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3 黒髪美少年…こっちくんな!

反射的に横を向くと、そこには目のくらむような美少年!


まっすぐで艶々の黒髪に、限りなく黒に近い焦げ茶の瞳……これもう、黒って言っていいんじゃないだろうか。黒髪黒眼って実際にはものすごく貴重だろうし。


まあクールビューティーですよね、一言で言うと。切れ長の目元が涼やかです。



「……ええと、君はどなた?」

「このパーティーの招待客A」

「うんまあ、それはここにいる時点でわかるんだけど。沙耶とはどんなご関係で?」



そっけない答えに見りゃわかるわ!と突っ込みたくなるのを抑え、あくまでにこやかに接する。


落ち着け私、相手は子供だ。子供だ。

私は大人、オーケー?



「……高宮氏の取引先の息子。令嬢とも何度か話はしたことがあるよ」

「ああ、おじさんの……そうか、普通に考えればそうか」

「そ。ちなみに俺は、令嬢をかっ攫おうとかあわよくば婚約者にとかは微塵にも思ってないから」

「…………エスパー?」

「お姉さんが顔に出やすいだけ。それで?」



いやいやいや、これでも私はポーカーフェイスに定評があるんだけれど。

どんなに緊張しようが怒ろうが、傍目にはいつもと変わらなく見えるらしい。

それなのに、この美少年はわかったと?


ぐるぐる考えていると、じれたように手を重ねられた。



「それで?」

「それで?って?」

「だから、どうして令嬢が困ってるのがわかったのかって」



引き戻された意識が、少年の声に反応する。

それはもう、反射神経のようなもので。



「そんなの、沙耶が大事だからに決まってるじゃない。見てればわかるでしょ?」



何を言うのかと肩をすくめてみせると、少年の目が弓なりに細くなった。

同時に口元も三日月型につり上がり、可愛いはずのそれにぞくりと悪寒が走る。



「ふうん?」



……何だかわからないけれど、やばい気がする。何かのスイッチを踏んだ気がする。

どれだ、どのスイッチだ。


必死に考えるも思考回路はショート寸前……違う!何お決まりのボケしてるの私!



じんわりとにじみ出る嫌な汗に、無意識に並べられた椅子の上をじりじりと後退していく。

そんな私に、少年はますます笑ってこう言った。

「いいね。お姉さん、俺は河野蓮。本気でいくから──覚悟してね?」



「──はい?」



思いっきり肉食獣の顔だ。狩る気満々の顔だ。

どこをどうしたらそうなるのかわからなくて、こらえきれずに腰を浮かせる。



「じゃ、じゃあ、私ちょっと食事に」

「俺が持ってきてあげる。何が好き?」



すかさずふさがれそうになり、ひきつる笑顔で手を振った。



「え、いいよ、それくらい自分で」

「栄養バランス気にしてるよね、結構。さっきからちょいちょい野菜食べてるし。でも、魚よりは肉かな。ちゃんと焼いてあるのが好きでしょ?野菜大好きって訳じゃなさそうだし」



どこから見てたんだ。いや、いつから見てたんだ。

さっきまでの食事のパターンをどうして把握しているんだ、この少年。

すらすらと言い当てる少年に、嫌な汗がどんどん増えていく。


やばいやばいやばい、何だかわからないけど何かやばい。


明らかに顔はひきつっているはずなのに、少年はますます楽しそうに笑った。



「お姉さん、知ってる?高宮令嬢はね、今まで自分から誰かを招いたことはないんだ。このパーティーには、ね」



どういう意味だろう。少年の言いたいことがわからないでいると、猫のような目が私をとらえる。

そして、うっとりとした様子で軽く目を伏せた。

あ、睫毛超長い。



「──見事な観察眼だよ、お姉さん。本当に令嬢のことが大切なんだね」

「もちろん」

「……うん。だから、俺はお姉さんがほしい」

「…………はい?」



固まった。思考も身体も固まった。


だからの使い方がおかしい。接続詞は正確に使おうね、少年。

夢を語る乙女のように話すのはいいけれど、いくらなんでもぶっ飛びすぎだ。



「……一回病院に行った方がいいよ、少年」

「蓮」

「え?」

「俺の名前、蓮だから。いいね?」



少年と言った途端に弾けるように顔を上げた彼は、先程までとは正反対の強い目で私を射抜いた。その気迫に押されて、思わずうなずいてしまう。

途端に笑顔に戻ったしょうね──蓮君は、さりげなくこちらの手首を握りながらにやりと笑った。



「お姉さんの名前は?」

「あ、え、た、武川小春」

「小春さんね。よろしく、俺のお嫁さん」



そうして、笑った口元はそのままに、つかんだ手首を持ち上げて手の甲にキスを──キス!?



「ひぎゃっ!」



慌てて手を引っ込めようとしても、がっちり掴まれてちっとも動かない。全力で取り戻しにかかっているのに、がっつりホールドされている。

ぷるぷるしてる、ぷるぷるしてるよ、私の右腕!離して!離して蓮君!!



「 は な し て ! 」

「逃がさないよ」



必死な私。笑顔の蓮君。

会場の片隅で、静かな(けれど全力の)戦いが始まった。


最終的に涙目になった私を助けてくれたのは沙耶だったけれど……その時の蓮君、すっごく楽しそうでした。猫みたいな笑顔でした。

このドSが!!

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