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災厄の蟲使い 前編  作者: トワ
虐殺
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終幕

ゼフは待合室に戻る途中にゴンズとすれ違う。部屋に入るとあれだけいた人は誰1人とおらず静かであった。


(次が最後の戦いか…… これで俺も教師だな)


ゼフは誰もいない静かな待合室でじっと待つ。その時間は今までのどの時間よりも苦痛に感じ、ゴンズが暇つぶしに役立っていたのを身にしみる。


(今までゴンズが休むことなく話していたから暇をせずに済んだが、今はいない。 暇だ……)


ゼフが退屈を凌ぐことを考えては実行するということを10分ほど繰り返したところで扉が開かれる。そこに目をやると傷ついたゴンズが立っており、こちらを見つめていた。


「ゼフ…… これでお前と戦えるな」


「そんなボロボロで何を言ってる」


「気遣いはいらねぇぜ」


ゴンズはそのまま隣に座るが、いつものような会話はない。ゼフは試合まで少しは退屈を凌げると思っていたが、暇な時間は終わらなかった。隣のゴンズを見ると真剣な表情で何かを考えている。おそらくさっきまで話していた相手であってもゴンズは何が何でも殺そうとして来るだろう。ゼフは1回殺されたぐらいじゃこの世界の魔法技術では完全に殺すことはできないことは実証済みである。


「俺は勝つぞ、例えそれがさっきまで話していた相手でもな」


ゴンズは真剣な表情でゼフに話しかける。ゼフはそれを聞き少し笑いながら口を開く。


「俺もこの戦いを勝たなければならない理由がある」


それと言ったと同時に扉が開かれて呼ばれる。ゴンズとゼフは同時に立ち上がり待合室から出ると、そのまま2人は言葉を交わすことなくいつもの待機場所へと向かった。


(これが最後の戦いか…… 最後はどうやって殺そう)


ゼフはワクワクしながら殺し方を考える。そんなことを考えていると待機場所に到着する。最後の試合だからだろうか、ここからでも歓声が聞こえる。


(さて、この戦いに勝った後はこの街の現状を調べなければな。 なによりも鉱石がどういったものか非常に気になるな )


そう考えてるうちに扉が開く。ゼフはゆっくりと1歩踏みしめて外に出る。観客達はうるさいほどの歓声が響かせている。そして、前を見るとゴンズがこちらを見据えていた。


「ゼフ、俺はさっきも言った通り大事なもののためにお前を殺す!」


「俺もそのつもりだ。 殺る前に1つ教えてほしい、お前の大切なものはなんだ?」


ゴンズは真剣な表情になる。おそらく最後になるだろうゼフのためにその問いに答えるべく口を開く。


「俺は将来を誓いあった女性がいた。 その女性と結婚して俺はSSランク冒険者になった。 だが、これからって時にあいつらは……」


ゴンズは必死に感情を押さえ込む。その表情は怒りを露わにしている。


「つまり、その女性がお前の守るべきものというわけか」


「ああ、そうだ。 ゼフ、お前はなぜここで戦う?」


「たしかに言ってなかったな。まあ、お前なら別に言っていいだろう。 俺は俺達が安全に暮らせる世界を望んでいる。 だから、そのために世界を征服する。 これは通過点だ」


「支配か…… そうか、どうせならお前に支配されたかったな」


ゴンズはそう言うと巨大な斧を構える。そもそもゼフのことをよく知らないゴンズはこの言葉をいいように捉えており善人だと勘違いしていた。しかし、次の言葉を聞いた瞬間考えが変わる。


「安心しろ、この街を支配した暁にはお前の大切なものをお前の同じ場所に送ってやる」


この言葉の意味することはゴンズが大切にしているものを殺すという意味だった。それをいち早く理解したゴンズは自分が今まで勘違いしていたことに気づき、殺意を露わにする。


「今の言葉は撤回だ。 俺はお前のことを勘違いしていたようだ。 ここでお前に勝って全てを守る」


そう言うとゴンズは飛び出し斧を大きく振りかぶる。しかし、その攻撃はゼフには届かず、腰から伸びてきた操蟲によって弾かれる。ゴンズは1度後退し様子を伺う。


「弱いな…… 少し警戒していたがこの程度か」


ゼフがそう言うと操蟲がゴンズのめがけて伸びていく。ゴンズは避けようとするが避けきれず膝を操蟲の牙が貫く


「ぐわぁ!」


ゴンズの膝に激痛が走ると同時にバランスを崩して倒れてしまう。すぐに起き上がろうとするが、ゼフはその隙を見逃さないように追撃をかける。最初は右腕、次は左腕、そして右足と。その間にゴンズの悲鳴が鳴り響き、血が散乱する。


「どうした? 守りたいものがあるんじゃないのか? 所詮はその程度ということかゴンズ」


ゴンズは痛みに耐えながらも最後の力を振り絞って口を開く。


「クソッタレが…… お前は人間じゃねぇ…… お前のような…… 奴に…… 支配されるようなら…… 死んだ方が……ましだ…… この化け物」


ゴンズの頬に涙がこぼれる。これは大切なものをもう守ることができない自分の弱さ悔いた涙なのか?、後悔の涙なのか?それはわからない。しかし、ゼフはそんなことは御構い無しにつぶやく。


「そうか…… これで終わりだ」


そう言うと操蟲がゴンズの首を勢いよく飛ばす。血が噴水のように飛散した。その瞬間、観客からは今までで1番大きな歓声が響いた。


「やっと終わったか…… 意外と疲れたな」


そう言うとゼフは戻っていく。特にその後は何もなく、観客達は最後の戦いを見終わったことで少しずつ数を減らしていく。ゼフはそのままレンとシルヴィアの元に戻る。今度は迷うことなく戻ることができ、レンは笑顔で語りかけてくる。


「いや〜お疲れ。ゼフやっぱ君強いね」


「俺もギリギリだったさ」


「謙遜しなくていいよ。 さて、とりあえず終わったということでここで解散するのもアリだけど、どうする?」


「そうさせてもらおう、今日は疲れた」


「了解、それじゃあ次は1週間後の9時に学園集合でいいかい?」


「ああ、それで構わない」


「それじゃあまた」


そう言うとレンと別れてゼフ達は宿屋を探しに行くのだった。謎を多く抱えたまま……






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