13.南門のオゾスは空飛ぶ客人たちを歓迎する。
朝から2人は幾度か木の上での休憩をとりながら進み続け、夕暮れになってやっとデュシスの南門が見えるあたりまで来ていた。
「この辺りはまだアルブの土地だ。今夜は知り合いを見つけて泊まらせてもらおうよ」
バステトはまだ森を抜けられていないことに不満をもらしたが、ライナスがそう言うと少し機嫌を直したように見えた。
このあたりで暮らすアルブは、ライナス達の暮らしていた西の岩壁近くのアルブ達よりも、ずっと気性が荒いことで知られている。
エターダムの地で最西端に位置するデュシスの森は、北に連なるボレアス山脈と東に切り立った崖とに守られている。
普通の者ならばそんな険しい道程を辿ってまで、デュシスの森へ入り込もうという気は滅多におこさないだろう。それでもデュシスの森へ入ろうという者は、ぐるっと南門に回り込まなければならない。
しかしそんな中には他の町や村を追われた盗賊団等の不心得者も多く、そういう輩を追い払うためか、自然とデュシスの南には好戦的なアルブが集まるようになっていったのだろうと思われた。
ライナスは空から降りる途中、南門近くに住むアルブのオゾスが歩いているのを見つけた。
「おーい! ライナスじゃないか!」
オゾスのほうもライナスを見つけて手を振る。
オゾスはライナスより11も年上で、少し乱暴なところもあるが、裏表がなく無邪気で親しみ易い青年だった。
少しウェーブのかかった銀色の髪を無造作に頭の後ろで結わえたオゾスは、くしゃくしゃにした笑顔を空から降りて来る2人にむけている。
オゾスは大きく体を揺らして手を振りながら、2人の着地を迎えてくれた。
「久しぶりオゾス! こちらはバステト。バステト、彼はオゾスって言うんだ。南門のアルブだよ」
「お会いできて光栄です。オゾスさん」
紹介されてバステトは挨拶をした。
「光栄ですバステトさん。喋るケイトシーにお会いしたのは初めてです」
オゾスはバステトに手を差し出した。
ライナスはバステトが、ケイトシーなんて言われて怒り出すのじゃないかとハラハラした。
しかしバステトは気を悪くする様子も無く、オゾスの手に自分の手を重ねた。
「バステトは妖精猫じゃないらしいんだ。彼女が言うには……」
「神よ」
バステトはライナスの言葉を継いで、きっぱりと言った。
「それはますます光栄だ! 神様にお会いするのも、知ってる限りでは初めてだ!」
オゾスは動じず、バステトへにっこりと笑いかけた。
ライナスはそんなオゾスの様子にすっかり感心した。
「今から見張り番かい?」
ライナスが尋ねるとオゾスは南門のアルブ達が暮らす川辺の方に目を向けた。
「いや、今から家に帰るところだ。見てみろよ、ほら!」
オゾスがそう言って指差す方には、数人のアルブの若者達が、大きな熊を運んでいた。
「北森のほうまで行って、狩りをしてきたんだ。そろそろ秋も深まってきたからな」
「すごい、大物じゃないか! 肉も毛皮も沢山採れそうだ」
冬が近づくとアルブの男達は、北森の奥まで行って大きな鹿や熊を狩る。冬の間の保存食や、毛皮を採って防寒具にするためだ。
「今日は2人とも家に泊まってくだろ?」
「いいのかい? お世話になるよ」
「まだ熊肉では持て成せないけどな。それにしてもライナス、すっかり旅人みたいな様子だけど。どこか行くのか?」
「まあね。それは後でゆっくり話すよ」
「わたしも、もうくたくた! 鹿でも馬でも1頭まるごと食べられそうよ」
「そりゃ大変だ! 早く家に帰って、母さんに山ほどごちそうを作って貰わないと」
3人は並んで、熊を運ぶ若者達と一緒にオゾスの家へ向かった。
第13話*南門のオゾスは空飛ぶ客人たちを歓迎する。も、引続き
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