表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

バイトの王子様。

作者: 聖澤北斎

「えーーっと、まず履歴書出してくれる?」

「はい、とくとご拝見ください。」

「いや、そこまで見ないよ。」


「名前は女子和也、本名なの?」

「はい、みんなからはJKと呼ばれています。」

「いや、知らないよ。」


「性別は男ね。」

「はい、意外ですか?」

「いや、妥当だよ。」


「年齢のところ抜けるよ、しっかり書いといてね。」

「はい、ところで何歳に見えますか。」

「いや、その鉄仮面のせいでなにも見えないよ。」


「住所はここから直線二百メートルって、マクドの看板か何かかな。」

「はい、主にそこらへんで夕食は済ましています。」

「いや、話噛み合ってないな。」


「電話番号がフリーダイヤルってなんでなの?」

「はい、母がそこでパートしてるんで。」

「いや、せめてお母さんの携帯電話にしてよ。」


「学歴の東京大学卒業って嘘だよね。」

「はい、やっぱりバレますか。」

「いや、東京大学小学校卒業は流石に気づくよ。」


「職歴はサンタクロースってのも嘘だよね。」

「はい、でも先月愛娘にプレゼント買ってあげました。」

「いや、今四月だよ、あわてんぼうすぎるよ。」


「資格英検八段っていうのも嘘だよね。」

「はい、やっぱり日本語英語の発音でバレますか。」

「いや、段が一番すごいってわけじゃないんだよ、英検は。」


「志望の動機が、店長のテクニックに惚れたってどういうことなの?」

「はい、手の動きに浪曼を感じたので。」

「いや、ただレジ打ってただけだからね。」


「希望記入欄の滑舌に定評があるって本当?」

「はい、早口言葉程度おちゃちゃこさいさいです。」

「いや、今噛んだよね。」


「なんでその服装で着たの?」

「はい、印象よくするために。」

「いや、喪服は印象よくないな。」


「あとその靴も良くないな。」

「はい、いいサイズがなかったので、これはしょうがないです。」

「いや、そりゃあ、歩くたびにピコピコなる靴だからね。」


「じゃあ最後に一言どうぞ。」

「はい・・・・・・」

「いや、何もなかったらいいんだよ、別に。」




「あの、合否発表はいつになるんですか?」

「急いでそうだし、今しようか?」

「はい、助かります。」

「ちなみに、手応えはどうなの?」

「予想通りの質問だったんで、ベストは出せました。」

「予想できる質問だったら、履歴書書き直して欲しかったな。」


「逆に僕に対してどんな印象ですか?」

「アイデンティティが暴走してるね。」

「それほどでもないですよ。」

「いや、君はそれほどの逸材だよ。」


「急かすようで申し訳ないですが、発表お願いします。」

「ああ、言うよ。」

「ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ。」

「ドキドキうるさいから、ちょっと黙ってくれるかな。」


「言うよ、採用ということで。」

「本当ですか、すごく嬉しいです。」

「涙を出すほど喜ばなくても。」

「はい、二百件連続で不採用だったので。」

「それほど落ちても屈しないその根性がさらに気に入ったよ。」


「じゃあ、早速今から研修するからこの制服に着替えてきて。」

「はい、初めてなんでマニアックなプレイは勘弁してくださいね。」

「君は研修をなんだと思ってるの。」


「着替え終わりました。」

「おお、思ったよりはやいね。」

「はい、この道二十五年ですから。」

「じゃあ私は、その道三十年かな。」


「まずはここで声だしの練習しようか。」

「いきなりだせって・・・・・・正直僕大きさには自信がありますよ。」

「いや、声の話だよ。」

「はい、知ってますよ。」

「くっ。」


「じゃあ、私に続けて出してみて。」

「店長も出すんですか!?」

「同じ手には引っかからないよ。」

「今度は性的な意味ですよ。」

「くっ。」


「それじゃあいくよ。いらっしゃいませ。」

「いらっしゃいませ!!」

「おお、ばっちりだよ。」

「学生時代野球部だったので、声だしは余裕ですよ。」

「あ、そうだったの。」

「はい、百人脱がせのKAZUYAと言われてました。」

「やっぱり、そっちね。」


「まあ、声だしはできてると思うから次のステップへ行こうか。」

「いいともーーー!!」

「おまちしておりまーす。」


「じゃあ次は、商品の補充について説明するね。」

「あ、僕前のバイトでやったことあるので、得意です。」

「あっ、そうなんだ。ちなみに何のバイト?」

「サンタクロースです。」

「娘さんは何を欲したの。」


「一から説明するとね、新しく補充する商品を後ろに置いていくわけ。」

「つまりお客さんは、古いものから取っていくってことですよね。」

「まあ、そうなるよね。」

「結婚でもこのシステム使って欲しいですよね、ねえ店長。」

「女子君、減給ね。」


「まあ詳しいことは、追々説明していくから。」

「アイマム!!」

「そんな険しい顔しなくても、減給は冗談だからね。」


「次は、レジ打ちについて説明するよ。」

「このレジ、家にあるのと同じですので説明は結構です。」

「女子君の家って、店でもやってるの?」

「はい、4LDKです。」

「また話が噛み合わないね。」


「それじゃあ今日はここまでで、シフト決めたいから空いてる日教えて。」

「家にいても呼吸ぐらいしかすることがないので、基本毎日空いてます。」

「変なこと聞いてごめんね。」


「ちなみに今週一杯は研修期間ということで、時給は650円ね。」

「桁一つ多くないですか?」

「いや、合ってるよ。」


「とりあえず、明後日の夜の九時にまた来てくれる?」

「どうしてもですか?」

「うん、どうしても。」


前に投稿したものに+αしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 微妙な感じが、逆に悪くないかなと思いました。漫才師の腕によっては笑いがとれるかもしれないです。 ちょっと長いのと、オチがないのが残念でした。
2014/10/26 17:14 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ