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二ノ姫の快方
一ノ姫と二ノ姫は近くの木陰で夕涼みをしていた。
夏の間、外出ばかりしていたせいか、二人の姫は陽射しで肌は小麦色になり、髪も赤茶けた色だった。この時代、きめが細かくて色白の美肌、ふくよかで柔らかそうな頬、長くあでやかな黒髪が美人の条件だった。外で体を動かしているせいか、二人の姫は贅肉がなく、すらりとしていたので、美人の条件からは程遠かった。外を出歩くのに長髪は邪魔だったので肩の先で切り揃えていた。京に戻ったら、二人の母にどやされるかも知れないと一ノ姫は思った。
「それは不健康と言うものです」
元医博士殿は宣う。今日も医博士が同行していた。
「色白というのは人に依りますが、外に出ず部屋にひたすら引き籠っているせいです。ふくよかなのも運動不足ですな。黒髪も長ければいいものではない。手入れも大変ですし、洗わないのは不衛生ですし、臭いを消すために香を焚くのは論外ですな」
元医博士は歯に衣を着せぬ物言いで断言する。その横で鄙の君も頷いている。
(鄙の君は健康的な人がいいのかな)
そんな鄙の君を見ながら二ノ姫は思う。




