学園
闘技場での戦いから早くも1週間が経つ。ゼフは集合場所である学園前でレンが来るのを待っていた。周りは驚くほど静かだ
「あと少しで約束の時間だな」
ゼフはそう言いながら横に立っているシルヴィアを見る。この1週間は情報収集と何故シルヴィアだけがこうなったのかを調べていた。しかし、残念なことにまだ全てがわかったわけではない。
(いつかパラサイトの実験をしてみたいな。 もしもパラサイト自身の性格に起因するもならかなり使えるな)
ゼフはそう心に決めると、足音が聞こえてきたのでそちらの方を向く。そこにはレンが手を振りながらこちらに歩いてくるのが見えた。
「いやー、はやいねゼフは」
「少し早く着きすぎただけだ」
「そうなんだ、それじゃあ早速だけど行こうか」
そう言われるとレンに連れられて学園の中に入る。学園内にはぽつぽつと人がいるようだが、静かである。
「ところで今日は何をしに行くんだ?」
「そういや言ってなかったね、今日はこの学園で1番偉い人に会ってもらうんだ」
「そうか、1つ疑問なんだがなぜ会う必要があるんだ?」
「僕は連れてくるように言われているだけでわからないけど、多分見定めをするんじゃないかな?」
「見定めだと?」
「力があるのはあの戦いを勝ち抜いたからわかる、だがもしも性格に難があったら困るだろう?」
「確かに困るな、だがもしもそんな奴が来た場合はどうするんだ?」
「残念だけどお引き取り願うんじゃないかな。 学園には念のために冒険者には劣るけどそういう人達はあらかじめ用意してるみたいだし」
「もしそうだとしたら、なぜ用意してるもの達を使わないんだ?」
ゼフがそれを言うと同時に校舎の中に足を踏み入れる。
「冒険者は実戦経験が豊富だからね。 そういう者達が教えた方が都合がいいからね」
ゼフはそのことをあらかじめ知っていた。冒険者を雇う理由は冒険者を雇うお金はそれ以外を雇うのよりも安い。そして、死んだとしてもこの街は冒険者はそういう者だという認識なので大きな騒ぎになることはない。この2つの理由があるからこそ冒険者を雇うらしいのだ。
(それに、この学園は他種族との戦いで勝ち抜くことができる人材を得ることを目的としているらしいしな)
校舎に入ってしばらく歩くと、立派な扉が目の前に現れる。
「ここがこの学園で1番偉い学園長の部屋だよ。 準備はいいかい?」
「ああ、大丈夫だ」
そう言うとレンは2回ノックして中に入る。
「学園長、レンです」
レンがそう言っている先には白ひげが特徴の強面の男がこちらを睨むように座っていた。
「君がゼフ君だね? ギルドマスターのレンから話は聞いてる」
「そうか、それじゃあ改めて挨拶をさしてもらう。 俺はゼフでこっちがシルヴィアだ」
そう言うとシルヴィアは頭を下げる。この程度なら行えることは実証済みである。
「ふむ、言葉遣いはあれだが礼儀は弁えてるみたいだな。それじゃあ、そこの椅子に座ってくれ」
そう言われるとゼフ達は学園長と向かい合う形で椅子に座る。
「さて、今日来てもらったのは君にこの学園でやってもらうことについて話し合うために呼び出した」
「なるほど、それで俺は何をすればいい?」
「簡単な話だ、君には召喚士としての戦い方を生徒達に伝授してもらいたい」
「なるほど、因みにそれはどれくらいまでというのはあるのか?」
「召喚士に関しては特にはない。 できれば私を驚かすぐらい強くしてほしいものだがね」
「それはどういう意味だ?」
「私は召喚士には何も期待していない。 だが、この学園は召喚士を戦場で使えるようにしなくてはならない。 それがこの街のルールだからな」
「なるほどそういうことか…… 不人気の職の人数を増やすためにわざわざ優秀な冒険者をこういう集め方をすることで召喚士を増やし、他の職業のサポートを全て任せ、もし戦えるようならば戦場に投入するということか」
「なんだ、わかってるじゃないか。 君には生徒達に悟られないように他の職のサポートの仕方を教え込むだけでいい。 因みに座学に関しては我が学園の教師に任すから安心しろ」
「だが、もしも俺の持つ生徒全員が戦場に投入できるレベルになった場合はどうするんだ?」
「万が一にもありえないが、その時はもともとサポートをしていた召喚士と他の職から使えないものを使うとしよう」
「大体はわかった…… それでいつから始まるんだ?」
「7日後に戦闘場というところで召喚士は昼から始めるはずだ。 直接で構わないからその時までにそこに待機していれば生徒達が勝手に来るから安心しろ」
「わかった、それじゃあ7日後だな」
「ああ、頼むぞ。 因みに万が一でもここで話したことを外にばらした場合はどうなるかわかってるよな?」
「ああ、大丈夫だ。 それぐらい理解してる」
ゼフはそう言うと立ち上がりレンと一緒に扉の前に着くと深く息を吸う。
「それじゃあ学園長失礼します」
「もしわからないことがあればレン君に聞くといい」
「わかった」
そう言うとゼフ達は出て行く。その後ろ姿は毎年来る奴となんら変わらない。しかし、先程の脅しとも取れる行動をあっさりと受け入れたのだ。
(まったく弱者ならこのような面倒なことをせずとも良かったんだがな。 かなり場慣れはしているということか)
学園長はメッセージの魔法を使いあるところに飛ばす。
「引き続き奴の監視を頼む」
そう言うと学園長は再び椅子に座り軽く息を吐いた。




