表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ETERDUM  作者: 時雨小夜
8/48

8.真意の読めない打明け話は唐突に為される。

 いつもとなんら変わりなく、デュシスの森は朝を迎えた。

 

 まだ薄暗く朝靄がかかる森の中で、早起きの小鳥がさえずり、樹々を渡っている。

 男達が薪を割る音が響き、家々のかまどでチャムの焼き上がる香りが立ちのぼる。

 泉の周りでは水汲みに集まった女達が、明るく弾むような声で挨拶をしあっていた。

 エスカラも起き出しているようで、もう随分前から階下で忙しく足音が動き回っていた。


 アルブの白い肌と明るい緑の瞳は日光に弱いので、女達はこうして朝早くから泉の水を汲み、洗濯や朝食の支度を済ませてしまう。男達は薪を割ったり、必要な時には家の外壁や屋根を修理したりする。

 1日の中で比較的森の中が明るく、日が高く昇ってしまわないうちに、アルブは外での仕事を終えてしまうのだ。

 

 ライナスは夜中に自分の部屋へ帰ったが、気が急いてほとんど眠れなかった。

 旅に出るための荷造りをしようかとも思ったが、初めての事で何を持って行けば良いのか全くわからない。


 窓から外に顔を出すと、清々しい森の香りを胸一杯に吸い込んだ。 

 退屈な日常から抜け出したいといつも願っていたライナスでも、住慣れた森を離れなければならないと思うと、急にデュシスの森が離れがたい、大切な場所に感じられる。

 それに、母にはなんて言えばいいのだろう。そう考えると、なかなか部屋から出る気になれない。

 そうしてライナスが森の様子を窓辺で眺めていると、すぐ側で声がした。


「どうして皆、魔法を使わないの?」

 開け放った窓のすぐ外で、バステトが宙に浮いていた。外で働いているアルブの人々を不思議そうに見つめている。

「どうしてって、魔法なんか普通のアルブは使えないよ?」

 ライナスがそう答えると、バステトは意外そうに目を見開いた。

「アルブって皆魔法が使えるんだって思ってたわ! そう聞いたもの」

「誰に?」

「セオよ。あの種族って本当に嘘つきが多いんだから。やんなっちゃう」

 ライナスはバステトが元気そうなのを見て、少し安心した。

 これから一緒に旅をするのに、ディオニーサスのことで落ち込んでいるであろう彼女へ、なんと声をかけたらいいのだろうと、気が重かったのだ。

「たぶん、嘘を付く気なんてなかったんだよ。そう信じていただけさ」

「へぇ……あんたって、割に優しい物の見方をするのね」


 バステトはライナスの顔を初めてまっすぐに見つめた。

 ライナスはバステトの目が少し赤いのに気が付いた。

「ねえ……大丈夫?」

「何が?」

「ディオニーサス様のこと」

 バステトは顔を背けると、声を強めて言った。

「大丈夫よ、ディオは。神は殺したって死なないんだから!」

「か、神? ディオニーサス様が? セオじゃなかったの?」

 ライナスはまるで想像していなかった言葉に、目を丸くした。

「あら? 言ってなかったかしら。ディオもわたしも、神なのよ」

 バステトの顔は微笑んでいて、真意が読み取れない。

 からかわれているのかとライナスが首を傾げていると、階下から声がかかった。


「ライナス? 起きてるの? 起きてるなら早く降りてらっしゃい! 朝食、今朝はお爺様とお客様もご一緒ですって!」

「はい! 今降りて行きます」


 階下のエスカラの声に返事をして、ライナスがもう1度窓の外を見ると、そこにはもうバステトの姿は無かった。

第8話目*真意の読めない打明け話は唐突に為される。も、引続き

http://sayoshigure.seesaa.net/

上記URLにてイメージ画像をアップしてみました。

興味がおありの方はどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆ネット小説ランキング>冒険・サスペンス部門>「ETERDUM」に投票(月1回)
ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ