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ETERDUM  作者: 時雨小夜
15/48

15.守護神は真実の鍵と真のメソン王について語る。

 山のように盛られた鴨肉のラクス(甘酸っぱい果実)ソースがけ、茸とソヤ(豆)のスープ、それにオリュポ・ラ・ギ(穀物のミルク粥)が並んだ食卓を囲んで、それぞれが謎に頭を巡らせて黙々と食べていた。

 クラニアの手料理はどれもとろける程美味しく、頬張る他に口を開くのが面倒だった所為かもしれない。

 大分腹がこなれた頃、やっとステルコスが口を開いた。

「話は変わるかもしれんが、バステト様は何故、ライナスと旅に出ることになったんだ?」

 ステルコスの問いかけにライナスは答えようと口を開いた。が、言葉に詰まった。

 

 ──あれ……そういえば、どうしてバステトはぼくと旅をするんだろう?──

 ライナスは自分にホランコレーという力があって、他に2人いる(真実の鍵)を見付け、エターダムが忘却に覆われた原因を探るように、とだけしかネフリティス翁からは言われていない。

 しかし考えてみればバステトが何者で、どうして旅を続けるのか、ライナスは何も聞いていなかった。

 バステトに聞いたのも、両親の事とディオニーサス様の話だけで、バステト本人のことについては神だとしか聞いていない。

 バステトはきょとんとした顔でライナスを見つめている。

 どうやらライナスがいつまで経ってもステルコスに説明しないのを、不思議に思っているらしい。

「あら? それも言ってなかったかしら」

 バステトは記憶を辿っているのか、瞳をキョロキョロと動かした。

「全く聞いてないけど。バステトも(真実の鍵)ってわけじゃないよね?」

 ライナスがそう言うと、バステトは呆れたような顔をする。

「わたしは神よ? プラグマ・クレイスであるわけないじゃない……って、それも聞いてない?」

「うん」

「ディオったら、ちゃんと全部を話し終える前に消えちゃったらしいわね……」

 どうやらほとんど何も知らされないまま、送り出されてしまったらしい。と、今更ながらライナスは気付いた。


 バステトは静かに語り始めた。

「わたしは王都メソンの王を守護する女神なの。神は皆『その時』が来ると、自分の役割を知るのよ。それは絶対的なもので、抗えない本能のようなものなの」

「メソンの王を護る女神? それがどうしてこんな西の外れに」

 ステルコスが尋ねる。

「ええ。本当ならわたしは王都の女王を護るためにメソンを離れられないはず。けれど今のメソン女王は、護るどころかわたしには近づけないの。それは彼女がわたしに護られるべきである【真の王】では無いということ。だからわたしは、真の王を探し出して守護しなければならない」

「その真のメソン王と真実の鍵には、何か関連があるってわけか」

 ライナスの問いに、バステトは頷いた。

「わたしもディオと一緒にボレアス山脈のケイローに聞きに行ったの。真の王の行方を聞くためにね。そうしたら、その3人いるプラグマ・クレイスの誰か1人が、王都メソンの真の王だと言われたわ」

「じゃあ、ライナスも王様候補ってわけだ!?」

 オゾスはそう言ってライナスの肩を力強く掴んだ。

「まあ、そういうことよ」

 バステトは続けた。

「真実の鍵は北にロギウス、南にログロッタ、そして西にホランコレーがある。それは神の血を引かぬ者であり、他者とはたがう者。そして何れかが真のメソン王である。……そう、ケイローには言われたわ。それでディオがあなたのことに思い当たって、まずはデュシスに来たってわけ」

「で、思った通りにぼくが君のことを──」

「“ディオニーサスの娘か?”って聞いたのよ」

 バステトはそう言ってライナスを睨んで見せたが、その瞳は笑っているようだった。

 ここまでお付合い下さっている皆様、ありがとうございます。

 さて。来週からはいよいよ、デュシスを抜けて南の地テロス大地へ出発します。

 次話は9月8日(月)UP。お楽しみに。

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