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災厄の蟲使い 前編  作者: トワ
虐殺
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侵攻

セレロンから歩くこと5日、そこにはグレスペルグという魔族の街が存在した。そこの魔王は聡明であり、魔族から慕われている存在である。しかし、今とあることに頭を抱えていた。


「さっきのメッセージはどういうことだ?」


先程グリンガムから受け取ったメッセージの内容は意味がわからなかった。しかし、冗談でやるような奴ではないということも知っており考えを巡らす。すると、扉がノックされ開かれた。


「失礼します」


白髪の美青年が入ってくる。服装は整っており、その美しい顔に非常に合っているように思えた。


「急に呼び出して悪いなノエル」


「滅相もありません。 私ノエルはアウスゴレア様のものでございます。 全ては魔王様の御心のままに」


「そうか、では本題に入らしてもらう。 実は先程グリンガムから受け取ったメッセージのことなんだが」


アウスゴレアはノエルにメッセージの内容を全て話す。少し驚いているようだったが、落ち着いた口調でそのことについて話し始める。


「なるほど…… 理解しました。 つまり、魔王様の言いたいことはこのメッセージの内容の真偽を確認したいということですか?」


「話が早くて助かる。 そういうことだ」


「それでしたら軍を動かしてみてはどうですか?」


アウスゴレアは黒髭を撫でながら考える。


「だが、気がかりなところがある」


「ゼフというものですか?」


「それが1番だが、それよりも進軍とメッセージで言っていた。 つまり、そのゼフという者は軍を大量に率いてる可能性がある」


「とりあえず防衛の準備をすると言うことでよろしいですか?」


「そういうことだ、流石に3つ以上同時に攻めることはできないだろうからな。攻められなければそれでよし。 攻められたら他の魔王から敵の情報を集め、作戦を練ろう」


ノエルはアウスゴレアが言ったその内容を納得するように頷く。


「それがよろしいかと。しかし、もし他の魔王達から情報を聞き出せないまま敵に敗れてしまった場合はどうするおつもりですか?」


アウスゴレアはノエルを見つめながら微笑む。


「その場合はないだろう。 腐っても魔王だ。 少しは耐えるだろうからな」


「了解しました。 では、魔族達には早くても3日後攻めて来ると伝えておきます」


「ああ、それで頼む」


ノエルは頭を下げて出て行く。部屋に静けさが残り、アウスゴレアは怒りに震える。


(たとえどんな奴だろうと許さない。 たった1人の魔王を倒したぐらいで調子に乗りやがって…… 魔族を劣等種と罵ったことも含めてじっくりとその身に味わわせ、後悔させてやる)


アウスゴレアは怒りを抑えながら仕事の続きを始めた。しかし、彼らは大きな勘違いをしていたことをこの時は知る由もなかった。



✳︎✳︎✳︎



セレロンでは魔族達を蹂躙する準備を始めていた。ゼフはグリンガムの方を見て口を開く。


「おい、魔王」


「なんじゃ?」


「この街はお前が守れ」


「当然じゃ、ワシは魔王じゃからの


「それと3日で帰って来る。 宴の準備をしとけ」


「3日じゃと? お主何を言ってるんじゃ?」


グリンガムはこの人間が何を言ってるかわからなかった。


「お前もメッセージで言っただろ。3日やると」


「で、でも……あれは3日準備期間をやるという意味では……」


グリンガムは意味を少しずつ理解してくる。そして、その恐ろしさがだんだんと声を震えてくる。


「何を言ってるんだ? あれは魔族が降伏するまで3日やると言ってるんだ。 まあ、俺が本気を出せば1時間かからんが、それでは面白くない」


この人間は本気でできると思ってる。そのことがさらにグリンガムをさらに震え上がらせる。


(もしかして、ワシは最初に襲われて幸運だったのじゃないか?)


グリンガムがそう考えていると、ゼフが口を開く。


「それでは行ってくる」


「待つのじゃ!」


グリンガムはゼフを呼び止める。


「なんだ?」


「街の中にいる蟲達はどうするのじゃ?」


「この街に置いていき防衛にあたらせるが?」


「それだとお主がいくら規格外だからといっても召喚数にそろそろ制限が来るんじゃないのか?」


「ああ、そのことか。 それなら問題ない」


「問題ないとはどういうことじゃ?」


「召喚数は決まっている蟲もいるが、今召喚した蟲は全て制限なしに召喚できるほどの弱い蟲だ。 だから、心配はいらん」


「それは本当か!」


グリンガムは声を上げ驚く。何故なら、普通は召喚士は魔物などの召喚数が決まっている。 だが、ゼフはそれがないと言ったからである。そして、セレロンに召喚されている約3000体もの蟲達はグリンガムからすれば強い蟲なはずなのにそれを弱いと言い切ったからでもある。


「ああ、本当だ。 それに連れて行かないのはある実験をしたいからな」


(実験じゃと? 何んをする気じゃ)


グリンガムはその実験の内容を聞いてみようと、恐る恐る口を開く。


「実験とはなんじゃ?」


「簡単な実験だ。 新しく召喚できるようになった蟲を召喚するというものだ」


「そうじゃったか」


そこまで恐ろしいものではないことに安堵するが、恐らくその蟲も自分よりも強いであろうことはわかっていた。


「見せてやろうか?」


「え? 良いのか?」


グリンガムはつい好奇心からか答えてしまう。それを聞いたゼフは笑いながら、口を開く。


「今回は特別だ。 来いデス・シザー」


そう言うと巨大な魔法陣が地面に現れ、25秒後割れた。そこに現れたのはサソリを15m程に巨大化し毒針の部分やハサミの部分、肩などに紫色のクリスタルがついてる恐ろしい外見の蟲だった。


「これは、デス・シザーという蟲だ」


ゼフは新しい蟲を召喚できたことが嬉しいのか無邪気な笑顔を浮かべている。


「強そうじゃの……」


「ああ、強い。 そして、便利だ。 こいつはクリスタルからあらゆる毒成分を含んだ致死性のガスを散布できる。これを使えば都市を傷つけずに占領できるからな」


「そうなのか…… 恐ろしい魔物じゃ」


「所詮はその程度だがな」


(やはり味方になって良かったのじゃ)


ゼフがもう自分達を殺さないだろうと勘違いしているグリンガムは息を漏らして安堵する。


「それでは今度こそ行ってくる。 さっき言ったことをしっかりとこなせよ」


「わかったのじゃ」


そう言うとゼフはデス・シザーの大きなハサミで持ち上げられて頭に乗せられる。そして、ゆっくりと進み出した。





















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