徴兵令
やっとこさ本編に入っていきます。慣れねぇ。
背中にぞくりとした感覚が這い回る。殺気とは違う、絡みつくような視線だ。
「はぁ……」
その視線を向けられている少年は溜息をつく。
これで今日何回目の溜息だろうか。
溜息をつくたびに幸せが逃げるというが、このペースで行けば間違いなく自分の人生における幸せが無くなってしまうだろう。
「はぁ……」
そんな下らないことを考えてたらまた溜息をついてしまった。
学習しねぇな、俺。
心の中でぼやき、自虐的になる。そして、またまた溜息をつきそうになったので思わず飲み込む。
「気持ち悪いな……1日ずっとこれか」
只今の時刻は18時00分。
学校からの帰宅途中である。
今日の朝自宅から出た時からずっと誰かに見られている感覚が抜けない。
しかし、確証もないのに犯人を探そうとしても意味が無いのは分かりきっている。見てた人なんていないかもしれないし、シラを切られたらそれまでの話になってしまう。メリットなんてないのだ。
「だけど、このまま見られ続けるのも我慢の限界があるな」
そう白斗が言った瞬間、背中で感じていた視線が消えた。
どうやら、耳もとても言いようだ。
なんとなく、視線を感じていた方向に体を向ける。
誰もいない。
だけれど、白斗はそうは思わなかった。
「間違いなく逃げたな……と、着いた」
自宅の前に到着し、門を開ける。
少し、広めの庭を通り鍵を開け中に入る。
「ただいまー」
「おお、おかえり白斗」
うちの中から父が返してくる。
「父さん、帰ってきてたんだ」
「そりゃ、父さんだって帰ってくるさ。家の家長なんだから」
白斗は父の返答に半眼を作る。
「いや、半年とか帰ってこない人が言ってもな」
「ゴフッ!?ゴホッゴホッ!!!」
「珈琲でむせんなよ……」
どうやらさっきの一言がクリティカルhitしたらしい。
まあ、事実なので訂正も謝罪もする気は無いが。
「ンンッ……あー、喉いてぇ。ついでに肺も痛い。ところでさ、どうだ学校順調か?」
最初の方は無視するとして、言葉を返す。
「いや、1ヶ月ぐらいじゃどうとも言えないよ」
「あー、やっぱり?」
「わかってて聞いたのかよ」
「確認っていうやつだ」
父を見る。
俺を拾って育ててくれた人。
母は俺を拾ってすぐに死んでしまったらしい。だが、それでも男手一つで今まで育ててくれたすごい人だ。多忙で家をかなり空けるが、それでも金銭面で困ったことは無かった。そして、こうして帰ってきては質問してくる。放任なのだが、それでも思いやってくれてることを実感する。
「大丈夫だよ。上手くやれてるし、上手くやるよ」
「そうか」
父は微笑む。とても嬉しいようだった。
せっかく帰ってきたのだ晩御飯を作ってやろう。
「ご飯作るけど食べる?」
「そりゃな。たまにはゆっくりしたいぜ」
その後は、ご飯を食べながら談笑した。
そして、そんなこんなでその日は終わった。
翌日、目を覚ます。
顔を洗い、朝食を作り、食べ、学校の準備をする。
学校に行く時間になっても父が起きてこないので心配になって見に行ったところ、ぐっすり寝ていた。
「働き詰めだったんだな……」
実際昨日の様子からしてもかなり疲れていたようだった。
今日ぐらい、だらけさけても良いだろう。
そう思い、父の寝室から出る。
「朝食作っといた。ちゃんと食べろよ……と。これでよし」
書き置きを朝食と並べて置く。
そして、リビングから出て玄関に向かい靴を履いた時だった。
外の様子がおかしい。
そう白斗は思った。
別に事故が起こったとかそういう事ではないのだが、気配、空気の流れがおかしいのだ。
「精霊が緊張している……?」
空気中にいる精霊が動こうとしない。
魔力の流れ方も少し違う気がした。
「とにかく外に出ないことには分からないか……」
意を決してドアノブを回し外の世界に踏み出す。
「なんだ、何もないじゃないか」
安堵し、庭を横切り門を開ける。
1歩踏み出し、
囲まれた。
「……」
服装を見るとわがナハト帝国の軍の鎧を着込んでる者、魔法使い特有のローブを身に着けてる者等だった。
つまり軍人である。
そして。
白斗の日常が壊れた。
隊長らしき鎧を着た男がローブの女から紙を受け取り、内容を読み上げる。
「神崎白斗。貴君はその身を持って帝国に尽すように命じる。出兵し、戦果を挙げることを期待する」
徴兵令だった。
更新スピードが遅いだって?すまんな、これでも急いでる方なんだ(^ω^)