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夢見の京
二人の姫は転寝をしていた。
近くで碁を打つ音が聞こえる。屋敷の簀子で雨を見ながら祖父と正綱が囲碁を打っているようだ。微睡の中で一ノ姫は耳を澄ました。
「京は相も変わらず落ち着かぬ様子で」
「また何かありましたか」
「傍流摂関家と連衡貴族が官職を巡って対立してるようですな」
「なるほど」
「ま、数年前の血で血を洗う政変に比べれば可愛いものではと」
「足の引っ張り合い程度ということですか」
「如何にも」
再び石を打つ音が聞こえる。
「中央はそれでいいでしょうが、地方はそうともいかぬでしょうに。地方の豪族どもが反抗し、租税も滞りがちだと」
「おお・・・愚息も苦労していると文に書いてきておりますな」
一ノ姫は再び微睡んだ。
一ノ姫が目覚めた時、雨は既に上がっていた。碁を打つ音も止んでいた。
(はて、先程の話は現だったか、それとも夢であったか)
一ノ姫にも判断がつかなかった。




