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災厄の蟲使い 前編  作者: トワ
仲間
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壊れ始める歯車

オーガ達をゼフ達は物陰からひっそりと見る。どうやら沢山の木を運んでいるみたいだった。


「オーガ達は何しているんだ?」


ゼフが小声で問うと、アヴェインが口を開く。


「オーガ達は家を作ってるみたいだね。それにこの辺じゃ見ないタイプだ」


「何かに追われた可能性があるってことね?」


「ああ、そうだよ。でもオーガも危険があるからね。討伐した後に組合に報告しよう」


「御意」


「わ、わかりました」


「わかったわ、でもどうするの? 全く知らないタイプな上に3体。 こっちが不利だわ」


パーティメンバーが黙って考えている時ゼフは発言をした。


「俺に考えがある」


ゼフがそう言うと、パーティメンバーは全員ゼフを見た。


「ビートルウォリアが1体相手する。2体ならこの前に話した陣形が成り立つはずだ」


「たしかに2体なら可能だが……」


「やるわよ」


「いいのか? 負担が想定の2倍になるぞ?」


「ええ、いいわよ。2人もそう思ってるでしょ?」


「いつでも準備万端ですぞ」


「は…… はい大丈夫です」


「だそうだ、ゼフ」


「そうか、では作戦を開始するぞ。ビートルウォリア、オーガを1体引き付けろ」


そう言うとビートルウォリアは飛び出す。同時にゼフ達も飛び出し、見事2体をこちらに引きつけることに成功した。


「行くぞ! ガラン」


「御意」


オーガは事態を飲み込めていないのか、慌てて拳を振るう。しかし、アヴェインとガランはオーガのその攻撃を力一杯受け止めていた。シルヴィアはオーガに攻撃魔法を叩き込み、エリックはオーガの攻撃を耐えている2人を回復していた。


(なかなか理に適った作戦だ。 これなら勝てるだろう)


ゼフも戦いたいが、自分だけでは何もできないと思われている。実際ビートルウォリアを召喚しているため、他の蟲は召喚できないと勘違いしている。だから戦えないものの手当てをする役割を担っているので、1番後ろで守られる形で戦いを見守っていた。


「――フレアランス―― 、エリック! 魔力の回復を!」


「は、はい!」


「よし! 一度引くぞ!」


「――バインド――」


シルヴィアは魔法を唱えるとオーガは動きを止め、動かなくなる。


「今のうちにガランとアヴェインは回復してて」


オーガ達の体力は半分を切っていた。今のをもう1度続ければ勝てる。そうパーティメンバーは確信していた。


「よし!もういけるぞ!」


「わかったわ、そろそろバインドが切れる! そのタイミングでもう1度始めるわよ!」


魔法が切れると同時にオーガは大きく覆い被るように、殴ってくる。しかし、それをアヴェイン達が見事に受け止める。


「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」


「――フレアランス――」


「もう一息だ! 行くぞ!」


オーガ達は流石に命の危険を感じたのか背中を向け撤退する。だが、シルヴィアの魔法は逃げるオーガを逃さないように放たれ、直撃する。そして、そのまま2体のオーガはドスンと音を立てて崩れ去った。


「はぁぁぁぁ!!、疲れたぁぁぁ!!」


オーガが倒れた瞬間シルヴィアは大きなため息をつく。


「お疲れシルヴィア」


「アヴェインこそお疲れ。それにガランとエリックも」


「お…… お疲れ様です」


「お疲れですぞ」


「よし、とりあえず解体するか。すまないがゼフ頼んでいいか?」


「ああ、任せろ」


ゼフはアヴェインの指示通り解体を始める。正直な話、収納魔法を使いたかったが、アヴェイン達に見せるとまた話が面倒になる気がしたので使わなかった。


「ところでゼフ。ビートルウォリアはどうなったんだ?」


「ついさっき反応が消えた」


「そうか…… 残念だ……」


もちろんそれは嘘である。理由としてはビートルウォリアはこのまま王都に向かわせたほうがいいと考えたからである。もちろん、オーガは瞬殺である。


「そ…… それじゃあもう1体のオーガが向かってるかもしれないってことですか?」


「いや、それはない。いくらオーガが強くてもビートルウォリアと戦って無傷で済むはずがないだろう。そんな状態でのこのこやってくるほど馬鹿ではないだろう」


「そ…… それは良かったです」


剥ぎ取りが終わり、みんなにそのことを伝えようとした時ガランが跳ね上がる。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「どうしたんだ!カラン!」


「いや、大したことではないですぞ。蟲をビックリして潰してしまっただけですぞ」


「そうかそれは良かった。それにしてもなんの蟲だそれは?」


「いやわからないですぞ」


「ゼフ、この蟲わかるか?」


近づき見てみると、それは芋虫のようであり、色は紫に赤色の斑点模様がある手のひらのサイズでの蟲あった。


「すまない、俺には分からん」


「そうか……ゼフにもわからないとなるとこいつも冒険者組合に報告するか。 取り敢えずこの蟲は少し手が空いているエリックが持ってくれ」


「わ…… わかりました」


「じゃあ、行こう」


「そうだな」


「ええ、わかったわ」


「わ……わかりました」


(何も気づいてないようだな、お気楽な奴らだ。残念だがあらゆる蟲を召喚できるこの俺が、この蟲を知らないわけないだろ。まぁ教えることはないがな)


ゼフは別に蟲を自分の近くにしか召喚できないわけではない。この世界ならどんな場所だろうと現在の場所から召喚することができる。だから、アヴェイン達に見えない場所で召喚魔法で魔法陣を展開して毒蟲を召喚したのだ。


「アヴェイン」


「どうした?ガラン」


しばらく歩くとガランがアヴェインに声をかける。


「気分が悪い、休ましてくれるか?」


「ああ、わかった。大丈夫か? ポーション残っているが飲むか?」


「いや、いい。ありがとう」


ガランにいつもの口調はなく、只々具合が悪そうだった。この中にガランを背負える者はいない。だから、ガランが回復するのを待つしかないのだ。そして、5分程経った時、シルヴィアが声をかけてくる。


「ねぇアヴェイン」


「なんだい? シルヴィア」


「みんなでガラン背負って行きましょ」


「そうだな、確かに今のガラン状態は異常だ。早めに治してもらわないとな」


そう言ってエリックとゼフを呼び集め、運ぶことを提案する。そして、ガランに近づいた。だが、アヴェインは嫌な感じがした。あまりにも静かすぎる。普通はいくら衰弱しきっていたとしても呼吸の音は僅かだが聞こえる。だが、ガランからはそれすら聞こえない。急いでガランに近づき確認するとアヴェインは驚き、重い口を開いた。


「死んでいる……」


それはエリックとシルヴィアの思考を停止させ、ゼフに喜びを与えた。ガランはその瞬間、静かにその息を引き取った。





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