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災厄の蟲使い 前編  作者: トワ
虐殺
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魔王

セレロンの魔王であるグリンガムはあまりの外の世界騒がしさで目を覚ます。


「今日はなんだか騒がしいの。 何か祭り事でもあったのかの」


グリムガンは寝ぼけながら窓に近づいて行く。だが、聞こえてくる音が妙であることに気づく。


(なんじゃこれは…… 何かが壊れる音、そして悲鳴じゃ!)


急いで窓の方に近づき、カーテンを開けるとそこにはミミズの化け物が暴れまわって街を破壊していた。


「なんじゃ⁉︎ これは⁉︎」


グリンガムはまさか起きたら街がこんなことになっているとは思わなかった。


(あの化け物め…… 覚悟するのじゃ……)


グリンガムはすぐに着替えるとそのまま飛行魔法を使いミミズの魔物に近づく。よく見ると、その魔物を彼は知っていた。


「デスワームか…… まさかこんな化け物が暴れているとはの。 たしか、こやつは火の魔法が苦手だったはずじゃ」


グリンガムは顎鬚を撫でながら使う魔法を考えると、息を大きく吸い叫ぶ。


「喰らうのじゃ化け物! ――フレアトルネ-ド――」


すると、大きな炎の竜巻が現れデスワームに襲う。グリンガムもこれは災害級のデスワームも只ではすまないと思ったが、1つの疑問が浮かぶ。この街には魔王戦が近いこともありデスワームを倒せる者は知っている限りでも10人はいる。しかし、そのような者達が戦っている様子はない。グリンガムは最悪の事態を思い浮かべる。


(できればそうであって欲しくはないが、念には念をじゃな )


そう考えているうちにフレアトルネードの効果時間が終わる。グリンガムはそちらに目を向けると全く無傷のデスワームがこちらを見つめていた。


(なんじゃと⁉︎ あの攻撃で無傷とはありえんぞ!)


心の中で今まで出会ってきたデスワームの中でかなり規格外なのを心に刻み、魔法を再び放とうとする。しかし、デスワームの足元に人らしき者と2mはあろうゴキブリのような化け物が立っているのに気づく。


(この状況でなぜあの場所に? まさか、あやつらがこのデスワームの持ち主か!)


デスワームをちらっと見ると、こちらを見ているだけで何もしてこない。グリンガムは自分を誘っていると分かっているが、行かなければならない。それが魔王というものだ。そいつらを警戒しながらゆっくりと近づいていく。


「この事態はお前さんらの仕業か!」


グリンガムは警戒はしているものの、怒りは収まらず声を張り上げる。


「そうだが、お前は魔王か?」


「そうじゃと言ったら?」


「安心しろ魔王が来たなら問題ない。 この街を破壊するのはやめよう」


「なるほど…… こいつはお前の物というわけか」


グリンガムはこのデスワームがこの人間の所有物であることを厄介に思う。おそらくその隣にいる化け物も強いのだろう。そんなことを考えていると、男は口を開く。


「さて、単刀直入に言わせてもらおう。 降伏し俺の下につけ」


「なんじゃと⁉︎」


(何を考えているこの男は。 だが、ワシは仮にも魔族の王だ。簡単に下につくわけにゃいかない)


グリンガムは少し考え、口を開く。


「人間風情が調子に乗るなよ。 ワシは魔王じゃ。 従わしたいのなら力づくでしてみるがよい」


「残念だ、それがお前の選択か」


ゼフは言葉を発さずに腰の操蟲を魔王に向けて攻撃するように命令する。すると、操蟲達は一斉に魔王に向けて鋭い牙を見せ付けながら突っ込んでいく


「ふん!」


だが、その攻撃は遅すぎたせいか、魔王はいとも簡単に避ける。


「――フレイムスピア――」


魔王が反撃の魔法を唱えるが、隣のアイアンGに吸収されるように当たる。もちろん傷はおろか、動じた様子もない。それを確認したグリンガムは更に高位の魔法を唱える。


「――フレイムタイフ-ン――」


炎の風がゼフ達を襲う形で包み込む。その攻撃は常人なら耐えられないだろう。しかし、それを嘲笑うかのように全てアイアンGに吸収され消える。


「これも無傷か…… 化け物じゃな…… おそらく効いていないわけじゃないだろう。 何回もやれば活路は開ける」


グリンガムはかつてない絶望的な状況を不謹慎と思いながらも楽しんでいた。何故なら、いざとなれば自分1人だけなら逃げれる手段を残しているからだ。そして、再び魔法の詠唱を始める。


(やはり魔王もこの程度か……)


ゼフは失望する。初めからわかっていたことではあるが、何回目がわからないこの世界のレベルの低さを実感する。


「残念だがお前の負けだ」


そう言うとゼフはゆっくりと口を開く。


「――タイムストップ――」


グリンガムは一瞬何が起こったのかわからなかった。体を動かそうとしても動かせない。しばらくしてゼフが笑いながら言葉を発する。


「魔王よ、この魔法は最下級の時間操作の魔法のタイムストップだ。対象を選ぶことは出来ず、意識は止まっていてもあるはずだ。 これでお前は意識しながら自分が死ぬとこを確認できるな」


(この男何をしよった)


グリンガムは困惑すると同時に男の言葉を理解する。だが、動こうとするが、動けない。


「この世界ではこの程度の魔法も通じるみたいだな。ちなみに言っておくがこの状態で俺が攻撃した場合ダメージは入る」


ゼフはそう言うと、笑いながらゆっくりと魔王に歩みを寄せていく。


(やばい…… なんとかしなければこのままだとまずい……)


視認する先にはゼフがこちらを見ており、近づいてきている。グリンガムは時間操作などという規格外の魔法よりも、今はこの状況を打破することだけを考えるので手一杯だった。


(どうすれば出れる…… ワシの知識を振り絞って考えるんじゃ。 きっと何か…… 何かあるはずじゃ)


しかし、気づけばゼフはグリンガムのすぐそこにいた。


(なんとか、なんとか! なんとか…)


グリンガムは必死の抵抗をするも、万策尽きたのかもう無理だと諦める。


「こうなればどんな屈強な戦士や勇者、魔王ですら抜け出すことはできん」


ゼフは操蟲に命令を下すと、ゆっくりと出てきこちらを見つめるように攻撃態勢に入った


(ワシは死ぬのか…… 魔王のワシが…… 嫌じゃ! まだ死にとうない!)


そんな思いを虚しく届かず、操蟲は魔王に向かって先程とは比較にならない速さで突撃してくる。


(嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃー)


最後に自分がどれだけ恵まれた環境に居たかを実感する。生に執着する言葉を心の中で叫んだ後、意識が途切れた。


「時間操作の魔法はやはりいらないか。 後で蟲達の能力の足しにしておくか」


ゼフは魔法を解くと、グリンガムは無傷の状態でその場に倒れる。操蟲をしまうと呟く。


「さて、何はともあれ第1段階はほぼほぼ完了した。とりあえずこの魔王をパラサイトで洗脳させれば次のステップに進むことができる」


ゼフはそんな言葉を発した後、近くの家までアイアンGがグリンガムを運んでいった。









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