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04.初顔合わせ

 朝食を終えた実琴は、フィースから「仲間たちを紹介したい」と言われ、彼に案内されるがまま外へと足を踏み出した。

 窓から見える景色は木々のみだったのでわからなかったが、どうやら周囲に家の類はないらしい。

 歩きながらゆっくりと視線を巡らせていると、隣で歩調を合わせて歩くフィースが丁寧に説明してくれる。


「ここは少し街から外れた場所で……そうですね、街から見て北側にある山の中になるんです」

「街があるんですか?」

「ええ、少し歩いたところに。とはいえ、そんなに大きな街ではありませんが」


 彼の歩みで「少し」でも、実琴にとってはどれくらいだろうか。少なくとも、彼女に見える範囲でそれらしき姿は見えなかった。


「何という街なんですか?」

「シュレルップ、といいます」


 当たり前ながら聞いたことのない名前だ。

 二人が進むのは車一台分の幅しかない緩やかな下り坂で、「山の中」という言葉から察するに麓の方へ下りているのだろう。


「あなたの仲間というのは、街にいらっしゃるの?」

「いえ。街の手前に少し開けた場所があって、そこに劇団用のテントを張ってます。この時間なら全員そろってるはずです」

「そうで……っと、わっ」


 微妙にサイズの合っていない靴のせいか、はたまた舗装されていない道のせいか。

 つまずいてバランスを崩した実琴だったが、地面と仲良くなる前に力強く腕を引かれた。


「大丈夫ですか?」


 すぐ近く、頭の上から慌てたような青年の声が降ってくる。

 転びかけた所を助けてくれたのだ、と理解するのに一瞬のタイムラグ。

 実琴は二の腕を掴まれ、フィースの胸元に引き寄せられるような形で密着していた。


「えぇ……すみません、ありがとうございます」


 動揺を読み取られないよう、ことさらゆっくりと彼から離れる――が、最後の最後でフィースは優しく実琴の手を握った。

 さすがに驚いて顔を上げれば、彼は少し困ったように微笑んでいる。


「僭越ながら、このまま手を引く許可をいただいても?」

「それは……えっと」

「すみません、馬でもあればよかったんですが」


 申し訳なさそうなフィースの緑眼が実琴の足下へ向けられる。どうやら靴のサイズが合っていないことに気付いたらしい。

 靴を貸した当人としては気になるのだろうな、と思えば、彼の申し出を断るのもなんだか気が引けてしまって、結局実琴は「お願いします」と言うほかなかった。

 フィースは安心したように表情を緩めると、実琴の手を握ったまま歩みを再開する。

 その歩調は先ほどよりも遅く、気遣われていることがはっきりとわかるものだった。

 躓いてからこちら、彼の動作はいちいち紳士的である。

 飛びぬけているわけではないが整った顔立ち、意外と力強い腕、そしてこの気遣い……なんというか、乙女ならコロッと落ちそうな要素てんこ盛りだ。


(でもやっぱり、ちょっと胡散臭い)


 これでも一応海千山千、魑魅魍魎が跋扈する芸能界を生きているのだ。他者を見る目に長けている、とまでは言わないが、警戒を緩めていい相手かどうかは判断がつく。しばらくはついて行くと決めたけれど、彼に全てを預けられるほど盲目的にはなれない。


(まだ会って半日しか経ってないわけだし、当たり前といえば当たり前よね)


 自身の判断に内心で頷き、人気ひとけのない道を進む。

 結局誰とすれ違う事もなく、一五分ほど歩いたあたりで「ここです」とフィースが歩みを止めた。

 示されたのは、整地されたグラウンドのような場所だった。


「元々は騎士団の訓練所だった場所なんです。山中だし訓練所としては小規模ですが、街との間にちゃんとした道もあるし、ちょっとした小屋もあるので便利ですよ」


 実琴が軽く視線を巡らせてみると、確かにグラウンドの端――境目の向こうは木々に囲まれている――には、実琴が昨晩過ごした家より一回り大きな建物がある。小屋と言うよりは、小さな宿のようだった。そして実琴から見て一番遠い位置に、今まで歩いてきたのとは異なる、幅広の道が見える。

 だが何より目を引くのは、中央付近に設置されたテントらしきものだった。

 その正体を察してフィースの顔を見上げると、少しばかりの期待が覗く瞳に見つめ返される。


「あれが、あなたたちの劇場ですか?」

「わかります?」

「ええ、似たものを知ってるので」


 イメージとしてはサーカスのテントに近いが、実琴が知るそれよりは地味で規模も小さい。ステージの大きさにもよるが、着席でのキャパは一〇〇人という所か。

 フィースは「さすが女神さま」と嬉しそうに笑い、再び実琴の手を引いて歩き出す。

 向かうのはもちろんテント形の劇場。

 実琴から見える入り口は客を入れるにしては小さいので、団員専用の裏口だろう。

 ここにきてようやく手を放したフィースが灰色のそれをペラリとめくり、実琴を中へと促す。導かれるままに足を踏み入れると、そこには様々な荷物が雑然と置かれていた。予想通り、舞台裏に当たる場所なのだろう。ステージと思われる方から、にぎやかな声が聞こえてくる。


(あれは衣装かな? こっちはなんだろ……舞台装置?)


 雑然と置かれた荷物にあちこち視線を飛ばしていると、積まれた木箱の陰から一人の青年がひょこっと顔を出した。


「おはよーございます……って、誰ですか、そちらのお嬢さん」


 実琴の姿を見た青年は、目を丸くして驚いている。

 年の頃はフィースと同じくらいだろうか、二十代前半と思しき青年だった。落ち着いた色合いの茶髪はくしゃくしゃで鳥の巣のように跳ね、柔らかく垂れた瞳の色は蜂蜜を思わせる。顔には薄くそばかすが浮いており、フィース同様日本人とも欧米人とも雰囲気の異なる顔立ちだったが、平凡という言葉が人の形を取ればこんな顔になる、そんな印象の青年だった。

 フィースは近寄ってきた青年の肩を勢いよく掴み、実琴に向き直る体勢に持っていく。青年の足下がよろめいていたが、それは完璧無視だった。


「これは副座長のディランです。ディラン、彼女は俺の呼びかけに応えてくれたムーサだ!」

「……隊長、じゃなかった座長、ついに頭おかしくなったんですか……?」

「何か言ったか?」

「女神様のお世話係が必要ですよね! レイチェル呼んできますんで待っててもらえますかね!」


 言うが早いか、茶髪の青年はフィースの腕を跳ね除けて舞台と思しき方向へ走り去っていった。

 第二村人ならぬ第二異世界人との遭遇はあっという間の出来事で、実琴は微笑を浮かべたまま動くことができない。

 逆にフィースは「女神と二人きり」という環境から一度脱したせいか、表情がふわふわと緩んでいた。


「ディランは器用なやつで、うちだと一番楽器が弾けるんです。他の団員は追々紹介しますけど……俺を含めて十人しかいないんで、そんな時間はかからないと思います」

「ちょっと座長、ムーサ呼んだって本当? またどっかで変な情報つかまされたんじゃないの?」


 先ほどの青年が消えた方から、涼やかな声がフィースの説明を遮った。


「レズリー!」


 姿を現したのは、銀色に輝く髪を背中まで伸ばした美しい人だった。

 すっと通った高い鼻梁、雪のように白くきめ細やかな肌に浮かぶのは薄い、けれどみずみずしい桜色の唇。髪と同じ銀色のまつ毛に縁どられた吊り気味の双眸はスミレ色で、神秘的というのはこのような人を指すのでは、と改めて自分の「女神」という立ち位置に不安を覚えたほどである。

 レズリー、と呼ばれたその人は実琴の存在に片眉を上げたが、それはほんの一瞬だった。


「どうせ真珠座アルフェッカのやつらに何か言われたんでしょ? あんな成金一座が、うちみたいな貧乏劇団相手にするわけないじゃん。馬鹿なの?」


 呆れた様子を隠しもせずに、こちらへ――フィースに向かって近づいてくる。

 遠慮ない物言いで罵られている隣の青年を見上げれば、彼は怒るでもなく苦笑していた。どうやらこの美人の態度は通常運転であるらしい。


「レズリー、お前いつも失礼だよな」

「『座長がまた変なこと言いだした!』とか叫びながら副座長が飛び込んで来れば、そりゃあね? 『ムーサがどうのとか言って女の子連れてきたんだけど誘拐とかだったらどうしたらいい!?』なんて涙目になってる副座長の気持ち考えてみなよ」

「よーしディランはどこだ? ちょっと話し合いが必要みたいだな?」


 無言で舞台(仮)の方を指し示されたフィースは、活き活きとした満面の笑みで「頼む」と言い残すと、軽快な足取りで去っていった。

 置いて行かれた実琴は黙ってそれを見送ることしかできない。フィースの姿が完全に見えなくなると、不機嫌そうにこちらを見下ろす美人と二人っきりである。


「僕はレズリー。あんたは?」

「初めましてレズリーさん。私は実琴といいます」


 レズリーは、そのスミレ色の瞳を実琴の頭のてっぺんから足の先まで巡らせると、小さく鼻を鳴らした。

 値踏みするようなあからさまな視線に込められているのは警戒の念だろう。苛立ちより先に納得が胸に落ちた。それよりも、


(おとこのひと……だよね?)


 背はフィースや先ほど紹介されたディランより低いが、取り立てて小柄という印象を与えない。スラリとした体躯にはまだ成長の余地が伺え、その顔立ちにも若干の幼さが残っていて実琴よりいくつか年下に見えた。

 正直性別の判断に悩む中性的な美貌である。その形の良い唇から発される声は、やや高い青年のものにも、ハスキーな女性のものにも聞こえた。

 全体的に優雅で気品のある所作だが、女性らしさとは違う気がした。


(それにしても居心地が悪い)


 実琴は意識して微笑を浮かべ、ただ黙って猜疑心の色濃いスミレを見つめ返した。余計なことは言わないに限る。


「で、あんた本当にムーサなの?」

「一応、そういうことらしいです。フィースさんが呼んだのも、違う世界から来たっていうのも本当です」


 どうやら実琴の答えはお気に召さなかったようで、レズリーは眉根を寄せた。そんな表情すら彫像のように美しく、ため息が出そうなほどだ。


(悔しいけど、キレイさでは負けを認めざるを得ない)


 実琴は己の容姿に自信を持ってはいるが、あくまでカワイイ系なのである。


「ムーサ、ねぇ……」


 内心で舌打ちしている実琴をよそに、レズリーは胡乱げな様子でこちらに一歩踏み出した。元々近かった距離がさらに縮まり、実琴は思わず身をすくめる。息も吹きかかるような距離まで、美貌が迫る。


「技術をもたらすヘルメス、医術を広めるアスクレピオス、戦術を生み出すアレス……異世界からやってくる神々は、なにもムーサばかりじゃない」


 初めて聞く話に驚く間もなければ、彼から距離を取る余裕もなかった。

 ひそめられた低い声には凄みがあり、見下ろす双眸の剣呑さからは目を逸らせない。


「そもそも……神だなんて言ってるけど、あんた異世界からやってきたただの人間だろ?」


 予想だにしなかった彼の言葉に、実琴は思わず目を見開く。

 彼女がただの人間であることは、自身が一番良く知っている。


(それにこの人が知ってる、ってことは仲間のフィースさんだって知ってるはずで……いや、違う)


 実琴は彼と出会った直後に、自分の口から「女神じゃない」「ただの人間」と正直に告げている。


(それでも私のことを女神だって信じてるし、疑ってない。どうして?)


 女神だなんて呼ばれて一番驚いたのは実琴自身だ。そしてここにきて出会った、フィース以外の人間――ディランもレズリーも、女神と言う存在にどうも懐疑的だった。

 そこから導き出される答えを、実琴は眼前の青年に投げかける。


「あなた方の座長以外、そういうのは信じてないってこと?」

「いや、僕以外の人間は純粋にムーサの存在を信じてるはずだ。ムーサやヘルメスが異世界の人間だなんて、普通なら知らないことだしね」

「じゃあ、なんであなたは」


 それを知っているのか。

 疑念を込めた瞳で近くに迫るスミレ色を睨み返せば、レズリーは軽くため息を吐いて身体を離した。二人の間にあった緊張感が、一瞬で霧散する。


「別にあんたをどうこうしたい訳じゃない。ただ座長には恩があるんだ……あの人を失望させるようなことはしないでくれる?」


 実琴が何か答える前に、レズリーはくるりと背を向けて歩き出す。「こっち」とだけ無愛想な声音で着いてくるように言うだけだった。


(返事を聞くつもりは無い、ってことね)


 一方的な物言いに苛立ちを感じたが、今更彼女が言い募ったところで何が変わるとういこともないだろう。

 実琴は大人しく彼の後を追いかけた。

 さほど歩かないうちに舞台袖へたどり着き、三段しかない階段を上がればそこは舞台の上だった。


(これが、この劇団のステージ)


 想像していた通り、決して広くはない舞台だった。

 木製の床を踏みしめた実琴は思わず足を止め、客席を見渡す。

 広くはないが、狭すぎるという事もない。ここで一体、どんなステージを繰り広げるのか――ほんの一瞬、初めてステージに立った日の思いが胸をよぎった。


「女神さま!」

「! あ、はい!」


 現実に引き戻された実琴は、呼ばれた方へと振り向く。ちょうど反対側の舞台袖あたりに人が集まっていた。

 その中央で、ひときわ機嫌よさそうに笑っているのはフィースだ。


「女神さま、皆に紹介しますのでどうぞこちらへ」


 呼ばれるがままフィースに近寄ると、まずは彼の隣にいた少女を紹介される。


「彼女はレイチェル。ディランの妹で、この劇団では唯一の女性です。女性同士じゃないとわからないこともあるでしょうし、何かあったら彼女に聞いてください」

「よっ……よろしくお、お願いいたします……」


 可哀想なくらい震えてひっくり返った声に、涙がうっすらと浮かんだ瞳。緊張している、というのが傍目にもわかる態度だった。


(声だけじゃなく、体も若干震えてるような……?)


 年は恐らく十代後半。実琴よりも年下に思えた。そばかすの浮いた顔の造形は兄によく似ていて、茶髪に蜂蜜の瞳という配色も同じだ。あえて言うなら妹の方が全体的に淡い色合いをしており、少女らしい丸い輪郭のラインが兄よりも柔らかな印象を与える。特別目を引く容姿ではないが、どこか庇護欲をそそる少女だったし、兄と違って「平凡すぎて記憶に残らない」という事もない。

 レイチェルは、きゅっと引き結んだ口元と眉尻の下がった、いわゆる困り顔で実琴のことを見つめてくる。


「こちらこそ、どうぞよろしくお願いしますね」


 少女を怯えさせないように、とことさら優しく応えた実琴に、レイチェルは顔を真っ赤に染め上げる。彼女は恐縮するように頭を下げると、素早い動きで兄の背後に回ってしまった。引っ込み思案なのだろう。


(できれば普通に話が出来るくらいにはなりたいんだけど)


 なにせ唯一の同性である。たったそれだけのことが、やけに心強い。


(まぁ、嫌われてるわけではなさそうだし。徐々に、ってとこかな)


 続けて、そこに並んだ人たちを紹介される。演者のユーリアン、脚本担当のルーカス――そうして紹介されたのは、舞台裏で出会った二人を含めて合計九人。なるほど確かに、座長であるフィースを入れて十人しかいない。

 座長から事前に「女神」の話を聞いていた団員達の反応は、様々だった。興奮を隠せない者もいれば、半信半疑といった雰囲気の者まで。

 一人ひとりの反応をしっかりと確認し、彼らの名前を反芻する。皆塚実琴は接触イベント――握手会とか、チェキ会とか――の対応もそれなりに良いと評判のアイドルだ。紹介された団員達の顔と名前を覚えるのは簡単だった。

 そしてフィースに促された実琴が、一歩踏み出す。


(何事も最初が肝心、よ!)


 自分が考え得る中で最も「女神らしい」態度――真っすぐな姿勢、穏やかな微笑み、ゆったりとした動作――で団員達を見回し、軽く頭を下げた。


「実琴です。こちらの座長であるフィースの願いにより、この劇団に身を寄せることになりました。どうぞよろしくお願いします」


 方々から上がる、感嘆のため息。


(掴みはオッケー!)


 内心でガッツポーズをしていることなどおくびも出さず、実琴は笑みを深めた。


「早速、皆さんの舞台を見せてもらえませんでしょうか? 仮にもムーサを名乗る身です。アドバイス程度は出来ると思います」


 実琴の言葉に団員達がどよめき、ただ一人レズリーだけが目を細めた。

 失望させるな、と彼は言った。


(じゃあ、もし期待に沿えなかった、その時は?)


 普通の人間だと暴露される可能性が非常に高い。

 実琴自身は積極的に女神を騙りたいわけではないが、彼らから受ける下にも置かない扱いは「女神」ゆえだということは理解していた。

 この世界での安全のためには女神アイドルでいることが重要で、なおかつレズリーを黙らせるには座長――フィースの望みに応える必要がある。

 そうなると手っ取り早いのは実績を作ることだ。アイドルとして培った技術と経験を元に、芸術の神ムーサとして助言なり教育なりすればいい。なにより、


(売られた喧嘩は買うのが条理でしょ!)


 胡乱げに細められたスミレ色に向かって、満面の笑み(アイドルスマイル)をお返しする。

 皆塚実琴、広島県出身、二十一歳。

 割と血の気の多い性格である。


「そうだな、我らがムーサもこう仰っている。みんな早速通し稽古に入ろう!」


 座長の言葉に、団員たちが歓声を上げて動き出す。


「女神さまはどうぞ客席の方へ! こちらです!」

「ありがとうございます」

「いえ、そんな。お礼を言うのはこちらの方で……」


 興奮気味のフィースに導かれ、客席へと降りる。シートなどは敷かれていないむき出しの地面に並べられた椅子の内、中央に近い最前列へと座らされた。


「俺も用意があるので離れます。急いで準備しますので!」


 機敏な動きで舞台へと戻る座長の背中を、実琴はただ笑って見送った。


(……ちょっと大きくでちゃったけど、大丈夫かな)


 先ほど「アドバイス程度は出来る」と言ったのは半分本音で半分強がりだった。

 実琴はアイドルなので、その活動の主体は歌やダンス、トークや握手会などのイベントが主だ。アイドルとしてのステージングはその身に叩き込まれていても、劇団がやるような舞台となると話は違う。

 演技の基礎は学んできたし筋も悪くないと言われた。

 けれど弱小事務所に籍を置くアイドルにとって、ドラマや舞台に立つ機会というのはそう多く得られるものではない。つまるところ、実琴は演技については圧倒的に「経験不足」なのだ。


(でもまぁ、素人とはいえ劇団を作るくらいなんだし、アドバイスする必要もないかもしれないな)


 その考えがどれほど甘いものだったか、実琴はすぐに知ることになる。

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