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6 悪気がないのはわかってる

銀座はハイレベルすぎた。いつも入るお店でも結構緊張するのに、あんなVIP対応は緊張しすぎて気が遠くなりそうになった。


でもまあそれより、今の問題は個人情報流出の件について。


会う度に「基礎演習、寝てたんだってね。疲れてるの?」だの、「あぶらあげ、苦手なんだ。可愛い」だの言われてみろ。どこから情報が流れてるのかなんて、私ですらわかる。


そんなわけで、机に突っ伏しながら沙耶に抗議している最中だ。



「沙耶……お願いだから、蓮君に情報流すのやめて……」

「河野君?いい子だよ、さっぱりしてるし。あんまり人に懐かないって思ってたけど、小春ちゃんはすごいね」

「懐くとかそういうレベルじゃないよ……」



疑問符を飛ばしまくっている沙耶は可愛い。文句なしに可愛い。けれど、それとこれとは別だ。


どうやら小春は冷めた子供が珍しくも懐いていると認識しているようだけれど、違うから。

肉食獣だから、あれ。いい子の仮面持ちのSで、下手な大人よりずっと頭が回るから。



「んー、じゃあ、今度は私も一緒に行ってみようかな?」

「明日?」

「うん。いつも水曜に来てるでしょ?」



もう1週間経ったのか……早いな。毎週会うなんて、どんなバカップル?

元彼とも2週に1回出かけるくらいだったよ。


そう考えると、私にしてはよくつきあっているものだ。

元彼とは週1で会いたいと言われたのがめんどくさくて、渋々2週ごとにしたのに。これなら週1でも問題なかったかもしれない。



「小春ちゃーん、戻ってきてー!」

「……はっ!ごめん、ちょっと思考が飛んでた」

「うん、そうみたい。小春ちゃんは考え始めると長いんだよね」

「ごめん!」

「ううん、小春ちゃんは綺麗だから、見てるの好きなの」



奈緒ちゃんはきりっとしてて格好いいよね。


ふわりと笑う沙耶は可愛い。文句なしに可愛い。

ああもう、明日のこととかどうでもいい!沙耶万歳!!



「あれ?でも沙耶、明日は4限あるんじゃなかったっけ?」

「教授がインフルで休講だって」

「うぬう、うらやましい」



うちの教授も全員インフルにかかってしまえ。時季外れだけど。というか、その教授はどこでウイルスを拾ってきたの?


多分沙耶は気にしてない。

この季節にインフルはほぼありえないなんて気にしてない。


そして教授は、単に講義をしたくなかったんだと思う。確か来週末はイギリスの学会に行くはずだったから、その準備が忙しいんだろう。けしからん、いいぞもっとやれ。

ついでに他の教授達もやってしまえ。学会行く先生は他にもいるはずだし。



「小春ちゃん、戻ってきて」

「――はっ!」



何だこれ、すごいデジャヴ。しかもリアルに「はっ!」とか言っちゃう私ってどうなの……。

まずい、ちょっとマントル辺りまで穴を掘って入りたくなってきた。


だがしかし、そこは沙耶。小首を傾げるだけで私を浮上させた。



「小春ちゃんと遊ぶの、久しぶりだね」

「そういえばそうかも。奈緒には悪いけど、明日はデートだね」

「ふふふ、小春ちゃんたら。河野君もいるんだから、忘れちゃ駄目だよ?」



元々色素が薄いのか、地毛だという栗色の髪が、ふわりと動く。パーマをかけると髪が傷むらしいのに、見事に天使の輪ができているのが、うらやましいやら悔しいやら。


まあ、沙耶が可愛いからそれでいい。


ちなみに私は一回も髪をいじったことがない。伸びる度に染めるの、めんどくさいし。定期的にパーマをかけるのもめんどくさいし。何より、両方とも維持費が馬鹿にならない。


色気のない理由で申し訳ないけど、沙耶は黒髪が似合うと褒めてくれるからこれでいいのだ。今までの私グッジョブ。



「蓮君かあ……できれば忘れたいなあ……」

「もう、小春ちゃんたら」

「ごめんって」



蓮君、本当に来るの忘れてくれないかなあ。それが無理なら、せめて沙耶の前で猫をかぶっていただきたい。

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