も旺盛で、祖父の書棚の書籍を読破してしまいそうな勢いであった。鄙に暮らす同年代の子供達は北風が吹いても元気で、隠居所で出される菓子や薬湯目当てに屋敷に出入りしていた。門番の衛士も子供には見て見ぬ振りをしていた。
これから冬が近づくと人の往来も減るかもしれないが、再び春が来れば人の出入りも多くなるだろうと二人の姫は予感していた。鄙の君も屋敷では一人暮らしで、召し使いを雇っているが、人恋しさに二人の姫の元に通っているようである。祖父との碁打ちにも熱心で、夜を明かして囲碁に耽り、翌日祖母に二人してお小言を頂戴していた。
こんな日々が永遠に続けばいいのにと二人の姫は思い始めていた。
気が付けば、鄙の海に来て3年半以上が過ぎていた-




