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ETERDUM  作者: 時雨小夜
30/48

30.オゾスはパルトスを投げて諍いの仲裁をする。

 オゾスは腕を組んで、ライナスとバステトを睨みつけていた。

 ライナスもバステトも、肝を抜かれたような顔でオゾスを見上げている。


 オゾスはいからせていた肩の力をふっと抜いて、大きな溜息をつくと、再び寝台へ腰を降ろした。

「ったく。腹が減るからそんなくだらない言い争いになるんだ。柄にも無い事をさせないでくれよ」

 オゾスはそう言うと、ルビニとコキニーが運んで来た、エリャの実のピクルスが入ったパルトス(トウモロコシと麦の粉で作ったパン)を、2人に投げて寄越した。

「喰え喰え! それでしばらく2人とも口を塞いでろ。バカバカしくて聞いてられないぜ」

 バステトとライナスが受取ったパルトスを口にするのを確かめて、オゾスも一口頬張った。

「……言いたい事を言うのは大事だが、次からは満腹になってからにしろ。腹が減ってちゃ頭が回らなくて言過ぎるってもんだ。

 女の子を泣かすなんざ、アルブの男じゃないぞ? ライナス。不安なのもわかるが、喚き散らしたって答えが出るもんじゃないだろ」

 そう言って、オゾスは頬張ったパルトスをラ・ギ(山羊のミルク)で流し込んで、更に付け加えた。

「それに、バステト様も、俺に言わせてもらえば、ちょっとだけ言過ぎたな。

 ライナスはずっとデュシスの中で暮らして来た……悪い言い方をすれば世間知らずだ。

 確信が持てないまま危険に晒されて、知らない土地で不安になるのも無理は無いさ。

 きっとあんたのことを、どうでもいいなんて露程も思っちゃ無いぜ? ライナスはそんなに薄情なやつじゃないからな。こんなことは言われなくても、本当はちゃんとわかってるんだろ?」

 ライナスとバステトは、オゾスの言葉を聞きながら、黙々と口を動かしていた。

 2人とも最後の一口まで食べ終わるのを見届けてから、オゾスは2人の顔を覗き込んで、にっと笑った。

「はい、じゃあ2人とも、反省したら、ちゃんと謝って仲直り! な?」

「……バステトは悪く無いのに、当り散らして……怒鳴ちゃってごめんなさい」と、ライナス。

「……私も、無闇に不安にさせるようなことを言って、悪かったわ。ごめんなさい」

 ライナスとバステトが互いに謝ると、オゾスはパンッと手を打ち合せた。

「よろしい! では、皆で力を合わせてがんばろう!

 とりあえずは力を合わせて腹ごしらえだな!

 他の皆も呼んで来るよ。俺がいない間に、また喧嘩すんなよ?」

 そう言って顔をくしゃくしゃにして笑って見せると、オゾスは部屋を後にした。



 ルビニとコキニーが、エルトロと一緒に宿屋へ帰って来ると、2階からオゾスが降りて来た。

「よ、おかえり! 飯にしようぜ! もう腹が減っちゃって、減っちゃって。先にちょっとだけ頂いちゃったよ」

 オゾスは何事も無かったように、明るく笑う。

 ルビニはそんなオゾスの様子に、救われる思いがした。

「すまなかったね、さっきは。つい大人気無いことを……」

 エルトロが申し訳無さそうに呟く。

「いいんですよ。突然の話で、訳がわからないでしょうし。俺だってまだ、よく判ってないんですから。まずは一緒に飯を食って、それからです」

 オゾスはそう言って豪快に笑った。


 エリャの実のピクルスが入ったパルトス、鶏肉とトマトの揚げ煮、オレンジのゼレ(ジュレ)、それにラ・ギ。

 部屋に4人が戻り、全員揃ったところで、改めて夕食を囲んでいた。

「コキニー、わしは皆さんと一緒に、家に戻ろうと思うんだが……君はどうするね」

 エルトロがそう言うと、コキニーは一同を見渡した。

「もし皆さんにご迷惑でなければ、僕もご一緒したいんですが。エルトロさんを手伝うように父から言われてますし、僕もジェロのことが気がかりですから」

「じゃ、決まりだ。ルビニさんはどうする? 帰るなら俺が送るけど」

 ライナスとバステトが頷くのを見て、オゾスが言う。

「私も出来ればもう少し、ご一緒したいんですが。構いませんか?」

「大歓迎! 良かった。俺ももう少し付合いたいと思ってたんだ。いいだろ?」

 ルビニとオゾスがそう言うと、バステトは頷いた。

「断る理由なんて無いわ。そうよね?」

「ありがとう、オゾス、ルビニ。心強いよ」

 ライナスもそう言って頷く。

 オゾスの言った通り、お腹を満たすと、ライナスの胸に渦巻いていた不安な気持ちは、すうっと何処かへ行ってしまった。

ブログにて、テロス大地備忘録【A】も公開しました。

その他イメージ画像等もありますので、興味のある方はどうぞ。

http://sayoshigure.seesaa.net/

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