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災厄の蟲使い 前編  作者: トワ
思いと傲慢
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奴隷

冒険者組合を後にしたゼフは収納魔法にある皇都から取ってきた大量の金貨を取り出す。どうやらお金はどこも共通らしく帝都でも使うことができた。ただ、大量にあるからかその数から減らしたくない気持ちがあったが、覚悟を決め200枚ほどの金貨が入った袋を握りしめる。


(奴隷か、初めて買うな。 死ななければ何をしてもいいか…… 素晴らしいおもちゃがあったものだな)


ゼフは少し立派な店の扉を開ける。すると、すぐに派手な格好をした店主らしき50代半ばであろう男が近寄ってきた。


「いらっしゃいませ、私は奴隷専門店のミカヅチのオーナーでありますグレイドルフと申します。 お客様は当店は初めてのご利用でしょうか?」


「ああ、初めてだ」


「それはそれは、誠にありがとうございます。 奴隷に関するご要望はありますでしょうか?」


「いや、特にない。 おススメの奴隷を2人ほど選んでくれ。 お金に関しては金貨200枚というところだ」


グレイドルフは一瞬驚きニコニコした表情が少し崩れるが、やはりそこはプロなのだろう。すぐに元に戻す。


「かしこまりました。 では、私について来てくださいませ」


そう言われるとゼフはグレイドルフに連れられ店の奥に入っていく。そこには檻に入った様々な奴隷と思われる人々がいた。服装などは質素だが、見た目は特に汚れておらず、寧ろ清潔感が漂っていた。


「奴隷はもっと酷い環境だと思ったが、案外そうでもないみたいだな」


「はい、ここではお客様が不快に思われないように見た目を綺麗にさせてもらっております。 お値段も奴隷の能力によって評価分けをさせてもらい、優秀な者ほど高いというわけです」


「年齢も値段を考慮するうちに入るのか?」


「ご察しの通り、いくら優秀な能力を持っていたとしても老い先短いといけませんから、そういう奴隷は安くしております。後病気などにかかっている奴隷も非常にお安くなっております」


「なるほどな、ちゃんとしてるみたいだな」


「ありがとうございます」


歩くこと2分、ようやくグレイドルフの足が止まる。


「こちらがお客様にオススメします奴隷でございます」


グレイドルが指を指す檻の中には圧倒的な筋肉量を誇る大柄の金髪の男が静かにそこに座っていた。


「この奴隷は剣士か」


「お客様は良い目をしてらっしゃいますね。 この奴隷はかつて凄腕の剣士でした。 しかし、一般人を殺してしまいそのまま奴隷となった者であります」


「なるほどな、それでもう1人はどこだ」


「既にお客様の後ろで御座います」


グレイドルがそう言うので振り向くとそこには先程の奴隷とは対照的な痩せている黒髪の男がこちらを見つめていた。


「こちらの奴隷の職業は魔導士でして、かなりの魔力量を保有しております。 当店で最も高額な奴隷で御座います」


「気に入った2人とも買おう」


「ありがとうございます」


「だが、1つ気になることがあるんだが、何故戦闘力が高い奴隷をオススメする?」


「お客様は奴隷は初めてと仰いましたね。 それなら無理もありません。 帝都には奴隷を戦わせることでその勝敗を賭けたり、魔物と戦わすことで楽しむということが流行っています。 おそらくお客様も遅かれ早かれそういうことに参加するでしょう。 なので、強い奴隷を選ばさせてもらいました」


「なるほどな、そういうことか」


「はい、では奴隷をご購入されましたお客様にはその際にやってもらうことがありますので別室に案内致します」


「わかった」


そう言い、ゼフは大人しくグレイドルについて行く。どの奴隷も目を張るものがない。所詮は奴隷、勇者もあの程度なら仕方ないだろう。歩いて行くと、1人の奴隷と目が合う。それは15、6歳であろうピンクのロングヘアーの美しい少女だった。


(少し気になるな……)


それはただの気まぐれだろう。魔力の量を計る魔法であるマジックサーチを使った。そこには勇者すら越える魔力量を感じ、ゼフは驚きを隠せなかった。









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