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災厄の蟲使い 前編  作者: トワ
思いと傲慢
92/114

戦いとは

「な、なんだと⁉︎」


隣に座るクライエルが立ち上がり、自分が予想していた結果とは違う形となったことに驚きの声を上げる。


「残念だったな、今回は俺の勝ちだ」


クライエルは悔しそうな表情を見せるが、徐々に落ち着きを取り戻しき、再び椅子に座る。


「少し予想が外れただけだ、金貨500枚など端金だ。 くれてやる。 それに、ドラゴンは死んでいないからな」


「みたいだな」


見下ろすと、ドラゴンはイチに斬られたにもかかわらず、その場に倒れて痛みからか傷を抑え、暴れている。しばらくするとドラゴンは運ばれていき、イチは華麗に退場していった。


「ゼフくん、惜しかったな。 もう少しで私に賭けでも勝てたろうに」


「そうだな、次からはきつく言っておこう」


「私も次からもっと気を引きしめて行くつもりだから覚悟した前まえ」


(イチにはドラゴンに勝てても、殺せないだろうな。 あの奴隷の 、防御力だけは勇者と同等の力を持っている。 クライエル自身もそれを承知の上で出しているんだろうが、まさかイチに負けるとは思わなかったのだろうな)


「次は2つ空くみたいだ。 勝ち取った金貨は帰るときにその腕輪を受付で提出して換金したらいい」


「そうか、これは丁寧に教えてもらって助かる。 てっきり負けたことは揉み消されると思ったよ」


クライエルの顔がみるみるうちに赤くなっていくのがわかる。どうやらこういうことには慣れていないらしい。


「ゼフくん、そういう発言は謹んでくれたまえ。 私だって1人の貴族という誇りがある。 そんな卑怯なことはしない」


「そうか、それは悪かったな」


「わかればいい」


クライエルはニコニコと笑う。ゼフはそう言ったものの全くもってその言葉を信じていなかった。おそらくこいつも自分に不都合があればなんでもやる醜い人間なのだ。ゼフはそんなことを思い、会話を続けるために言葉を投げかける。


「次の試合はいつ始まるんだ?」


「おそらくそろそろだろう。 そんなに気に入ってくれたかい?」


「かもな、少し面白い。 明日は奴隷を全試合出したい気分だ」


それを聞いたクライエルはそれに食いつくようにこちらを見ながら口を開く。


「なら、出てみてはどうかね?」


「いいのか?」


「ああ、もちろん。 この賭博場の所有者として私が許可しよう。 ただし、出るからには棄権はできない。 もし、1度でも出られない試合があるなら大量の違約金を払ってもらう。 それでもいいなら出てみてはどうかな?」


(なるほど、こいつは俺で金儲けしようという算段か。 案外簡単に釣れたな。 おそらくこの他にも用意しているからこその大胆さなんだろな。他の出場者を使って、最悪殺してくるだろうが、こちらには蘇生蟲がいる。 安心してこの賭博場を潰せるな)


ゼフはついニヤついてしまうのを抑えて答える。


「その案受けよう、明日は全部出させてもらうぞ」


「そう言ってもらえると思ったよ。 明日が楽しみだ」


クライエルはまさかこの案に乗るとは思わなかったが、これで大量の金が舞い込んでくることが確定する。そのことについ笑みがこぼれてしまう。



✳︎✳︎✳︎



試合が2つとも終わり、ついにサンの戦いが始まろうとする。イチの時に稼いだのは良かったが、次の試合とその次の試合の賭けには大敗北していた。


(まさか、これほど運がないとはな。 なるほど、確かにこれは嵌るな)


「最初は良かったようだが、稼いだ分が全て無くなってしまったみたいだね。 だが、気を落とさなくても大丈夫だ。 そういう時もある」


クライエルはそう助言するが、顔はニタニタと笑い、嬉しそうだ。


「おまたせしました。 掛けの時間です。 今回はサンが2.6倍、ヘキサゴンが1.4倍となっております」


いつものように男性が隣から声をかけてくる。急に出てくるので、少し驚く。そして、最初にクライエルが口を開く。


「私はヘキサゴンに800枚賭けよう」


「承知致しました。 ゼフ様はどうされますか?」


「俺もヘキサゴンに500枚賭けよう」


その言葉にクライエルが少しばかり驚く。


「なんだ、今回は自分の奴隷にかけないのか」


「ああ、流石にあいつじゃどの奴隷にも勝てんだろうな」


(この男は何を考えている? わざわざそんな弱い奴隷を連れてくる意味がわからん)


クライエルがそう考えているうちにも腕輪を渡される。そして、しばらくすると奴隷達が入場してくる。ヘキサゴンに関してはドラゴンには劣るものその筋肉は美しかった。一方サンという奴隷は受付で見た少女であり、彼が言った通りヘキサゴンに勝てるとは思わなかった。


(だが、これでもしも死んでくれればこいつは私の要求を聞かなければならん。 頼むぞ、ヘキサゴン)


「サンのやつ、かなり緊張しているな」


ゼフがポツリと呟く。確かにサンという奴隷はここからでもしっかりと、見える程体を震わせている。


「どうせメッセージなどの外部からの魔法は遮断しているのだろう?」


「当たり前だ、これは公平な戦いだからな」


「公平か……」


ゼフがそう呟くとアナウンスが流れる。どうやら戦いは始まったらしくヘキサゴンは剣を持って、サンに突撃してくる。その攻撃はイチなら避けられただろう。しかし、彼女には戦いをした経験がなく、あっという間に体を斬られてしまった。


「よくやった!」


横でクライエルが喜びからか叫ぶ。そして、動かないサンを確認して彼女の初めての戦いは終了した。そして、30秒ほど経った後、サンの死体は運ばれていった。







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