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第5話:バグ

第5話:バグ


「愚者の黄金・散弾!」

魔女は触媒を解放する。

それは劉斗の無謀な突撃を支援するための、せめてもの足掻き。


アルベルトは白い燐光に包まれる。チートを発動し、避けようともしない。

「残念、100%外れ」

彼への攻撃は、100%外れという結果になる、はずだった。

アルベルトの白い燐光が、劉斗の文字化けした燐光に触れる。

アルベルトの燐光を侵食した。


「……え!?」

魔女の口から漏れた。

絶対に外れるはずの散弾のうち数発が、アルベルトに当たった。

「う……!?」

劉斗の剣先がアルベルトの頬を切り裂いた。


魔女は目の前の現実から思考を始めた。

昨晩、劉斗の近くで自分のチートの精度が落ちた。

だからアルベルトの確率操作も同じく精度が落ちて命中。


昨晩のあの悪夢、アルベルトのサイコロはなぜ「1つ」だった?

あの男なら、10個のサイコロを振ってすべて「1」にするはず。

魔女は悪夢の原因の、脳内桃色預言者に感謝した。


結論、1度に1つの事象しか操作できない。シングルタスク!

『神のサイコロ』は1つずつしか振れない。

つまり回避と無詠唱を同時に100%にできない。


「劉斗!そいつは回避と攻撃は同時にできない!反撃されてもガラスの盾がある。

攻撃しなさい!」

「……血?俺が現地人のガキと贋作師に?」


アルベルトが再度チートを発動し、無詠唱魔法で反撃しようとした瞬間。

「愚者の黄金・狙撃」

100%回避できたから今まで無敵だった。相手の体力切れや魔力切れを待てばいい。

今は一定確率で攻撃が命中する。彼は理解した、自分が削られる側になったのだと。


「あ……あぁ……っ!!」

血を吐くアルベルトは、完璧なチートの穴をつかれた元絶対者。

「ホント、笑えるくらい完璧」

魔女は運河の壁にアルベルトを追い詰めた。


侵入者を拒む「返しのついた壁」で囲われ、等間隔に配置された見張り塔には、

弓兵たちが詰めている。

彼らの任務はあくまで運河の安全。壁の内側を脅かさない限り、彼らは何もしない。

アルベルトの顔には恐怖と屈辱。


魔女は淡々と言う。

「自分を『最強』だと勘違いして、

勘違いでこの子の村を焼いて、

勘違いで私の『彼氏』なんて茶化して

私が『クラウドナイン』入りなんて勘違いまでしてる」


魔女の手から、黄金の輝きが漏れ出す。それは殺意の輝き。

「自分の勘違いする確率を、ゼロにすれば良かったのに。これで仕留める。

劉斗、あわせて!!」


閑話C9の計算外な日常1

王宮のティールーム。情報交換会という名の、女子会。

優雅な室内には、スコーンの香りと、エスプレッソの香りが満ちている。


オラクルが語り始める。

「皆様ご存じかしら?彼女が私たちのもとを去られた理由」

レギーナの手が、一瞬だけピクリと止まる。

「何だったの」

「運命ですわ」

オラクルは断言する。


「啓示にはこうありました。『運命、人』と。昨日、スカイラウンジで、

彼女と青年が食事をしているのを見かけました。そして、工業都市の最新の啓示!」

扇に映し出されたのは、建設現場で崩落する鉄骨から、魔女を必死にかばう青年の姿――。

「身を挺して守る。尊すぎます。このような、真実愛に出会ってしまったから。

……私、決めましたわ。陰ながらお二人を支えようと思います」


「いいんじゃない?」

レギーナは心底、安堵あんどした表情を浮かべた。

「異世界来て、駆け落ちとか、本当バカじゃない?

ねえフリーダ、どこがいいのかしらね」

フリーダは、オラクルの見せる画像を冷めた目で見る。

「……動機は別に。いい話です。小説、いや舞台?」


「ナノハがいるのは珍しいよね?」

と、レギーナが部屋の隅にいたナノハに水を向ける。

「戦況、安定しているから」

深い青色の髪、小柄で軍服を着ている少女。

ナノハは表情を変えず、コーヒーに口をつけ、地図に並ぶチェスの駒を見ている。


レギーナは思い出したように口を開いた。

「そういえば、アルベルトはどこ?」

「ウルフギャングを訪ねて工業都市ですわ」

オラクルが答える。


レギーナは笑う。

「何で?あいつ、引きこもりのウルフギャングと気が合うわけ?」

「新作ゲームが出来たそうよ」

フリーダが、手元の書類から目を上げずに補足した。

「パッサージュでの販売を検討中なの。工業都市のリソースを割かせた以上、

開発費の倍以上の回収を期待してるわ。エンタメも集金システム」


「異世界で新作ゲームとか、マジ受ける!あいつら本当、根っからのオタクよね」

レギーナはおかしそうに笑い飛ばした。

かつての教室で、スクールカーストの頂点からオタクたちを弄んでいた時と同じ、無邪気な笑いだ。

「そもそも、確率操作アルベルト一時停止ウルフギャング

ゲームなんて成り立つの?バグって終わりじゃない」

作中で魔女が語っている通りですが

1.劉斗の近くではチートの精度が低下する

(回避90%に低下すると、10%は命中する)

2.神のサイコロはシングルタスク

(100%回避で相手のスタミナ切れを待てばよかったので、今まで問題にならなかった)

次回の挑戦は2/2を予定しています。

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