第三篇
「こいつらの身元を割り出し、所属する組織を見つける。それが依頼だ」
バイパーは静かに告げた。それに反するように、
「じゃあ、報酬の話だ。その組織をどうにかするっていうなら、一枚かませろ。それが報酬だ」
熱のこもった声が出た。
こういう仕事柄、熱くなるのはよくない。だが、母を殺した手がかりを掴むチャンスだ。例え、答えがノーでも、オレは一人で行くだろう。
「いつ分かる?」
オレの交渉は了承されたらしい。バイパーは訊いてきた。
割り出しに時間はかからないが、仕事用の準備をしたい。
「二時間後に連絡する」
「分かった」
ホストクラブを出て自宅へと戻る。マーカスから、店の補修費用は給料から天引きと言われた。
後でバイパーに請求するとしよう。
ウチに帰ると、引き出しからメモを取り出す。
その上に二丁の銃。襲ってきた連中のものだ。そして彼らの服のタグ。
着ていた物や扱う銃の流通を照らし合わせれば、入荷先の組織なんてのは一発で分かる。
(そうできるようになるまでに、随分と時間喰っちまったけどな……)
メモを繰って割り出しにかかる。
随分と古い組織の名が挙がった。最近、代替わりしたばかりで、きな臭い噂が絶えない。
先代と比べて人望が薄い男なので、地盤固めに躍起なんだろうと踏んでいる。
分かれば後は準備して、それから電話だな。さっそく用意を――
「ヨフィエルさん、よろしいですか?」
その時、ドアの向こうから声がした。扉を開けると、見知らぬ男が立っていた。