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ETERDUM  作者: 時雨小夜
32/48

32.ダンザックは夕暮れの交易市の中を彷徨う。

 ライナス達一行が、アクテーの町を後にして、エルトロの家へ向っている頃のこと。

 交易市では相変らず隊商姿のメソン兵が、翼を持つアルブを捜索していた。

 ダンザックはあれからガチョウを背負ったマント姿の男達に、丸1日翻弄された。

 しかしさすがに、今ではそんな姿をした者は1人も見かけない。

 翼を生やしたアルブの姿も、それを見たという噂ひとつ出て来ない。

(本当に翼を持つアルブなど居るものなのだろうか?)

 ダンザックの頭に、何度かそんな考えがよぎった。

 しかし、あの時声をかけてきた、アルブ織りの店を出していた商人──。

 あの男は、翼を持つアルブの仲間だったのだ。と、ダンザックは確信していた。

 ガチョウを背負って歩いてた男達に聞込むと、皆、あの商人の店があったあたりを指差した。

 あそこにあった店で買ったと──。

 本当に翼を持つアルブがいるからこそ、あのアルブ織りを売っていた商人は、仲間を逃がす時間を稼いだのだろう。

 と、言う事は──ダンザックへ何気無く声をかけて、違う男を追わせたのも、追手と知っての事だったに違いない。

 それを正しいと証明するように、あれきり交易市であの商人の店が出されることは無かった。

 高い確率であの商人も、翼を持つアルブも、交易市からどこかへ移動しているだろう。

 しかし、どちらへ向ったのかさえ判らない。

 ダンザック達は完全に、手掛かりを失っていた。

(また1日を何の収穫も無しに終えるのか……。)

 茜色に染まり始めた空を、ダンザックは呪うような気持ちで、目を細めて仰いだ。


「隊長!」

 ダンザックが振り向くと、商人の扮装をした部下の1人が小走りで寄って来る所だった。

 その部下に腕を掴まれて、トルルの商人姿をした男が、引きずられながら付いて来る。

「なんだ、何か見つかったのか?」

 ダンザックがそう尋ねると、部下の男は後から付いて来たトルルの男を前へ押し出した。

「さっき仲間と話していたことを、もう一度話せ」

 そうせっつかれて、トルル族の男は戸惑いながら話を始めた。

「ええと……メラース川で、トルルの老人が溺れていたんです。この間の雨で、川の流れが速くって……」

「細かいことはいいから、その先! 誰が助けたのかを言え!」

 部下は興奮に顔を蒸気させて、連れて来たトルルの男の肩を揺らす。

「翼の生えたアルブの少年でした」

「本当か? 間違いなく翼が生えていたのか?」

 ダンザックは目を見はって問い返す。

「ええ……間違いありません。石橋の欄干から空を切って飛んでいって、助けたんです」

 トルルの男がそう言うと、部下はダンザックに得意げな顔を向けた。

「メラース川と言ったか? その少年はそれからどこに向った?」

 ダンザックは更に尋ねた。

「どこに向ったかまでは……一緒にいたトルルの若い女が、溺れていた老人の知合いだったらしく、介抱してたのは見てたんですが。助かったのを見届けた後は、私はすぐにその場を離れましたもんで……」

「トルルの女? 他に誰かいたか?」

「アルブの青年が1人……私が見たのは、それだけです」

「青年……? そうか、助かった。礼を言う」

 ダンザックがそう言って金貨を渡すと、トルル族の男は一礼した後、心配そうに見守っていた仲間の所へ走って行った。

「すぐにメラース川に向かうぞ! 全員呼んで来い!」

 ダンザックの声に弾かれて、部下は交易市の賑わいの中に消えて行った。

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