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ETERDUM  作者: 時雨小夜
37/48

37.アルブのブリュオンはマクランの食堂で回想する。

 クローロンとブリュオンは、ライナスの後を追っていた。

 もちろん誰に頼まれた訳でもなく、勝手な使命感に燃えてのことである。

 更に付加えれば、使命感に燃えているのはクローロンだけと言っていい。


 歳の近いこの2人は、性格が真逆ながらも何故だか昔から仲が良かった。

 ブリュオンは思い込みの激しいクローロンの抑え役であったが、気が弱いせいでいつも道端の小石程にも抑えられた試しが無い。

 今回もクローロンの巻添えをくう形で、とうとうテロスの南、マクランまで付いて来てしまったのだった。


 先にライナスの旅立ちの理由を知ったのは、ブリュオンだった。

 ネフリティス翁とエスカラが話しているのを、たまたま耳にしたのである。

 その少し前のこと。クローロンはネフリティス翁の屋敷の窓から、ケイトシーとライナスが飛立つのを見てどこへ行くのかと、ただただ空を見上げて訝しんでいた。

 その日の午後になって、その不可解なライナスの行動をクローロンがブリュオンに話して聞かせた時、うっかり口を滑らせたのがブリュオンの運の尽きであった。

 ブリュオンは言った側から後悔したが、全て話して聞かせるまでクローロンが解放してくれず、耳にした全部を事細かく白状するはめになった。

「よし、ブリュオン。俺たちはライナスを追うぞ!」

 そうクローロンが口にした時、ブリュオンの心の中では後悔と諦めが渦を巻いたが遅かった。

 既にクローロンの中で、ブリュオンは旅の道連れと決まっているらしい。

「でも……ライナス様の邪魔になるんじゃ……」

「邪魔になんてなるもんか! 俺たちはあいつの兄貴分だろ? こういう時に助けなくってどうする!」

 こうしてブリュオンはクローロンと2人で、南へ旅立つ事になったのである。


「そうそうおまえたち、翼のあるアルブのことを聞いてたっけな。それなら、この前メロース川で流されてた老人を助けたって噂になってたぞ。なんでも助けられたのは、テロスの東で畑を耕してる爺さんだったらしい。家はアイルーロスの丘の近くだって話だ。その爺さんを訪ねてみたらどうだ?」

 酔っ払いを運び出す手伝いの礼にと、ブリュオンとクローロンは食堂の店主から酒を一杯ごちそうになっている所である。

「その話、あいつらにもしたのかい?」

「いんや。来るなり横柄な客だったし、顔馴染みならまだしも、情報料のひとつも寄越さないんで言わなかったよ」

 しかしこの店主は、気を失って伸びているセオの男達のふところから、情報料以上の金をせしめたはずである。

 そう言った店主には、少しも悪びれる様子が無く、ブリュオンは思わず吹出しそうになった。

「それに俺はどうも、兵士ってやつが嫌いでね」

「あいつら兵士だったのか? そんな奴らをやっつけて、おっさん大丈夫なのかよ?」

「ま、あれだけ酔っ払って頭を打ってりゃきれいに忘れちまってるさ。思い出して乗り込んで来てもまた追っ払うだけだよ。こちとらずっとこの商売でおまんま食ってんだ」

 店主はそういって袖を捲ると、太い上腕の筋肉を盛上げて見せて、にかっと笑った。

「でしたら、また他の怪しいやつが聞きに来ても、言わないでおいて貰えますか?」

 ブリュオンがそう言って心ばかりの口止め料を払うと、店主は承知したと頷いた。

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