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手習ひ  作者: MOCHA
第4章 平穏
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月の巡り、星の巡り

 ある真夏の夜-

 二人の姫と(ひな)の君は近くの海に繰り出し、月見をしていた。流石(さすが)に夜に出掛けるのは不用心と思ったのか、いつもの衛士(えじ)を付けたが、辺りは見晴らしが良く、夜盗でもいれば()ぐにわかる場所なので、ある程度の安全が確認されると、衛士(えじ)は3人から少し離れた場所に座り、大欠伸(おおあくび)をしていた。

「おおっ!」

 二人の姫が歓声を上げる。月を見ていると、(ひな)の君の言う通り満月が端から欠けていくのが見えたからだ。

「凄い!」

 (ひな)の君が注釈する。

「実は何故月が欠けるかは解明されておりません。しかし、このような事象が年に数回あることは確認されております」

 宇宙や惑星の存在が認識されていない時代の事であり、(ひな)の君が知らないのも無理なからぬ事であった。

 天体ショーは1時間程で終わり、再び満月が夜空を照らしていた。

(感無量だわ)

 京に残っていたら、この様な素晴らしい景色は見られなかったと一ノ姫は思った。

 (ひな)の君は満足そうに二人の姫を見ている。ちょっと、外着(そとぎ)の二人の姫にときめいている(ひな)の君であった。


 二人の姫と(ひな)の君は、隠居所近くの小高い山に来ていた。空は一面星が広がっていた。丘の端の切り株でいつもの様に衛士(えじ)が居眠りをしている。

「今宵は月が見えぬ」

 二ノ姫がぽつりと言う

「新月ですから」

 (ひな)の君が注釈する。

「故に星は良く見えます」

 と付け加える。

 三人は空に向かって紙を(かざ)し、大きな星を墨で落とす。数時間後、再び紙を(かざ)す。

「あ・・・動いている」

 二ノ姫が驚いた様に(ひな)の君を見る。

「星も動くのです。何故動くのかは分かっておりませぬが、恐らく月が動く事と同じ道理かと」

「星も明るさや大きさが違うのね」

 京に居た頃は星など見上げたことのなかった一ノ姫は、(ひな)の君の注釈を聞きながら呟く。

「物語の中に竹取物語があります。かぐや姫は月から来たと言い伝えられています。月は日ノ本に一番近い星だと解釈する者もいます。もしかすると、この日ノ本のある地も月と同じ星なのかも知れませんね」

 (ひな)の君は冗談めかして言う。

(あり得るのかも知れない)

 一ノ姫は(ひな)の君に同調するように頷いた。

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