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災厄の蟲使い 前編  作者: トワ
仲間
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報告

ゼフとシルヴィアは行きと同じ時間かけ聖都に戻ってきた。久々の街に宿屋のベッドが恋しくなるが、真っ先に冒険者組合に報告しに向かう。


「冒険者組合に行くぞシルヴィア」


「はい、わかりました」


「向こうが何か言ってきたら適当に答えてごまかせ」


「はい、わかりました」


(さてと、このままじゃ不自然だな)


そう思うとゼフはラージュという幻覚魔法を使う。すると、2人は服が汚れ、所々破けている格好になる。もちろん見た目だけなので、触られれば1発アウトだ。冒険者組合に着くと、勢いよく扉を開けた。そして、ゼフ達は迷わず受付嬢のところへ向かう。


「すまない、取り急ぎギルドマスターに会いたいのだが大丈夫か?」


「ゼフさん大丈夫でございます。 他の方々はどうされました?」


「それについては今ここでは言うことはできない。 全てギルドマスターに話すから、後から詳しいことは聞いてくれ」


「わかりました。それでは、マスターに伝えて参ります。」


受付嬢がそう言い奥に姿を消すと、ゼフ達は椅子に座って待つ。隣に座っているシルヴィアだが、街に帰る時予報士の知識をパラサイトを介して教えてもらった。その時手に入れた知識は予報はランダムであり、その時最低回避条件も提示されるというものだった。


(問題はシルヴィアが持っている情報が間違っていた場合だな。 まぁそれはないと思うが……)


そう考えると、ゆっくりと受付嬢が近づいてきた。


「ゼフ様、シルヴィア様マスターが呼んでおります」


「わかった、すぐ行こう」


ゼフがそう言うと、ギルドマスターの部屋に向かう。道中は少し暗い気がしたが、組合の奥なので仕方ないだろう。それに、ゼフはギルドマスターに会ったことがなく、どんな人物かを1度見てみたかった。扉の前に着くとそのままノックする。


「入ります」


扉を開け、入るとそこには70後半から80前半の白い顎髭が特徴の爺さんと鎧姿の青年がこちらを向かえるようにして待っていた。


「よく来てくれた、座ってくれゼフくん、シルヴィアくん」


「ではお言葉に甘えて」


ゼフは今までこの街で見たことのない高級な椅子に驚きながら、ゆっくりと座る。ギルドマスターはこちらを真剣な表情で見つめ、鎧の青年は横に立ったままだった。


「さて、ゼフくん。 ワシは君が何が言いたいか見当がついてる。 だが、まずは自己紹介をしようではないか。 ワシはこの聖都のギルドマスターのアイドリッヒだ。 そして隣にいるのが勇者のひとりのデープだ」


「よろしく」


(勇者か…… 何故ここにいるんだ? まあ、いい。 とりあえずは疑いをかけられても、確信まで持たせないことだな)


「よろしく俺はゼフという。 そして隣にいるのがシルヴィアだ」


アイドリッヒがそれを聞き頷く。そして、数秒後口を開いた。


「では、ゼフくん。 勇者達との王都の遠征で何があったか話してくれるかのう?」


「わかりました。では、まず本来ここにいるはずだった勇者達とアヴェインのことです」


「ふむふむ」


「単刀直入に言います。 彼らは死にました」


「なっ⁉︎」


その驚きは隣の勇者からのものだった。 顔が変わっているのではないかと思うほどの驚き方で少し面白かった。ギルドマスターは平静を保っており、妙に落ち着いている。


「どういうことだゼフ殿!」


勇者は興奮しながら、ゼフに問いかける。


「俺達は順調に森を進んでいた。だが、魔物が1体もでなかっだことを不思議に思い進むか撤退するかを話し合ったんだ」


「ふむ、確かにそれは妙じゃの。 それでどうなったんじゃ?」


「そこから、みんなで決めて進むことになった。 そして、森を出たとき見えたのは崩壊した王都だった」


「なるほど、つまり王都は都市として機能してないと?」


「ああ、そういうことだ。 その後、戦力外な俺とシルヴィアは森の入り口で待つことになった。勇者達は王都に生き残りがいるかもと調査に行ったんだ」


「そこで何かあったということか!」


勇者は再び興奮を抑えきれずに叫ぶ。


「そういうことだ。 そこにはありえないほど巨大なドラゴンが現れた。 勇者達やアヴェインはそのドラゴンに蟻を踏みにじるかのように圧倒的な力を見せられ敗北し、殺された。俺とシルヴィアはこのことを報告する為急いで聖都に戻ってきた。 まあ、途中で迷ってしまって1日かかったがな」


「なるほど大体のことはわかった。ご苦労じゃった、今日は宿に戻り休むといい」


「正直かなり疲れていたから、感謝する」


「それと報酬は受付嬢に受け取っといてくれ。ゼフくんとシルヴィアくんのランクも一気に上げてAにしとくわい」


アイドリッヒは不気味な笑顔を向ける。ゼフはランクが急に上がったことに浮かれていたからかそれに気づかなかった。


「感謝する、何かあったら宿の方にまで来てくれ」


そう言うとゼフとシルヴィアは足早に出て行った。しばらく沈黙の時間が流れ、アイドリッヒが口を開く。


「お主の目から見てどうじゃ? デープよ」


「自分はかなり怪しいと思います」


「そうか、ワシも何か隠してる気がしてならん」


「言ってることは合ってると思います。 ただ……」


「言っていないことがあるか?」


「はい」


「たしかにそうかもしれんな。だがワシらはまだ手を出すことはできん。 もう少し様子を見よう」


「わかりました、それとこれはお願いなんですが、もし彼が何か大きな事件を起こした時僕に任せてもらえませんか?」


「ああ、いいじゃろう。だが、奴もAランクとなった。もし奴が勇者を殺した犯人なら大胆な行動は慎むじゃろうな」


「そうですね、できればゼフでないことを祈りたいです。 それに、他の勇者にはこんなことが起こらないように注意しときます」


「頼んだぞ、それよりもゼフが言っていたドラゴンについて調べなければならないのう」


「それについてはお任せください」


「では、頼んだ」


その日、2人はそこで会話を終え、その後はそれぞれの職務を全うした。







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