夜
勇者達はパーティを楽しんだ後会場から抜け出し圭太の部屋に集まる。レンも気づかれずに抜け出すことができたようで、今は圭太の部屋に待機していた。
「よし、集まったみたいだね。 今はパーティを楽しんでいるようだから人は来ることはないから少しぐらい大きな声を出しても大丈夫だよ」
「でも、念のために重要なことは大きな声で言わない方が良いと思うよ」
圭太はレンに指摘されると慌てて口を開く。
「そうですね、わかりました。 みんな今から始めるけどいいかな?」
「大丈夫よ」
「いいぜ」
「私も大丈夫です」
「それじゃあレンさんお願いします」
圭太がそう言うと、レンは一呼吸置いて口を開く。
「とりあえず、最初にもう一度だけ自己紹介さしてもらうね。 現ギルドマスターのレンと言うよ。 みんなよろしくね」
レンが挨拶をしたので勇者達も1人ずつ順番に口を開く。
「勇者の真里亞よ」
「勇者の翔太だ」
「勇者の歩夢です」
「さて、どうして僕が圭太に協力者として選ばれたかを話そうと思う」
レンが圭太の方に顔を向ける。圭太はレンが何を言いたいのかを察する。
「いいですよ、その方がみんなの不安も取れると思うので」
「ありがとう圭太。 では、その理由としては僕が洗脳されていないからだよ」
「それは、わかってるわ。 それよりもあなたがここにいて大丈夫な理由を教えて頂戴」
レンは真里亞にそう言われると微笑む。
「わかった、理由としては僕は皇帝に良い感情を持ってない。 寧ろ、今の皇帝にはやめてもらったほうがいいと思っている。 だから、僕が知ってることならなんでも話そうと思う。 これで理由にならないかい?」
「ここまで皇帝に反逆的なことを言えるのなら危険じゃないのかしら……」
真里亞は俯き少し考えるが、賛成したのか顔を上げ頷く。
「どうしてそれが理由になるんだ?」
そこに翔太が口を挟む。
「簡単だよ、魔晶石を使って洗脳しているのは皇帝だろ? それなのにレンさんは反逆的な行動や発言をしている。 街全体を洗脳するほどだから個人個人は無理。 それを踏まえてそのようなことをしているから、危険ではないと判断させてもらったよ」
「そういうことか…… ありがとう圭太」
「これでわかってくれたかい?」
レンのその問いに圭太はもちろん、真里亞と翔太は納得している。だが、それも仕方ないだろう。なんたって、圭太はレンにこの街の現状などいろいろ聞いたが、どれも間違っていなかった。それに不安だった。だから、最も簡単なことを考えずに、信じているのだ。
そして、そんな圭太が信じているからこそ真里亞と翔太はそこまで疑うことなく信じているのだ。翔太はあまり理解していないようだが……
(本当に信じていいの? 私にはわからない…… 一体どうすれば……)
歩夢がそう考えていると声が掛けられる。
「歩夢、大丈夫かい?」
「え…… う、うん大丈夫だよ」
「よかった、何か思いつめた様子だったから。 もし、何かあるならいつでも相談してよ」
「ありがとう圭太」
「それで、歩夢はどうかな?」
「はい、私もなんとなくですがわかりました」
レンはそれを聞くと微笑む。
「そうか…… よかった。 みんなが理解してくれたところで早速のだけど次の話に移ろうと思う」
全員がそれに頷く。
「まず、圭太から教えてもらったけど、集まった仲間の人数は僕達5人を抜いて10人ほどらしい。 そこで、チームを5チームに分けることにする」
全員の反応を見ながらレンが続けて話す。
「そのチームの詳細だけど、これを見てくれた方が早いと思うから圭太配ってくれ」
圭太はレンにそう言われると勇者たちに1枚の紙を配る。そこには、チームのメンバーとどこに配置されているかが書かれていた。歩夢の配置は西の結界維持施設だった。
「全員分かれて行動するのね……」
真里亞がボソリと呟く。
「こればっかりは人数が人数だからね」
「どうやって侵入するんだこれ?」
「そこらへんも大丈夫だよ。 まず、僕が配置してる真ん中のところである皇城で大きな騒ぎを起こす。 そうすれば、それぞれの結界維持施設は手薄になると思う。だから、その隙にできるだけ早く壊して欲しいんだ」
「わかったわ、それで一体どんな奴が守っているのかしら?」
「「え⁉︎」」
翔太と歩夢は突然の質問に声を揃えて驚く。
「ああ、いるよ…… でも、どんな奴がいるかまでは分からない。 だけど、強さで言えば冒険者ランクで言えば大体Sぐらいの者達が守っているのは分かっている」
全員の顔つきが厳しくなる。それもそうだ、なんたって勇者達はまだSランクより少し強い程度だったのだから。だから、もしかすると負けてしまうかもしれないと全員が理解していた。
「みんな大丈夫だよ。 学園でしっかり学んでいれば負けることはない。 でも、念のため強化アイテムを配布しておくよ」
「それなら…… 大丈夫だな」
「それで、いつやるのかしら?」
「そうだな…… 5日後が一番手薄になって成功率が高いと思うから、その日にしよう」
勇者達は意外に早いことに驚き、そして覚悟をこの場で決める。しかし、歩夢は別のことで不安だった。だから、明日このことを話そうと決意する。自分の判断は間違ってない、そう信じ、心に決めるのだった。




