潜入
皇都のには長年使われていない地下通路が存在していた。現在、結界維持施設を全て破壊し終え、歩夢達だけが未だにメッセージが無く合流できていない状況だった。
「どうしたのかしら歩夢……」
真里亞は歩夢が合流できていないことを酷く心配する。
「なんらかのトラブルがあったんだろう。 もう少し待ってみよう」
レンがそれに答える。翔太は顔が青く、何か落ち着かない雰囲気を出してる。そして、みんなの顔を伺いながら口を開く。
「レンには言ったけど、みんなの結界維持施設どうだった?」
「僕の所は生きてる人はいなかったよ」
「え⁉︎ 圭太のとこもなの⁉︎」
「どう言うことだ? 2人のところもなのか?」
レンは3人を見据える。
「そうだよ、僕がメッセージの連絡で受けたのは大体同じ内容だったよ」
「どうして黙っていたんだ?」
翔太が問い詰める。
「黙っていたわけじゃないよ。 歩夢達が来たら話そうと思っていたんだ」
3人はそれを聞いて納得し、黙る。そして、勇者達は施設の光景を思い出してしまう。切り裂かれた死体や原型を留めてない死体など。勇者達は顔色が悪くなるが圭太が空気を変えようと口を開く。
「そういえば、ダリとガーナラスはどこにいるんだ?」
圭太の言うダリとガーナラスは共に行動していた剣士と弓士の者達である。
「2人には、真里亞と一緒に行動したハームとナタレイの4人チームでこの地下の見張りを任しているんだ」
圭太は4人がこの場所から移動したことも、そんな話をしていたということも知らなかった。いや、気づけなかったというのが正しい。
(どうして気づけなかったんだ? いや、そんなことより聞かなくてはいけないことがある)
「そういえば、レンと一緒にいた2人は大丈夫なのか?」
勇者達がこの場所に来た時には2人はいなかった。
「2人は怪我をしてるからここから少し先に物置のような部屋があったからそこで休ませているよ」
「見てきていいか?」
「いいよ」
圭太は1人物置部屋に向かう。それはレンが言ったとおりすぐそこにあり、中には怪我をしてピクリとも動かない寝た状態の剣士と弓士の姿があった。
「息はあるみたいだな。 よかった……」
圭太は確認すると、すぐに部屋を出る。そして、ゆっくりと勇者達とレンの元に戻る。
「確認したよ。 怪我の方は見た限りだとそこまで深くなくてよかったよ」
「それもあの2人が強かったお陰だよ」
レンは2人を庇いながら戦っていたが、それでもあの程度の怪我で済んだのは2人の強さにあると思ってい口にした。
「だけど、レンを見る限りだと無傷みたいだけどすげぇな」
「そんなことないよ。 ただ、潜ってきた修羅場の数が違うだけさ」
「そういえば翔太と一緒に行動していた2人はどこ行った
んだい?」
「ああ、そういえば圭太が来る前にそこらへんで用を足してくるって言ってたけど、たぶんそろそろ戻ってくるかな」
「そうなんだ」
圭太は歩夢以外は今のところ無事なのを聞いて安心する。
「この場所には誰1人守っている者がいないのは不思議ね。 単独行動しても大丈夫なくらいザルだわ」
「ここは全く使われてないからね。 こんな警備だからこそ僕達は簡単に侵入できるんだから」
「そうなのね…… レンはどうやって皇城からここに来れたのかしら?」
「暴れた後とりあえず殺して殺して、人が少なくなったところで皇城内の秘密の通路から入ってきたんだよ」
「ちょっと待ってくれ。 じゃあ今皇城はどうなっているんだ?」
「混乱状態だろうね」
真里亞と翔太は素直に驚く。こんな状態の城に潜入しなくてはならないのかと……
「2人とも心配しなくて大丈夫だよ。 皇帝の性格的に中の警備はほとんどいないと考えていい」
「 どういうこと?」
「皇帝は城内に警備を配置することを嫌っているんだ。 だから、例えこのような騒ぎを起こしたとしても大丈夫というわけさ」
「そういうことね」
「俺達が潜入しても大丈夫というわけか」
「そうだよ」
それを聞きみんなひと安心する。レンはなぜか嬉しそうに微笑みだす。
「みんな聞いてくれ。 今歩夢からメッセージが入った」
「よかった…… これでひとまずは安心ね」
真里亞は胸を撫でおろす。
「レンさん、それでどんな内容だったんですか?」
「内容は簡単に纏めると警備が厳しいから、こちらに合流することはできないらしい」
「そうなのか⁉︎」
「うん、でも安全な場所に隠れてるみたいだから自分達抜きで魔晶石を破壊してほしいということらしい」
「そうなのね、安全と分かれば安心ね。 仕方ないけど、私達だけでやりましょう」
「そうだな」
「そういえば翔太。 まだ、あの2人は帰ってきてないのか?」
「ああ、トイレにしては少し遅すぎる気がしてならないんだよな……」
翔太は安心できていないのか、困り果てた顔を浮かべる。
「そうか…… 時間も限られてるし、2人はダリにメッセージを送って任せとくよ」
「それはありがたいです」
レンは手のひらサイズの水晶を取り出し魔力を込めると、少し光る。
「ダリ、レンだ。 少し頼みたいことがあって連絡させてもらった。 実は翔太と共に行動していたグレイヴとアリアがまだ帰ってきていないんだ。 僕達は魔晶石の破壊をしなければならないから探してくれないかい?」
レンは喋り終わると一息つく。そして、すぐに返信が来たようで、水晶が光りだす。
「これでひとまずは大丈夫だよ。 僕達もやることを早めに終わらしてダリ達と一緒に探そう」
「すまないな、レン。 ありがとう」
「これくらい普通だよ。 さて、それじゃあ僕を含めた4人でこれから潜入する。 準備はいいね?」
3人とも頭を縦に振る。
「それじゃあついてきて」
勇者達は静かにについていく。レンが言っていた秘密の通路というものは1分程歩いた道にあった。それは上に続く階段であり、少し不気味な雰囲気を醸し出していた。
「これが通路なの?」
「ああ、そうだよ」
「よくこんな状態だったのに見つからなかったな」
その階段は普通にそのままの状態で、ここを誰かが通ればすぐ見つかるようなものだった。
「ここには滅多に人が見たら来ないからね」
レンが階段を上がり始める。勇者達はそれに続いていく。
「どうして、人が滅多に来ないのかしら?」
真里亞がレンに問いかける。
「それはこの場所にはある噂があるからだよ」
「噂ですか?」
「うん、この場所には幽霊が住み着いていて、この場所に来た人を攫っていくという噂らしいんだ」
「待ってくれ! それヤバくないか」
レンは驚いてる翔太に微笑みを向ける。
「大丈夫だよ、噂は噂だから。 現に僕は何回もここを訪れてるけど、何もなかったよ」
そんな話をしながら階段を上っていき、行き止まりにぶつかる。レンはその行き止まりを押し上げる。すると、少しずつ動き始めた。
「ここが秘密の通路なのね」
「そうさ…… ここが…… 秘密の通路…… さ!」
レンは最後まで押し上げ外に出る。勇者達もそれに続いて出ると、その先には巨大な魔晶石が置いてあったあの場所だった。
「ここって……」
真里亞が驚くのも無理はない。何故なら、レンからはこの部屋に続いてると聞かされてなかったからである。勇者達が振り返ると出てきたとこにレンが蓋を閉めてるところだった。
「レンさん、別に閉めなくていいんじゃないですか?」
圭太がそう問うと、レンはゆっくりと口を開く。
「そうはいかないさ、ここから逃げられる可能性があるからね」
「え?」
圭太はその言葉に驚く。他の2人も理解しているのか声は出さずに驚いてるようだった。
「ここまで来ればバラしたとしても大丈夫だからね。 さて、聞きたいことがあったら聞こうじゃないか」
その笑みは人間のものではないと感じるほど不気味なものだった。




