始まり
ここは魔族が住む領域のにある街、名前をセレロンという。魔族達は見た目は人間のように見た目だが、唯一同じなのは頭に2本の角が付いていることであろう。そんな種族だが、噂通り人間を下に見る傾向も強い。
「今日も暇だなダレス」
「そうだな…… ニード」
ダレスとニードという魔族は街の入り口で警備をしながら話している。彼等には立派に角や翼、そして尻尾が生えている。これらは生えており、立派であればあるほど強いとされている。事実彼等は強く、角しか生えていない魔族とは比較にならない。そんな中ニードが口を開く。
「やっぱ、イースト側の街に住むべきだったかな。あっちは頻繁に戦争してるみたいだしな」
魔族達は聖都がある方をウエスト、その反対をイーストと表現することを取り決めていた。
「本当にお前は戦いたいといつも言ってるな。 それなら移住するか、セレロン闘技場に通えばいいのに」
「いや、俺は移動する気は無い。 あっちを支配している魔王はちぃと俺の相性に合わない。 それに俺は人間に絶望を与えながら殺したいだけだからな」
「本当にお前は根っからの魔族だな。 俺も少しはそう思うが、ウエスト側にいる12人の勇者と怪物だけには戦いを挑みたくないな」
「そりゃそうだろう、あんな狭いとこなのに魔王と互角かそれ以上の実力とか、どんな化け物だよ」
「でも、イースト側を落としたら攻めるんだろうな……」
「分からん、だが多分攻めるだろうな」
「人間が滅んで安全に暮らしたいものだな……」
「お前はいっつもそんなこと言ってるな。 まあ、それは10年後かもしれないし、今日かもしれないから気長に待とうや」
「そういやダレス」
「なんだニード?」
「今年行われるらしいぞ」
「魔王を決める戦い魔王戦か」
「そうだ、一緒に観に行くか?」
「まだ予定が合うかわからんから、また言うわ」
「そうか、わかった」
(魔王戦か、前は10年前だったけ? あの時はかなりの猛者が集まったと聞いたが現魔王のグリムガン様は圧倒的な力で魔王の座についたな。 さて、今年はどうなるか)
魔王とは街の中で1番強い者のことを指し、魔王戦は魔王を決める大会である。約10年程で定期的に行われているが、今のところ現魔王よりも強い者が現れていない。
「ところでニード、今年は誰を応援するんだ?」
「そうだな…… やっぱりグリンガム様だな。 前の戦いを見て惚れてしまった」
ニードは満面の笑みをダレスに向ける。
「そうか…… 俺は誰にするか……」
ダレスがそう考えていると、魔族だからこそギリギリ視認可能な距離に2人組がゆっくりと歩いていた。ニードもそれに気づき話し出す。
「ダレス」
「ああ、お客さんだ」
セレロンからは出て行く魔族はいても、入ってくる魔族はいないに等しい。そして、入って来るとするなら大量の物資を運ぶため荷馬車などを持って来る。それなのに、それすらない。理由としてはいくつかあるが、この場合は9割型敵である。2人組がこちらに近づいてくるにつれ、ニードはあることに気づく。
「この匂いは人間だ! ダレス!」
「人間だと⁉︎ 一体何のようだ?」
ダレスはニードを見ると、満面の笑顔を浮かべてた。
「ちょうど退屈していたところだったんだ。 少し遊んでやろうか」
「ニード油断するな、あの人数で来るということはかなりの強者かもしれない。 まずは慎重に侮られない態度で行くぞ」
「ああ、わかっている」
しばらくすると、2人組の人間はダレス達の目の前に着く。
2人とも仮面にマントという珍しい格好をしている。すると、片方の仮面の人間が話し始めた。
「魔王に会いたいのだが、通してもらえないか?」
「人間お前は魔王に会うことも、街に入ることもできない。 今すぐ立ち去れ、そうすれば命だけは助けてやる。」
「魔王にはやはり会えないか…… どうすれば会うことができる?」
「土下座しろ、そうすれば街の中まで案内してやるかもな?」
ニードはニヤニヤと笑いながら答えるが、ダレスはそれを抑え前に出る。
「連れが失礼なことを言ったことは詫びよう。 だが、それはそれだ。 自分の名前も職業も名乗らない怪しい者を通すわけには行かない」
「わかった、名乗ろう。 名前はゼフ職業は召喚士だ」
「召喚士だと? あの最弱の? それが本当なら傑作だな」
「名乗ったのは理解した。 それでここには何をしにきた?」
ダレスがそう質問すると、ゼフは声を漏らしながら笑う。
「そうか、何をしにきたか。 面白い質問だな、クククク」
(この男はなぜこんなにも笑っている?)
召喚士など自分達の相手になる筈がない。しかし、ダレスはそのゼフという召喚士を何か不気味さを感じる。
「最初の犠牲者になるお前達に教えてやる。 魔族を滅ぼしにきた。」
「ハハハハ。 こいつ頭おかしくなっぞ。なあ、ダレ……ス」
ダレスの真剣な表情を見て、ニードの言葉が詰まる。もしかすると彼は何かを感じてるのだろうか。そして、ダリスは恐る恐る言葉を放った。
「もし、それができるとしてどうするつもりだ?」
「こういうつもりだが?」
ゼフがそう言うと、近くの地面が盛り上がる。それはどんどん高くなっていき、それに伴い土が崩れ、砂埃が立つ。しばらくして、砂埃がおさまるとそこにはデスワームが口を開けながらダレス達を睨んでいた。
「デスワームだと⁉︎」
「おい、ダレス俺は夢でも見てるのか?」
ニードとダレスは体が思ったように動けない。遊んでやるつもりだった。確かに嫌な予感はしていた。しかし、まさか召喚士がデスワームを召喚などできるとは思わなかった。
「さっきの威勢はどうした? 来ないならこちらから行かせてもらうぞ?」
ゼフがそう言うとデスワームがニードとダレスに大きな口を広げてながら向かってくる。彼等はそのまま何もできずに飲みこまれていってしまった。それが、ニードとダレスが見た最後の光景だった。




