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5 銀座とか、別世界ですから

…………まさかここに来る日がこようとは。


ずっと憧れていたフランスの紅茶メーカー。ちょっとお茶をするには敷居が高すぎたけれど、こんなに気軽に入れるとは思いもしなかった。

感慨にふける私の前で、蓮君はさっさとドアを開ける。


河野様、いらっしゃいませ。いつもの席をご用意いたしました。そう、ありがとう。彼女も一緒だから、一席増やしてもらえる?かしこまりました。


何この会話。顔パスですか蓮君。そんなに常連なの?


店内を知り尽くしてますという感じでスマートに歩く蓮君を慌てて追うと、ボーイさんが爽やかに荷物を引き受けてくれた。そんなに高いものを使っているわけではないので、何だか気が引ける。


こんなことなら、この間奮発したグッチを持ってくればよかった。ぱっと見ブランドものに見えないから、大学に持ってきても目立たなかったのに。

後悔してももう遅く、8000円そこそこのバッグはボーイさんの手に。ううう、見た目よりずっと重くてすいません。万一の時に備えて、薬とか水とか、色々入れてるんです。



「こちらへ」



先頭を歩いていた男性の声に意識を戻すと、豪華な個室の中に入っていた。


外が見える窓こそないけれど、ステンドグラスから透ける光がとても綺麗だ。見るからに座り心地の良さそうな椅子は上品な深い赤で、くるんと猫足になっている。

床はぴかぴかの大理石。そこにペルシャ絨毯のような柄のふかふかなものが敷いてある。壁紙は落ち着くクリーム色。どこを見ても高級そうで、思わずたじろいでしまった。


……あれ?このお店、こんな内装だったかな?

雑誌で見た時はもうちょっと違う雰囲気だった気がするんだけど。


ギャルソンさんに椅子を引いてもらって、おっかなびっくり腰を下ろす。ぴったりと椅子を合わせてくれるギャルソンさん、さすがプロだ。


向かい側では蓮君がすましてサービスを受けていて、いかに慣れているかがよくわかった。渡されたメニューをちらりと見ただけで、いくつかを注文してしまう。


私も受け取ったはいいけれど、茶葉の種類がありすぎて何が何だかよくわからない。ダージリンだけで何種類あるの、ここ……。

他の茶葉も見たことのない名前だし、どんな味かさっぱりわからない。困り切ってメニューと睨めっこしていると、不意に蓮君が口を開いた。



「彼女にはこのコース。あと、マルコポーロで」

「かしこまりました」



ギャルソンさんが優雅にお辞儀をして部屋を出ていく。何となくそれを見送っていたけれど、蓮君が助けてくれたんだと気づいて、慌てて正面に姿勢を戻した。

黒髪の麗しい少年は、小さく首を傾げて微笑んでいる。さらさらの髪が光を反射して、綺麗な天使の輪ができていた。



「マルコポーロなら好きでしょ?」

「うん。おいしいよね、あれ」

「今度来る時は、フレーバーの方のマルコポーロにしようか」

「うん!……うん?」



ちょっと待て、今言質を取られた気がする。

今度っていつだ、また連れ回されるのか。


いや、素敵なカフェに入れるのは素直に嬉しい。嬉しいけれど、毎回中学生におごられる大学生ってどうよ?

言葉のあやですよねーそうですよねーと蓮君を見ても、にやりと口の端を上げるだけ。



……ちくしょう、謀られた!!



打ちひしがれながらも、しっかりとティータイムは満喫しましたとも。ええ、ばっちりしましたとも。

だって、しないともったいないじゃない!!


某老舗メーカーはあくまでモデルであって、実際の団体はうんたらかんたら……すいません、茶葉の種類出してる時点で通用しません…。

本店には行ったことがないので、写真の雰囲気だけで店内の様子を妄想しました。実物とは全く異なる可能性の方がとてつもなく高いので、その点はご容赦ください…。

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