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災厄の蟲使い 前編  作者: トワ
仲間
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疑惑

ガランが死んだ日からちょうど1ヶ月が経とうとしていた。そんなことをアヴェインはシルヴィアに話す。


「なぁシルヴィアもう1ヶ月経つぜ」


「そうね、多分回避できたんじゃないかしら」


アヴェインとシルヴィアは足りないアイテムを買い足す為に一緒に買い物に出かけていた。アヴェインはあることを提案してみる。


「そろそろゼフも一緒の宿に来るように言ってみるか?」


「それはダメよ! 予報が回避できたぐらいでガランを殺した犯人じゃないとは言えないわ!」


「そうか…… でも、さすがにここまで何もしないんだからゼフが犯人じゃないと思うけどな」


「そうかもしれないわ、でもね最善は尽くすべきだと思う。もう仲間を失わないためにもね」


「ああ、わかったよ」


アヴェインとシルヴィアはそのまま冒険者組合に向かう。

冒険者組合に着くとそこにはエリックともう1人、この街の人なら誰でも知っている人物が立っていた。


「初めまして、あなたが勇者ですか?」


「そうだよ、勇者のキールだよろしく」


「こちらこそよろしくお願いします」


アヴェインとキールはお互い笑顔を見せ合いながら、熱い握手を交わす。


「立ち話もなんだ。座って話そうか」


「はい」


アヴェイン達は勇者に連れられ組合の奥の部屋に入る。そこには、豪華な家具が置かれており、アヴェイン達は並んでいる椅子に腰をかけた。


「さて僕がきた理由なんだけど、君達はわかるよね?」


「「「はい」」」


「本来なら僕はここに来ないつもりだった。 他にもたくさん依頼があるからね。 でも、その依頼を投げ出して来た理由はわかるかい?」


「シルヴィアの予報のことじゃないんですか?」


勇者は首を横に振る。


「それもあるが今回来たのは僕が討伐したデスワームについてだ」


「デスワーム⁉︎ あの災害級のですか?」


「ああ、そうだよ。そのデスワームだよ」


キールは一呼吸置いてから再び話し始める。


「実はあのデスワームは召喚士から召喚されたものと調べた結果わかった」


「「「え⁉︎」」」


3人はそれを聞き固まる。何故なら、災害級の魔物を召喚士が召喚できるなんて普通ならありえないからだ。


「わかった経緯としては、僕が持つ魔物の発生場所がわかる能力があるんだけどそれを使ったら召喚士から召喚されたと返ってきた」


「そして、俺たちの依頼が来たってことですか?」


アヴェインがそう言うと、キールは首を縦に振る。


「そういうことだ。世界的に見ても召喚士は少ないし、蟲の魔物を召喚するのは俺と同じ勇者のエルエスだけだ。だが、エルエスはデスワーム級の蟲を召喚することはできるが、デスワームを召喚することはできない」


アヴェイン達は息を飲む。ここまで来れば誰でもわかるだろう、今1番怪しいのは誰なのか。


「つまり、君達の仲間の蟲使いのゼフが怪しいということだ」


「それで、ここに来たのは俺達を保護するためですか?」


「いや、少し違う。 君達にはお願いに来た。 今度全勇者で王都の現状を調査するつもりだ。その時ゼフを連れてきてくれないか?」


「それはつまり俺達を連れて行くということですか?」


「ああ、そうなる」


「ちょっと待って!」


シルヴィアが横から会話に入ってきた。


「王都の調査って危険じゃないの? 噂では化け物が出たって言うじゃない! それに、もしゼフがデスワームを召喚する程の実力者なら勇者1人じゃ足りないわ」


勇者は少し考え、話をまとめた後口を開く。


「これは言うべきじゃないかもしれないけど、僕が倒したデスワームは王都に向かう途中で発見し、討伐したんだ。おそらく化け物の正体はそいつだ。流石にそれ以上は進むのは危険だと思い、その時は撤退したんだ。 それに危険と言ってるが、大丈夫だ。 勇者は他の11人にも声をかけるつもりだ」


「本当ですか⁉︎」


「ああ、ただ1つ覚えておいて欲しいのは、今聖都で噂になっている王都が滅びたというのは信憑性は高い。 それだけは覚悟してほしい」


それを聞きアヴェイン達は実際困惑する。つまり、王都は滅んでいる可能性があるということを。


「俺達にはわからない」


そんな中、アヴェインが話し始める。


「だが、今の俺達にはあんたを頼ることしかできない。 もし王都に危険が迫ってもあんたらがいるんだろう」


「そうだ、俺達勇者がいる限り君達に危険はない。改めて聞くが、一緒に行ってくれるかい?」


「ああ、勿論だ」


アヴェインが後ろを見るとシルヴィアは頷く。だが、違和感を覚えた。エリックの反応がないのである。嫌な予感がして声をかける。


「おい!エリックなにか反応しろよ!」


そう言いエリックの肩を軽く触るとエリックは椅子から転げ落ちる。


「お…… おい嘘だろ……」


エリックはすでに亡くなっており、再びアヴェインとシルヴィアが絶望にくれる。それからはギルドの職員を呼び、事の経緯を話し、エリックは勇者の計らいで蘇生ができるかもしれないということで大神殿に運ばれた。


「残念としか言いようがない」


「エ…… エリック」


アヴェイン達の悲痛な叫びが聞こえてくる。だが勇者はそんな中、不可思議に思う。


(どうやって彼を殺したんだ? 部屋に入るまでは絶対に生きていた。 それに僕が分からなかった。もしかして、僕達は何か踏み込んではいけない領域に踏み込んでるのか?)


そう考えていると横からシルヴィアに声をかけられた。


「あの…… 私達は大神殿に行けないのですか?」


「すまない、あそこは蘇生魔法という大魔術が1日かけて行われる。 だから、関係者以外は立ち入り禁止なんだ。 本当にすまない」


「それでいつになるんだ?」


アヴェインは問いかける。


「2日後ここに迎えに来るつもりだ」


「わかった、もしエリックの蘇生が成功したらいち早く教えてほしい」


「約束しよう、では2日後ここで」


そう言うと勇者は次の仕事に向けて、組合を後にした。



✳︎✳︎✳︎



「アヴェインめ、ここ1ヶ月依頼を他のパーティとする依頼ばっかり受けやがって」


ゼフはイラついていた。ゼフは不満を積もらせながら、買い物に出かける。そこにはいつもの賑わっている光景があった。


「それにしても、この大通りも見慣れたな」


ゼフは30分かけて自分の知らないアイテムを探す。買い終わり、帰ろうとしたところでアヴェインが前から歩いてくる。


「ゼフ……」


アヴェインは気づいたのかこちらに元気なく歩いてくる。


「なにか用か?」


「実は依頼を受けたんだが……」


「なんの依頼だ単刀直入に言え。 俺は忙しい」


「ああ、わかったよ。 今回は遠征の依頼で同行者は勇者だ」


「勇者か……」


「2日後いつもの時間に組合集合だ。それまでは他の依頼は受けないことにする」


「ああ、わかった。2日後だな」


「それじゃあ忘れるなよ」


そう言うとアヴェインはとぼとぼ歩きながら去っていく。


(勇者か、案外早かったな。これで今まで我慢してきたのを晴らすことができる)


ゼフは周りに見られないように笑う。


(そういえば、どこに遠征するか聞いてないな…… まぁ大したことではないだろう)


そう思ったが、別にいいかと思い考えなかった。こうして何事も起こらず、2日後の朝を迎えるのだった。


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