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災厄の蟲使い 前編  作者: トワ
異変
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常識

ゼフは掲示板の前まで来ると、どのような依頼があるのかを確認していた。周りからチラチラとこちらを意識する視線が向けられるのを感じる。


(流石にここまで見られると俺でも意識してしまうな。 流石にやりすぎたか? いや、ないな。 もしかしてあいつらを殺したからか? 元はと言えばあいつらから仕掛けたのだから殺されても文句は言えないはずだ。 それに冒険者同士ならこういうことも日常茶飯事だろ)


実際、周りの冒険者は殺されたことは仕方ないと思っていた。冒険者が気にしているのは別のことである。それはビリーズ3兄弟が手も足も出ない蟲を一瞬で召喚するゼフの技量に畏怖しているのだ。そんなこともいざ知らずゼフは良さそうな依頼を手に取る。


「まずは初心からだな。ゴブリンの討伐か、流石にあいつらより強いとは思わないが、果たしてEランククエストにあっているのか」


ゼフは依頼を持って、受付嬢がいるカウンターまで歩いく。そして、先程取ったゴブリン討伐の依頼の紙を渡した。


「この依頼をやりたいんだが、大丈夫か?」


「はい、大丈夫です。ただ1つだけ、いくら組合は関与しないと言ってもできればこういうことはやめてほしいです」


「そうか、理解した。 次からは気をつけよう」


「助かります、では改めましてゴブリンの依頼ですね。 ゼフ様のランクだと適正でございます。 報酬は銅貨40枚ですがよろしいですか?」


「大丈夫だが、2つだけ聞きたいことがある。 いいか?」


「はい、大丈夫でございます」


「では、まずお金について教えてほしい」


何を誰でも知ってる当たり前のことをと、言わんばかりの顔でこちらを見ているが、受付嬢の手を見ると震えており恐怖しているのがわかった。


「わかりました、では話させてもらいます。 まず銅貨は100枚集めると銀貨1枚と同等のになります。 そして銀貨100枚は金貨1枚と同等になります。 銅貨は10枚ほど支払うとそこそこの宿に泊まることができます。 簡単に説明しましたが、他に不明な点はございませんか?」


受付嬢は意外にも何も言わず、ただ聞かれたことを簡潔に答えてくれた。


「いや、大丈夫だ」


(なるほど、お金に関しては元の世界と大差ないな)


「次にゴブリンの姿と生息域を詳しく教えてほしい」


「わかりました、ゴブリンとは人型の魔物であり身長が100cm前後ととても小さいです。 そして色は黄緑色なのですぐわかると思います。 そして生息地は王都を超えた森に生息しております。 こちらも不明な点は御座いませんか?」


「いや、大丈夫だ」


「では、お気をつけて。 神のご加護があらんことを」


ゼフはそう言われると背を向けて歩き始めた。既に喰い終わり端で待機しているビートルウォリアとガシガシに命令を下して冒険者組合を後にした。



✳︎✳︎✳︎



組合を出た後、案の定通行する人々の様々な視線が不快だったので、そのまま王都を出た。


「ここから少し歩いたら森みたいだが、アリシアの護衛をしていた時にゴブリンには会うことがなかった。理由はいくつか考えられるが、おそらく大丈夫だろう」


蟲達に反応はないが、きちんと理解して聞いているのがわかる。


(もしゴブリンがあの冒険者以下なら、おそらくデスワームに恐れをなして出てこなかったのだな。そもそもデスワームに恐れをなす時点で大したことないな。ほんとうに楽な世界だ。前の世界では考える前に行動しなければ死ぬようなとこだからな)


「この世界はいろんなことを試せるだろう。 俺より強い奴がいないならそれもいい。 そもそも自分より強い奴と戦う意味がわからん。そんなことよりも、弱者を圧倒的な力で蹂躙する方が楽しいだろ」


しばらく森を歩くと、見つからないのが面倒になったので、探知魔法を使ってゴブリンを見つける。


(確か依頼書にはゴブリンを40体も倒さなければならないのか…… 最初の依頼にしては少しハードだな)


ゼフはゴブリンを探知魔法で見つけた場所に向かう。そこには1体のゴブリンが佇んでいた。そこに右手を向ける。


「――フレア――」


魔法はゴブリンに当たると、激しく燃え叫けぶことすら許されずに絶命していった。


(予想はしていたが全く育てていない攻撃魔法で、しかも最下級なのに1撃か)


ゼフは嬉々として召喚魔法を使う。


「来いガシガシ」


そう言うと30個の魔法陣が現れ割れる。そこには新たにガシガシが30体召喚されていた。そして、ゼフは命令を下すため口を開いた。


「ゴブリンを殺し、40体になるまでここに運んでこい」


そう言うとガシガシは雄叫びを上げながら凄まじい速さで森にばらけていった


「あいつらは生き物を殺すのが好きだからな、困ったものだ。 おそらくガシガシだけじゃ時間がかかるだろう。こいつらも呼んでおくか」


無詠唱で召喚魔法を使うと50個の魔法陣が現れ割れる。割れるとそこには普通サイズの蚊のような蟲が50体ほどゆらゆらと飛んでいた。


「探知蟲、ゴブリンを探知しガシガシ達にその場所を伝えろ」


そう命令すると遂行するために探知蟲達は動き始めた。探知蟲の能力は敵の位置を捕捉し、他の蟲に伝えることができるという、そういうことができないゼフにとって便利な能力であった。

戦闘能力が皆無であり、防衛手段が微量の毒を吐くことしかできず、戦闘面では役に立たない。 ただ、この世界の生物にはその毒すら効果があるというのはゼフはまだ知らない。


(やはり、色んな手段で召喚時の魔力消費量を減らしているとは言え、他の蟲とは比較にならないくらい探知蟲は魔力を消費しないな)


そう思っていると、ゴブリンが運ばれてきた。そして、それは次々と運ばれてくる。5分もしないうちに目標の40体に到達してしまった。


「随分と早かったな。――ボルックス――」


ゼフは収納魔法を発動させると、ゴブリンを謎の空間に放り込んでいく。その作業もすぐに終わる。


「よし、お前ら帰るぞ」


ゼフはガシガシ、探知蟲、ビートルウォリア、デスワーム等100体近いさまざまな蟲達を引き連れ王都に向かい始めた。



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