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災厄の蟲使い 前編  作者: トワ
仲間
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獲物

Aランクになってから早くも1週間が経とうとしていた。ゼフは今は出かける準備をしている。


「あの時は急にAランクになって喜んでいたが、よく考えると聖都でかなり動きづらくなったな」


「そうね」


シルヴィアがそんなゼフの呟きに答える。アヴェインの時はうまく元の人格を保てていたが、今回はまるで機械のようにただ返事をするようになってしまった。2日程前にシルヴィアの仮面の下を見せて貰ったが、かなり上位に入るほどの美しい顔だったのに未だに驚きを隠せない。


(予報のことはあらかた引き出させてもらって、シルヴィアにもう用はないが、今後使える場面があるかもしれない。 念のためこのままにしておくか)


パラサイトは元の世界ではあまり使わない蟲だった。だから、ほとんどわからない。もしかすると、この蟲の能力を解明していくことが今後重要なのかもしれない。


(パラサイトのことはゆっくり調べていこう。 それよりも、この世界だと安心して特訓できるからか魔力が上がっているな。 それに召喚士と蟲達の能力も向上し、新しい蟲が召喚できるようになってる。 今は無理だが、どこかでその姿を拝見してみたいものだ)


そんなことを考えていると、あっという間に着替えが終わる。


「とりあえず冒険者組合行くぞ」


「わかったわ」


ゼフはシルヴィアを連れて宿屋を出る。 道中はやはりパラサイトが寄生しているとしても、人間をつき従えているからか、違和感を感じる。


(この感じには早く慣れないとな)


ゼフの歩く速さが増す。そして、組合に着くと真っ先に掲示板に向かう。時間が時間だからか人が全くいない。


「さて、今日は何にするか」


(次のランクになるまで適正クエストを最低100個受けなければならないみたいだが、少し面倒だな。 何かドカンと上げれるクエストはないだろうか)


「シルヴィアどのクエストがいい?」


シルヴィアはその問いに無視し、答えない。


(やはりわからないな。 そもそも今こいつは蟲と人間どっちに近いんだ?)


蟲の本来の能力は把握している。だが、ここまでわからないとなると裏能力的なものが存在し、今のレベルでは自由に使えないのかもしれない。おそらく他の蟲にも存在するだろう。そう考えるととある依頼書が目につく。


「なんだこれは?」


手にとって見てみると、他の依頼書とは明らかに色あせていた。ゼフはそれが気になり、読んでいく。


「魔族討伐? 最低推奨ランクSSだと⁉︎」


驚きが隠せないゼフだったが、同時にこれほど古いの依頼書であるのを納得する。


「魔族か、元の世界には俺が知ってる限りではいなかったな」


(滅んだ可能性も捨てきれないがな)


ゼフは知らないが、もちろん元の世界にも魔族がいた。しかし、それはゼフが生まれるずっと昔の話であった。そして、たった1人の男に当時最強の種族だった魔族が滅ぼされたことをこの先も知ることはない。


「ギルドマスターに相談してみるか」


そう言うとゼフは古い依頼書を持って受付嬢の元へ向かった。



✳︎✳︎✳︎



ゼフは再び暗い通路を通る。そして、部屋の扉をノックし、開ける。


「失礼します」


「久しぶりじゃのう、ゼフくん」


ゼフ達はアイドリッヒの許可を得て椅子に座る。


「今日は大事な話があって来た」


「ふむふむ、大事な話かのう。 一体なんじゃ?」


そう言われると、ゼフは一枚の依頼書を出し、アイドリッヒに見せる。


「魔族討伐か、残念じゃがこれはSSランクのみじゃよ」


「それを今日はお願いしに来た」


「そういうことかのう。 もし、やるとするなら勇者達の誰かをつけるなら構わないが……」


アイドリッヒは困った顔をしながら、ゼフを見る。


「勇者達はいらない、シルヴィアと一緒に行こうと思う」


「まず、そもそもなぜこれを受けようと思ったのじゃ?」


「はやくランクを上げるためだ」


「なぜランクを上げる?」


「自分が思う最強の冒険者の理想図が最高ランクの者だからだ」


「もしも、これを許可した場合何体殺すのじゃ?」


その問いにゼフは僅かだが声を漏らして笑う。


「全部だ、1匹残らず根絶やしにして絶滅させて帰ってきてやる」


狂人の戯言だった。だが、アイドリッヒはそれを聞いても尚、落ち着いて話す。


「お主が強いのは知っておる。 だが、死んでも知らんぞ?」


「承知の上だ」


「それなら好きにするんじゃ。 わしが特別に許可しよう。 ただ1つだけ約束じゃ、危険を感じたらすぐに戻って来るのじゃぞ」


「ああ、わかっている」


「それで、許可する前にお主は魔族をどこまで知っておるのじゃ?」


「すまないが、全く知らん」


「どうしてそれで行こうと思ったのじゃ…… 魔族とは過去に何度も人間と戦争をし、今現在も繰り広げている種族だ」


「現在だと?」


「そうじゃ聖都、王都、帝都の3つの街で囲まれた部分そして聖都の森を抜けた先が魔族の領域じゃ。 そして、これを知る者は少ないのじゃが、その先にまた人間の領域があるのじゃ。 現在はここと戦争しておる。 だいたいここまでで大陸の8%じゃからずいぶん広い大陸じゃな」


「今の含めて8%か。 随分と広い大陸だな」


「そうじゃ、ちなみにわしらの方が1%、魔族が5%、もう1つの人間の領域は2%と言われておる」


「それ程人間と魔族には差があるのか」


「怖気付いたか?」


「まさか、それとなぜ魔族はこちら側に攻めてこないのだ?」


「主に聖都の勇者、そして帝都の怪物だ」


「怪物?」


「そう呼ばれとる冒険者じゃよ」


「それは1度会ってみたいものだな」


「さて、話を戻そうか。魔族は基本人型だが肌の色や尻尾や角、羽なんかも生えているものが多いの」


「それ以外は人とは変わらないのか?」


「そうじゃ、性格は人間は見下す者が多い。 最初に襲うことはない者も結構いるが返答を間違えれば殺されるだろう」


「なるほど、それ以外は何かあるのか?」


「一応ワシが知ってることは以上じゃ。別のことなら答えてやっても構わんぞ」


「いや、大丈夫だ。 助かった」


「礼には及ばん」


「それじゃあ準備があるからとりあえず宿に戻る。無理を言ってすまなかったな」


「死ぬのじゃないぞ」


アイドリッヒが再び注意をするが、ゼフはそのまま出て行った。


(さて、果たしてどうなるかの……)


アイドリッヒは静かにそう思うのであった。外に出たゼフはシルヴィアに向かって話す。


「さて、シルヴィア今から準備するぞ。雑魚狩りのな」


「わかった」


ゼフはそう言うと宿に向かった。この上ない不敵な笑みを仮面の下に浮かべてながら……






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