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ルイスとの特別授業


レイモンドと別れたという噂は再び学園中を駆け抜けた。レイモンドは紳士らしくリュークの名は出さなかったようだ。良かった。リュークの女だという噂が少しでもたってしまうと、学園ではもう恋ができないに違いない。


私の目標は今、真実の愛を2か月で見つけるというものに変わった。当初の金持ちなら誰でもいいから3か月で見つけるといったものから、かなり難易度が上がっている。


大嫌いで生理的に無理な男との結婚生活を送る為の訓練をした方が、もはや建設的ともいえそうな感じだ。


ミュリエルは大きくため息をついた。


「ミュリエル!もう始まるぞ、集中した方がいい!」


ルイスの声が近くから聞こえてきた。そうだった。私はいま特別授業を受けている最中だった。


今回は二人一組で、街に潜むスライムを見つけて退治する。そういう訓練だ。スライムとはいえ今まで戦ったどんな敵よりも強敵だった。まず焼いても煮ても刺しても死なない。しかも生きているものを体内に取り込むとすぐに分裂して数が増える。


唯一スライムを退治するには、体内に直接魔力を流し込むしか方法がなかった。でもその攻撃はもろ刃の剣で、逆にスライムに取り込まれてしまう危険性もある。


今日の相棒のルイスは私と組んで、とても張り切っているようだった。レイモンドと別れたことも聞き及んでいるに違いない。天にでも昇らんかのように今日は機嫌がすこぶる良い。


ルイスは上機嫌のままスライムを一匹見つけると、音を立てずに近づいてその体に手を手首まで突っ込んだ。スライムは音は聞こえるが目は全く見えない。音にさえ注意していれば近づくのは容易だ。


だがルイスが魔力を注入し始めると流石に気が付いたようだ。ルイスを包み込むようにスライムが広がり、捕えようとする。それを危機一髪逃れたルイスがミュリエルの隣に戻って警戒を強めた。


建物の陰に身をひそめながら作戦を練る。


「やっぱ正攻法じゃだめだな。何かいい案はあるか?」


「そうね、こういうのはどうかしら」


まず魔力を込めた剣を囮として突き刺す。そっちを攻撃しようとしている隙に、反対側から回って二人で一気に魔力を注入する。


「そうだな、やってみよう。じゃあオレの剣を使おう」


さっそくルイスが建物を猿のように器用に上ってスライムの上部に回り込み、上から剣を突き刺す。同時に下で待ち構えていたミュリエルが両腕を突きさして魔力を注入する。後に続いてルイスも地面に着地するとすぐに手を突きさして魔力を注入する。


このスライムの感触・・・。生暖かくて、しかも何か生臭い匂いがする気がする。気持ちが悪―――い!!早く終わって頂戴!!!


すぐに致死量の魔力に達したようだ。囮の剣を取りこんで吸収してしまった後で、ミュリエル達に気が付き、取り込もうとスライムを伸ばしたが遅かった。既にスライムの中心には光の玉が輝いていて、そこを中心にして一気に破裂した。


「きゃっ!!なにこれ!!」


「うげっ!気持ち悪ぃ!!」


突然スライムの雨に降られて、二人ともねちょねちょのスライムまみれになってしまった。互いの顔を見合わせて茫然とした後、二人は声を立てて笑い出した。


「「あはははははははは・・・!!!」」


ゴーーーーーン!!!


その時、戦闘終了の鐘が鳴った。5チームのうち時間内にスライムを倒せたのはルイスとミュリエルのチームだけだった。体中についたスライムも教授たちが造った幻影魔法なのでもう消えていた。


これが本当の戦闘でなくて良かったと、ミュリエルは安堵のため息を漏らした。教授たちはこぞってルイスとミュリエルを褒め称えた。ルイスは勝ち誇ったような顔をしてミュリエルを振り返るとこういった。


「オレ・・この間お前に言った事。絶対に実現して見せる!王帝魔術騎士になってお前を守ってやるから、安心してオレに守られてくれ!!それで、オレのこと少しでも好きだと思ったらすぐに伝えて欲しい。約束だぞ!!」


直情的なルイスの想いの吐露に戸惑いながらも、なぜか安心感を感じて思わず口元がほころぶ。そんなミュリエルを見て、顔を赤くしたルイスはガキ大将のような笑顔になっていった。


「ミュリエル、大好きだ!!」


周囲の生暖かい視線にさらされていることに今更ながら気が付いたミュリエルは、顔を赤らめて蚊の鳴くような小さい声で言い返した。


「そういうことは、もっと小さい声でいうものよ!!!」


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