20/50
鄙の君の所以
二人で囲碁を打っている時だった。
「鄙の君はいつからここにいるの?」
何気なく二ノ姫が鄙の君に問う。鄙の君は打ち手を止める。
「さて・・・」
鄙の君は右手に持った扇子で後頭部を軽く叩く。
「物心ついた時には既にここにいましたから」
鄙の君は再び石を打つ。
「ふうん」
二ノ姫はわかった様なわからない様な相槌を打つ。ついでに石を打つ。
「!」
鄙の君が盤面を凝視する。そして、静かに石を置く。
「悪手ですな。伊織殿、手が疎かになっておりますぞ」
「あっ・・・」
一ノ姫は下唇を噛んだ。
同時にはぐらかされた様になったが、一ノ姫は違和感を覚える。こんな鄙でこれだけの教養を得ているのが不思議でならなかった。でも、それ以上問い質すのは禁忌の様な気がした。人の機微に聡い二ノ姫もそれ以上は聞こうとしなかった。




