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災厄の蟲使い 前編  作者: トワ
狂った街
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滅び

グリンガムはゼフから進軍の命令が下ると集めた全魔族と蟲達に皇都に進軍するように指示を出す。数刻たった今、目の前の惨状は予想通りであり、皇都の騎士達が迎え撃つも反撃をくらい、侵入を許してしまっていた。


「グリンガム様」


「なんじゃバク」


「1つ疑問があるのですが、よろしいでしょうか?」


「構わん、話せ」


「はい、実は私全魔族を集めた意味がわからないのです。 戦闘ができる魔族ならまだしも一般の魔族を集めるなんて、私達全員を排除しようとしか考えられないんです」


グリンガムは少し悩んだ後口を開く。


「お主が思っていることもわからんでもない。 実際ワシにも何故魔族達を全員集めたのかわからん」


「でしたら……」


「だかの、1つだけ言えることがある。 それはワシらはゼフにとって邪魔な存在ということじゃ」


「邪魔ですか……」


「だから、ここで死んでも後悔しないようにしとくんじゃな」


「わかり…… ました……」


(あれは少々危険じゃな)


そう考えていると魔族達から悲鳴が上がり始める。


「なんじゃ⁉︎」


その場で悲鳴の起こっている場所を見ていると1人の魔族がこちらに向かってきた。


「グリンガム様! 蟲たちが暴れ始め、敵味方関係なく襲い始めました! 現在、戦闘に特化した魔族達が相手しているのですが、全く歯が立たず、1体も倒せません!」


「なんじゃと⁉︎ なら、今すぐ撤退を――」


そう言葉を叫ぼうとするが、言葉が出なくなる。何故だか自分が自分ではないような感じがする。


(どういうことじゃ。 何故喋れない)


必死に抵抗しようとするが、自分の意思とは関係なしに口が開かれる。


「今のはなしじゃ。 全魔族で迎え撃つのじゃ。 逃げる事はこの魔王グリンガムが許さん」


「承知しました!」


そう言って魔族はそれを伝えるべく駆けてゆく。


(何故じゃ、体が言うことを聞かん。 ワシは何故……)


そう抵抗しているうちに思考は侵され、正しいことを正しいとすら認識できなくなる。そして、しばらくしてゆっくり口を開く。


「さて、ゼフ様のために死ぬかの」


そうしてゆっくり1歩ずつ進んでいく。目の前の圧倒的な暴力で仲間達が死んでいくのを見つめながら、自らの死に近づいていく。そして、ビートルウォリアの前に立つと目を瞑る

不思議とまぶたの隙間からからは涙が溢れてきた。



✳︎✳︎✳︎



「ゼフ、お主はこれでランクはSSランクに昇格じゃ。 おめでとう」


「すまないな、アイドリッヒ」


「例には及ばん。 きちんと魔族が滅んだのを確認できたからの。 寧ろこんなに強い奴が味方なのが頼もしい限りじゃ」


「所詮は魔族だからな。 俺の相手ではない」


アイドリッヒは少し間を開け再び話し出す。


「隣のシルヴィアくんもSSランクとは十分に出世したの。 わしは嬉しくて涙が出る」


それにシルヴィアは全く答えない。だが、アイドリッヒの目には喜んでるように見える。


(性格は変わってしまったがの……)


「それで、ランク以外にも何か俺達に用があるんだろ?」


「そうじゃ、初めて魔族達の領域を超えたところ人間の街に行くことができた。 残念ながら1つは滅んでしまっていたがの。 しかし、おかしなことに隣の街の鳳都に聞いたところ数日前には確かに存在したらしいのじゃ。 何か知らぬかの?」


(俺を疑っているのか。 証拠は全て抹消し、外部に漏れないようにしたはずだ。 おそらくボロを出させようとしているのだな)


「知らん、俺は魔族を討伐するのに忙しかったからな」


「そうか、それなら良い。 それとは別に話がある」


そう言って一通の手紙を渡してくる。


「帝都の怪物がお主の噂を聞きつけ、会いたいそうじゃ。 向こうは忙しいから会いにはこれないようじゃが、どうする?」


(怪物か…… 俺も会いたかったところだ。 こいつの性格だ、特に裏はないだろう。 まあ、罠に嵌めるなら臨む所だがな)


「会おう」


「そう言ってもらって助かる。 じゃが、1つ勇者を同行させるとだけ言っておこう」


「問題ない、いつ出発だ」


「いつでも問題ない」


「それじゃあ明後日の朝だ」


「了解した」


そう言ってゼフは部屋から出て行く。アイドリッヒは5分ほど椅子にもたれじっとした後体を起こすと、メッセージを発動させる。


「アイドリッヒじゃ。 ゼフが帝都に行くことが決まった。王都が滅ぼされたその日から泳がされていることに気づいていないようじゃ。 それを怪物に伝えてくれ。 それと、わしは裏切らない、あなたの僕ということもできれば伝えてくれるかの?」


メッセージが終わると深く椅子に座り、今までの疲労がきたのかゆっくりと息を吐いた。



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