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この世界  作者: 林 広正
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現実


   現実


 これが現実なのか? こんな日が来るなんて、誰も想像していなかった。映画でも見ることの出来ない現実がこの世界にはある。この現実を映画にするなら、一体何百億かかるのだろうか? ハリウッドの超大作でも難しいんじゃないかな? 今日を生き延びた僕は、明日からなにをする? 失ったものが、あまりにも大きすぎる。

 信じられない出来事も、こうも続けざまに起きてしまうと、疑う余地も無く先へ先へと繋がっていく。夢なのか? そんなことを思う隙間さえなかった。こんなにも長い一日は経験したことがない。

 これが夢ならよかったのにと、今になって感じている。隣で寝息をたてている二人の子供たちが、朝になったらいつものように妻の用意した朝ごはんを食べ、保育園に出発する。僕は見送り、お茶を飲み干してから仕事に出かける。いつもの毎日が待っていたら・・・・ ありえない夢を思い描いている。今日の一日を、楽しい夢だったと思いたいんだ。これが夢だったのなら、下手な映画よりはよほど楽しいはずだ。子供たちに楽しい夢を見たと告げることが出来る。たまに見るおかしな夢の話をすると、二人はとても喜ぶんだよ。

 楽しい映画はどんなに長い時間でもあっという間に過ぎていく。それが何故だかわかるかい? 夢中で見ているからっていうのも半分は正解かな? けれど半分はハズレだよ。映画が早く感じるのは、どんなにその世界に入り込んでいるとしても、それはやっぱり客観なんだよ。現実は違う。主観で時間が過ぎていく。自分自身の体験を客観的に捉えることが出来るのは、長い時間が過ぎてからだ。多くの経験が短い瞬間に重なれば、時間を長く感じるものだろ? 長いとはいえない僕の人生だけど、今までに重ねた経験よりも遥かに多くの経験をこの一日でしてきたんだ。それも、遥かに濃い内容の経験をね。僕は本気でこれまでの人生よりも長い時間を過ごした気分でいるんだよ。

 明日がどんな日になるのかって? 今はそんなことを考える余裕もない。疲れた身体を休めたい気持ちはあるけれど、簡単に眠れるはずもない。興奮を鎮めるには、いくらかの時間が必要だ。

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