↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界  作者: 林 広正
PR
18/54

激闘


   激闘


「仕方がありません。あなたは必要な存在なのですが、死んでもらいましょう。こういう言い方は好きではありませんが、あなたの代わりなら、いくらでもまた生まれてくることでしょう。あなたもお気づきでしょう。子供たちは世界中に散らばっている。向こうにもいることでしょう」

 ミカは大きな翼を広げ、飛び立った。魔王の頭上を越え、その際に僕の手を掴み、魔王の背後に降り立つ。

「あなたはここにいて下さい。少しも動いてはいけませんよ。今から始まる戦いは、危険なものになるでしょう」

 ミカはそういい、僕の足元に、宙に舞いながら僕を囲うように足の先で地面をこすり輪を描く。その線がつながった瞬間、その線から光が噴き出し、僕の周りを保護する。僕はまるで光り輝くカプセルの中にいるようだった。

 透明な光の壁に触れると、暖かく優しい感触がある。強く押してみると、その壁ごと外側に膨らんでいく。

「決してその線から足を踏み出してはなりません。そこから一歩でも出てしまえば、あなたを守ることは出来なくなってしまいます」

 僕は一瞬、足を外に踏み出そうとしていた。けれどその言葉に、慌ててその足を引っ込めた。

「貴様一人でわしを倒せると思っているのか?」

 魔王は振り返りながら右手を大きく振り回していた。ミカは羽を広げて飛び上がり、その手をかわす。その手には僕を守っていた光の壁を消し飛ばす勢いがあった。僕は思わず身を屈めた。けれどその光に触れた瞬間、その手が不自然に軌道を変えた。僕を守っていたカプセル状の形をなぞるようにボコッとした半円を描き、通り過ぎていったんだ。

「残念ですけれど、一人で戦うつもりはありません。時間もあまりないものですから、四人で一気に終わらせるつもりです」

 ミカの言葉を合図に、三人の天使たちも翼を広げ、飛び上がった。四人対一体の激し過ぎる戦いが始まった。

 その戦いはどう言葉を使って表現すればいいのかがわからない。僕が今までに一度も経験したことのない激しさだったからだよ。映画や漫画の中でも見ることの出来ない、リアルな激しさだった。傷を負った魔王は緑の血を噴き出し、天使もまた羽を傷つけられていた。不思議だったのは、天使には血が通っていないことだよ。身体を傷つけられると、その箇所が一瞬青くなり、すぐに元に戻っていく。肌を切り裂かれても、液体は少しも流れ出ない。幽霊のような透明なものも出ているふうではなかった。幽霊の血がいくら透明であるとはいっても、ドロドロの血は肉眼で確認することが出来た。けれど天使の切り傷からは、なにも見えず、フッと息を吹きかけるとすぐ、元通りにくっついていく。

 普段はその手になにも持っていない天使たちだけれど、そのときだけは手に光り輝く武器を持っていた。どこからなにを取り出したのか、握り締めた拳から、突然光の棒が突き出てきたように僕には見えたよ。その光の棒は、親指側からだけではなく、両側から延びていた。

 その戦いは、明らかに天使たちが有利だった。四人からの同時の攻撃に、魔王がどんなに抵抗をしたところで、傷を負わずにすむはずがない。魔王の身体は見る見る弱っていったよ。

 天使もまた、傷の回復があるはずなのに、弱りを見せていた。これがもしも一対一の戦いだったのなら、魔王にも勝機があったかもしれない。一つの疑問はあったが、天使が一人で魔王を殺すのには、相当に時間がかかると思えたんだ。

 一つの疑問というのは、傷を負わない天使をどうやって殺せばいいのか、見当もつかなかったってことだ。いくら弱りを見せていても、傷つかない身体を殺す方法が、僕にはわからなかった。

 激しい戦いの中、魔王は初めからずっと真っ赤な瞳に、真っ赤な涙を浮かべていた。零れ落ちることを必死に我慢していたが、その理由は最後になるまでわからなかった。

 魔王は身体のあちらこちらを切り落とされていた。あれほど大きかった身体が、とても小さく感じられるほどに。身体中のほぼ全体から緑の血が噴出していた。それなのにずっと倒れずに立ち続けていたことに、僕は少しの感動をし、涙を浮かべた。

 けれどそれも限界に近づいていた。魔王はもう、立っていることが出来なくなり始めていたんだ。意識さえ、失う寸前のようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。