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災厄の蟲使い 前編  作者: トワ
異変
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引き金

空が薄暗くなる頃、王都は2つの事件に悩まされていた。1つ目は突如姿を消した、本来正門にいるはずの2人の衛兵について。そして、2つ目は探知魔法で調査したところ現在森の方から大量の魔物が王都に進行していることである。


「こうも次から次へと事件が起こると対処しきれんぞ」


衛兵長のガリウスは頭を抱え、呟く。


「正門に立っていた、ケニーとサインの消息が分からないまま、大量の魔物の進行か…… 数はどれくらいだ?」


ガリウスは隣で一緒に歩いている衛兵に聞く。


「はい、数は大体100ぐらいだそうです」


「ずいぶんと少ないな。 これなら冒険者に頼めば済むんじゃ無いか?」


ガリウスは階段を上りながら隣の衛兵に当たり前の質問した。


「冒険者には既に頼んでいました。 ただ、彼らには森から逃げてきた魔物を倒すだけで精一杯のようでして……」


「それで俺達も呼ばれたんだな。 魔物が逃げるということはその100体の魔物は相当な奴ということか」


「はい、そのようです。 もし、森から魔物が大量に逃げて来なければ探知魔法なんて使いませんでした。 向こうはおそらくこちらが気づいてることを知らないと思いますので、先手を打てます」


「そうか…… 言っちゃ悪いが、この戦い楽しみだな」


ガリウスは戦うことが好きである。特に強敵と戦うことで自分を更なる高みへ連れって行ってくれる気がしていた。ガリウス達は街を守る30mある壁の一番上に着く。周りを見渡せば王都の街を一望できた。

ふと、見てみると珍しい顔ぶれがあった。


「よほど警戒しているのか、城の魔導士達がこんなにいるとはな」


「なんでも王女様の命令だそうです。 城よりも街を守れと言われたようなので……」


「なるほどな、王女様の判断は正しい。 俺達の王女様はとても素晴らしい人だな」


ガリウスは王女様が両親を亡くして一人で生還したことを知っていた。それで心身ともに傷ついてるはずなのにこの行動力は素直に凄いと感じていた。ガリウスの中の王女に対する評価が1段階上がる。


「さて、俺は一応こんなんでも衛兵長だからな戦地を共にする魔導士達にに挨拶をしようじゃないか」


「わかりました、30分後にここで落ち合いましょう」


そう言うと2人はそれぞれ別々の方向に向かって歩き始めた。



✳︎✳︎✳︎



森の中、ゼフは約100匹の蟲達を引き連れて王都に着々と歩みを進めていた。その集団の強さを察知したのか、向こうから襲う魔物はいない。これほど楽なことはあるだろうかとゼフの気が少し抜ける。


「時間をかけていないはずなのに、随分と遅くなってしまったな」


(まぁ仕方ない、少し森を調べていたからな。 だが、どうやって蟲達を街に入れるか…… いや、もしかするとあの街を貰った方が手っ取り早いのかもな」


通常召喚士は召喚した魔物を戻すことができるが、それをなくすことによって自分自身の召喚士としての全能力と蟲達の全能力を向上させていた。なので、ゼフは蟲を戻すことができない。


(こればっかりは仕方ないな。その分維持魔力もかからないし、蟲達の食料も俺の魔力で賄えるのだから)


ゼフは一緒に歩く蟲達横目で見るが、いつ見ても癒される。他の人間がどう思うかは知らないが、蟲は好きである。自分で召喚したなら尚更だ。


(沢山の蟲達とリラックスしながら歩くなんて夢にも思わなかったな。おそらくこれからはたくさん死んでもらうことになる。 だが、俺は蟲達が安全で楽しく暮らせる場所をいつか手に入れてやる。 だから、もう少し待ってくれ)


自分が蟲が好きだからこのような愛着が湧いてるのではないとはわかっていた。自分が召喚した蟲だからこそだと。今まで召喚士と蟲達の能力を上げ、自分自身の魔力を向上させることしか考えてこなかった。

おそらくこの先もそうだろう。だが、ほんの一瞬でもこのような時間があればいいと感じていた。


(俺は自分の蟲をバカにするような奴が許せなかった。だから、そういうやつらは全て殺してきた。 もしかしたら我慢するべきだったのかもな。 だが、俺は目的を達成するために突き進む。 まずは、SSランクの冒険者になることだな)


ゼフはこの世界での最初の目的を胸に刻む。前はB級だったが、ここではなれる可能性がある。ここでなって満足かと言われたならむしろあのような世界に居たいという方がバカだと思う。

だから、幸運と言えるだろうAランクの最弱の剣士にコテンパンにやられたおかげで転生し、この世界にやってこれたのだから。


「もうすぐ街だな」


蟲達はゼフのそれに反応したかのように体を動かす。しかし、あの問題は未だ残っており頭を抱える。


「この数は流石に宿屋は無理だな。 おそらく衛兵がいなくなったことについても捜査してるだろう。 もっと何かいい方法はないのか……」


この世界の街の重要性がわからないため、強硬手段は1度保留にする。そんなことだろうだからか、ゼフはこの世界に来てから普通は常に使う阻害や隠蔽、そして探知の魔法を使っていなかった。だから、森を出た直後フレアキャノンという攻撃魔法が飛んできて、隣にいるビートルウォリアに直撃するのを見えた時、そんな自分をひどく後悔した。



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