第3章 第1話『不条理な戴冠』
異世界鎌倉幕府編:第1話『不条理な戴冠』
1. 概念的断絶
その瞬間まで、世界は平和に満ちていた。昼間のサービスエリア。
レギーナが遅刻の言い訳を飲み込もうとした、
その刹那――視界のすべてが、暴力的なまでの白光に塗り潰された。
目を覚ますと、明滅するクリスタルの柱があった。
「なに、ここ」
誰かの声が漏れた。足元には、魔法陣が淡く発光していた。
ナノハは震える膝を押さえている。
「何とかしてやる。お嬢ちゃん、アメ食べるか?」
隣で、トラック運転手のおじさんがアメを差し出した。
大きな手だったが、その指先が自分と同じように細かく震えている。
「……私、高校生。子供扱いしないでよ」
中学生のような毒づきを返すことで、彼女は辛うじて正気を繋ぎ止めていた。
周囲には武装した兵士がいる。
レギーナは兵士に、食ってかかる。
「私たちを帰して!」
フリーダは冷静に兵士に話しかける。
「誘拐ですか?」
いずれも無視された。
オラクルは電波を探して、スマホを持って移動している。
ユゴスは水晶や魔法陣を調べている。
伊織は拳を握っている。
ウルフギャングとアルベルトは、
「召喚イベント?」
「ステータスオープン?」
と言っていた。
亜智は兵士ではなさそうな老人に話しかけた。
「ねえ、おじいさん。私たちはどうなるの?」
老人は申し訳なさそうに言う。
「ワシは道案内のゲンゾウ。
王は、あんたたちを都合よく使うつもりだろう」。
2. 便利な矢
遺跡から連行されるように、外に出ると夜だった。
「あれは南十字星? 南半球?」
ナノハは必死に、知っている知識の枠組みにこの異常事態を押し込めようとした。
だが、星々の配置は合致しない。
つまり、ここは地球ではない。
重厚な石の門を通り、王宮に連れていかれた。
豪華な玉座にいる、王の瞳には、歓迎の色など皆無。
「異界の救世主よ。我が国の窮地を救うため、その身を捧げたまえ」
一方的な宣告、武装した兵士に囲まれ抵抗は無意味だろう。
3. 願望機:剥き出しの願望
「願望機に触れよ。汝らの願望を力へ変える」
王宮の隠し部屋の中にある、機械の前に連れていかれた。
罪悪感からか、レギーナは最初に震える手で、触れる。
(私の言うことを聞いて! 異世界の勝手な理屈を押し付けないで!)
チート: 【同調圧力操作】場の空気を支配する。
次にゾディーク(俺は子供たちを守る盾になる)
チート:【不死の理】死を超越した不死鳥の蘇生能力。
ナノハ(直接戦うなんて無理)
チート:【ディープブルー】戦場俯瞰のチート。
フリーダ(理解できないものは管理できない。あらゆるものを『数字(金銭)』に換算したい)
チート:【価格決定のレンズ】。世界を値踏みする経済チート。
伊織(武装した大人を前に、諦めるしかない自分が許せない)
チート:【身体能力向上】。純粋な身体能力の爆発。
ユゴス(知らないことは怖い、知れば怖くない?)
チート:【セラエノ図書館】ショゴス・ロードの無限の可塑性でモンスターを吸収し、再現する
アルベルト(人生なんて運ゲーだろ?)
チート:【確率操作】。自分に関係する物事の成功確率を操作する。
オラクル(ニュースがない世界なんて無理!)
チート:【啓示の扇】。世界のニュースをランダム受信する
亜智(何が有用かわからないから……万能な力)
チート:【愚者の黄金(贋作)】魔法やチートの劣化コピーしか作れない、器用貧乏という名の「万能」。
ウルフギャング(最後だから、早く願望決めろって、考える時間が欲しい、一時停止したい)
チート:【事象の未確定】一時停止ボタン
4. 無血革命:女王キレる
玉座から、高圧的な態度で
「良し。力は得られた。では、ただちに魔王軍の最前線へ送り込む」
王の言葉にレギーナがキレた。
「黙れ!私の言うことを聞きなさい!
王に出来ないことが私たちにはできる!
王は私たちにお願いする立場!
どっちが偉いか、考える必要もない!」
王も居並ぶ近衛兵も宰相も動けない。
なぜか、彼女の言葉に逆らうことは空気が読めない行動と感じるから。
事態を静観していたフリーダが動いた。
「レギーナ、やってくれたわね」
フリーダは宰相の前に立ち、冷たく言い放つ。
「これは王権の平和的委譲よ。王様はお疲れなの。
召喚の儀式の反動で、精神的に限界を迎えられたの。でしょ?」
レギーナの能力による場の支配と、フリーダの言葉で逃げ場を失った宰相は震える声で答える。
「さ、左様です。陛下は、すべてを救世主様方に託すと決められました」
一滴の血も流さず、王権が現代人へと移った瞬間である




