思いがけない殺戮
「とにかく解析の魔法を使ってみるか。 ――ライズ――」
魔法を使うと、対象にした人物の情報が頭の中に入ってる。
「なんだ…… 絶対に隠蔽すべき解析の魔法が通る。 しかも気づいた様子もない」
ゼフは驚くが、それと同時に嬉しかった。
「ある程度は予測していたが、あのアイテムに込められた魔法は俺が知らない未知の魔法で、そしてこの世界は全く別世界の可能性があるな。後は、俺の戦闘力はどれだけ通じるかだな」
そうは言ったものの基本すらできていない奴らにゼフは負けるとは思わなかった。
(とりあえず命令して力を試すか。 行けデスワーム)
すると、デスワームが命令通りに行動を開始し始めた。
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盗賊たちは馬車を約17人という人数で囲み一番偉いと思われる盗賊が叫び出す。
「護衛は全員殺した後はあんたらだけだ。 おとなしくしていればいたいめはみないかもしれないぜぇ〜」
その言葉に合わせて周りの盗賊たちがニヤニヤと笑う。そんなことをしていると、1人の美しい女性が出てき、言葉を発する。
「この馬車に乗っている他のものには手は出さないでほしい。 連れていくなら私だけで頼む」
そう言うと女性は頭を下げる。
「お嬢さんなにか勘違いしてるみたいだが、俺たちはこの馬車に乗っているものたちが王族であると知っているんだぜ。 逃がすと思うか?」
すると、女性は全てを悟ったのか顔が段々と青くなっていく。
「さて、そろそろ終わらすか。 野郎ども捕らえろ」
盗賊の1人がそう言った瞬間、地面が揺れだした。その揺れは人が立つことを許さないほどに大きなものである。
「なんだ⁉︎ この揺れは」
1人の盗賊が叫ぶ。そして、地面が盛り上がりそこからミミズのような化け物が鋭い牙を見せつけて現れたのだ。その大きさは地面から出ているとこだけでも5mほどあり、体長は20mを超えているだろうと思われる。
「なんだ⁉︎ この化け物は?」
警戒しながら周りの仲間に盗賊の頭は尋ねると、ゆっくり口を開く。
「まさか……」
「嘘だろ……」
「なんでこんなところにいるんだ……」
盗賊たちの返答はなく絶望したような顔で呟いていた。
「おう、お前らあれはなんだ! 答えろ!」
頭が激しく叫ぶと一人の盗賊が答え始める。
「あれはおそらくですが…… 災害級の魔物のデスワームです、頭」
盗賊の子分は震えながらも答える。頭はその答えに少しばかり恐怖を感じ始める。
「災害級だと? それはまずいな、よしお前らここはしょうがねぇ王族を囮にして逃げ……」
だがその叫びは最後まで続かなかった。なぜならデスワームが計3体、盗賊と王族を囲むようにして睨んでいたのだ。
「嘘だろ…… 3体だと…… ありえない……」
頭は絶句する。災害級でも1体なら逃げることはできる。だが、3体となれば話が変わる。盗賊たちはかろうじて立っているものがいるものの殆どが膝をついて神に祈ってしまっている。
デスワームに発声器官は存在しない。だから、威嚇することもできないが、盗賊たちはこちらに殺意を向けているのを肌で感じ取っていた。盗賊たちは次々とデスワームに捕食されていく。王族たちももう無理だと悟ってしまい、その場から動かない。
「やめてくれ…… 頼む助けてください……」
「ぎぃやああああああ!!!!」
叫ぶものやその場で願うものなど様々な者達がいるが、デスワームは躊躇なくその命を刈り取っていく。そして、5分もしないうちにその場にいた盗賊たちは姿を消した。
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ゼフの手持ちの中でデスワームは弱い部類だ。だが、盾としてなら非常に使い勝手がいい。なぜなら、デスワームの能力で即死級の物理・魔法攻撃を1度耐えるというものがあるからだ。だから、念のためゼフは盗賊たちがどんな攻撃手段を持っているのか確かめるために放ったのだが……
「なんだこれは…… 弱すぎる……」
ゼフはまさかデスワームがまったくダメージを受けず盗賊たちを殺してしまうとは思わなかった。さらに魔法で聴力を強化しているゼフはある言葉に引っかかった。
「デスワームが災害級だと? そんなに強いはずないだろ」
ゼフは頭を巡らせる。この世界の戦闘能力は大したことないのか、それとも単にこいつらが弱かったのか。そうこう考えているうちにデスワームは残った王族たちを1人を除き殺しつくしていた。
「さて、考えるのは後だ。 今は情報が欲しい」
そう言うとゼフはデスワームの近くでうずくまっている王族の女性に向かって歩みを進め出した。