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人生は二択の連続では無く、そのまま進むか逃げるか

作者: 比歩葉穂

「ゼッケン番号132番上原佳子さん」

白線の前で礼をする。

「上原さーーーん」

「上原せんぱーーーーーい」

「上原ぁぁーー」

「佳子ちゃぁーーん」

周りの応援の声が聞こえてくる。

「263番、 041番、 119番、、、、」

番号が呼ばれる度に体が震え始める。

「以上14名、OO県陸上競技大会女子1500m走決勝。

選手は位置に着いて下さい。」

「フゥーーーゥ」まずは肺を空にする。

「スゥーー」そして息を思いっきり吸う。

最後にいつものようにスターティングの構えをとる。

「on your mark、、、set、、、」

フッと体の力を弱める。


パァン!


一斉に走り始める

隣を牽制し、隙間に押し入り、肘で横のやつを押しのけながら自分の位置をとる。


100m地点

前に三人、横に重なって二人、インコース。

後ろには4、5人ぐらいだろうか。

ペースが少し早めだし、囲まれて動きづらい!


300m地点

400メートルトラックだから、後三週。

私のいる集団に変化無し、だけどやはりペースが早い。


700m地点

自分の息の乱れが耳に聞こえ始める。

何人かは先頭集団から脱落したらしい、前に二人、横に一人。


1100m地点

息が苦しい、紐が緩んだのかな、髪がえらく揺れている。

足が重い。腕が重い。

前2mぐらいには二人、私のすぐ後ろに一人ぜえぜえと息をしながら食らいついている。


「カランカランッ」とラスト一周の鐘が鳴る、と同時に前の一人が勝負に出る。


1300m地点

何も聞こえない、周りが見えない、ただひたすら、前の一人を追っている。

もうこれ以上、スピードは上げられない。

前とは3mぐらい。

勝負あった、と奴は思っただろう。


1450m地点

最後の直線、鉛のような腕を振り上げ、錆びた鉄のような足を気合いで回す。

隣ではヤツも同じように顔もフォームもめちゃくちゃになりながら抜きつ抜かれつ、死にもの狂いでゴールを目指す。




「ごほっ、 がほぁっ、 ああぁっ 、 はぁ、はぁ」

体が動かない、その場にしゃがむ。

横目にチームメイトの駆け寄る姿が見えた。

「佳子ちゃん!止まったらだめだから!

ナンバーは私が返しに行くからすぐダウンしに行って!」


胸が焼けるようにいたかった。

体は走っていたときより重くは無かった。

私は競技場の周りでダウンをしていた。

体半分の差で負けてしまった。


水道のあるところで止まり、軽くストレッチをしながら髪止めを外す。

蛇口ひねって水を出し、顔を洗う。

不思議と後悔は無かった。


「on your mark、、、set、、、」

もう次の競技が始まっていた






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