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ボロジュネール領火山

火山に入抗するのは、マックス王帝魔術騎士、カレン魔術騎士、防衛部門第一研究員のヒース、ミュリエル、リューク、ルイスの6人だ。クレアは厳しい行程に耐えられないだろうという事で屋敷で留守番になった。


「ミュリエル、本当に大丈夫なんだろうな。迷子になってみんなで骸骨になったりしたくはないぞ」


リュークが不信感に満ちた顔で聞いてくる。リュークはミュリエルの父、ルドガーの言っていたことを聞いたからだろう。ミュリエルが火山に足を踏み入れたことが一度もないだろうという事を・・・。


「大丈夫よ。だってわたし何回も入った事あるもの・・・」


「え?!ちょっと待ってミュリエル。でも君のお父上のルドガー子爵は、そんなことは・・・」


マックスが慌てて聞き返す。


「お父様に内緒で行ったに決まっているじゃない。まああの頃はこのあたりでもミュール蛇やキルエ蝶がいっぱいいたから、それは自分で捕獲して後はキルエ糖さえ買えば簡単にはいれたのよね」


「さすがミュリエル嬢だわ。そんな小さいころから蛇まで自力で捕獲していたのね」


「やめてください、カレン騎士様。でも高値で売れる今、あれほど取れてたらお金持ちになってたのにな」


「だからお金のことは心配しなくていいから、ミュリエル。オレがなんとかするから安心しろ!」


「そうね、ありがとうルイス。いざというときは頼むかもしれないわね。でも今日の私はやる気満々よ!!ヒュートリム草!!絶対取ってくるわ!それで借金完済するの!!ふふ」


今日はマックスもカレンも騎士服の上着を脱ぎ、代わりに動きやすいブルゾンを上に羽織っている。ミュリエルもドレスを脱ぎ、ズボンに着替えてブーツをはいた。リュークとルイスも予め用意していたのか、動きやすい服装でブーツを履いていた。


ミュリエルの案内で火山道の入り口までくると、ミュリエル以外のみんなが息を飲んだ。山のふもとの岩の間にぱっくりと大きく開いたその穴は、中が見えないほどに真っ暗で火山だというのに冷たい風が中から吹きだしてくる。それに伴い、人の悲鳴のような音が響き渡って、体の奥まで響いてくる。


「こ・・・ここに入るのか・・・?」


ルイスが気おされたように委縮している。ミュリエルは笑っていった。


「大丈夫。これはわざと怖く作ってあるの。そうじゃないと知らない人が入って死んじゃうでしょう?」


「やっぱり入ったら死ぬんじゃないか」


リュークが言葉尻を捕らえて攻撃してくる。ミュリエルはリュークを睨みながら言った。


「そうね。私が付いていないと死ぬわよ。だから死ぬ気で私を守りなさいね。じゃないと火山口に着いたとしても戻れないわよ」


「わしは一番最後についていくから気にしないでくれ。一番早く逃げられるようにな」


さすがはヒース、いう事が違う。ヒースは皆の冷たい視線をものともせずにひょうひょうとした顔で本当に一番最後尾を付いてきた。


当然、先頭を切るのはミュリエルである。手に蛍灯虫を持って足元を照らしながらゆっくりと進んでいく。その傍をマックスが気を使って守るようにしてついてくる。それを良く思わないルイスがその反対側で距離を置かずについてくる。


「あのー、本当に大丈夫だってば。あ、その角を曲がったら、ミュール蛇を出してね。半分は置いておくのよ。帰り道で必要だから」


ルイスが蛇の入った入れ物を手にしたとたんに、その物体は洞窟の岩陰の中から突然姿を現したかと思うとものすごいスピードで襲い掛かってきた。


「ルイス!!はやくそのミュール蛇を投げて!!!!」


暗がりで良く見えないが、出てきたのは5メートルはあろうかというくらいの巨大な蛙だ。ルイスが蛇を投げつけると、すぐにその動きを止めた。そのまま固まったかのようにして微動だにしない。


「ふぅ、この子大きくなったわね。昔は3メートルくらいだったのに。何を食べているのかしら?あれ、カレン騎士様?」


皆が巨大蛙に驚いて観察している中で、カレンだけがいつもの無表情ではなくて怯えた顔をして震えて小さくなっていた。普段はクールビューティーで、どんなことがあってもちらりとも感情を見せないカレンが見せる初めての様子に、皆が目を丸くする。


「あの・・・カレン騎士様・・それ、かなり可愛いかも」


ミュリエルがみんなの気持ちを代弁する。これがギャップ萌えってやつかと思いながら見ていると、カレンが小さく震える声でいった。


「か・・・蛙だけはだめなんですの」



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